2019/01-03鑑賞
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2019年の累計:13(4)[6] 本 ( )は試写会
[ ]は邦画
1−3月期:13(4)[6]本 、4−6月期:0(0)[0]本、7−9月期:0(0)[0]本、10−12月期:0(0)[0]本  
1月:2(2)[1]本、2月:5(0)[2]本、3月:6(2)[3]本    (本数は同時上映の短編を除く)  
−−−−−−−−−−−−*−−−−−−−−−−−−  
   
  アクアマン 

ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、ドルフ・ラングレン

大昔、栄華を誇ったアトランティスは、何かの理由で海底に沈んでしまう。
多くの人は死んだが、人々は海に適用するよう進化し、4つの種族に分かれて海の支配者となっていた。
一部は地上でも水中でも生活できるように進化した。

ある日、灯台守のトム・カリーは海岸で倒れている美女を見つける。
すぐさま家に連れていき介抱するが、彼女はアトランティスの女王アトランナ(ニコール・キッドマン)だと名乗る。
トムとアトランナはやがて恋に落ち、男の子を生み、アーサーと名付ける。

平穏で幸福な日々はある日突然、海からの侵略者によって破られる。
アトランナは武装兵を次々と倒すが、夫と息子の安全のためだと言ってアトランティスに戻ってしまう。

トムはアトランナとの約束を守り続け、毎朝、桟橋に出てアトランナの帰りを待っていた。

一方のアーサーはおとなしくいじめられっ子だった。
学校で水族館見学に行ったとき、水槽に向かって話しているところをいじめられたが、
大水槽のサメがいじめっ子に向かってガラスに突撃し、他の魚もアーサーを守るかのように集まってきた。

アトランナはパルコ(ウィレム・デフォー)を地上に送り、アーサーを鍛えた。
やがて成人したアーサーは海の中でも高速に泳げるようになっていた。

ある時、ロシアの潜水艦が、海賊に艦内に乗り込まれ、銃撃を受けた。
多くの乗組員が射殺され、残りは艦首の魚雷室に逃げ込んだ。
海賊の親玉ジェシーは、マンタと呼ばれる息子、デピッドに家伝のナイフを伝授、次のボスはお前だと告げる。

海賊は核兵器を強奪しようとしたが、アクアマンが乗り込んできて海賊を殲滅、乗組員を救助した。

その際、アクアマンはジェシーを装置の下敷きにしてしまう。
デビッドが助けを乞うもアクアマン、アーサーは見捨てて脱出してしまう。
ジェシーはアクアマンに復讐しろと告げ、デビッドを脱出させ、自爆して果てる。

そのころ、海底のアトランティスではアーサーの異父兄弟のオーム(パトリック・ウィルソン)が地上支配のため、戦争を目論んでいた。
4つの種族のうち、ゼベルの王、ネレウス(ドルフ・ラングレン)は戦争には反対していた。

そこへ、地上人の潜水艦が現れ、アトランティスに攻撃を仕掛けてきた。
オームはこれを撃退したが、ネレウスは地上人への戦争に賛同する。

しかし、実はこの攻撃はオームがマンタことデビッドに指示して行わせたものだった。
デビッドはオームがアクアマンを捕まえたら自分に引き渡すことを条件にオームに従ったのだ。

しばらくして、赤毛の美女メラ(アンバー・ハード)が海からやってくる。
メラはネレウスの娘でオームの婚約者でもあった。
メラは地上人とアトランティスが戦争になるのでそれを阻止できるのはアクアマンだけだと告げるが、拒否される。

ついにメラの説得に応じたアクアマンは、アトランティスに向かいパルコと再会する。
バルコはオームが種族の王になるだけでなく、4つの種族を統一して海の覇者(オーシャンマスター)になる野望がある。
そのために異父兄であるアクアマンが邪魔なので排除しようとしていると聞かされる。
そしてそれを阻止し、地上人との戦争を回避するため、伝説のトライデント(三叉槍)を探すよう言われる。

アクアマンは王になろうとするオームの挑発に乗って王位継承の決闘受ける。
溶岩のリンクでの壮絶な戦いでアクアマンは母、アトランナの五叉槍を打ち砕かれる。
絶体絶命の中、メラが小型潜水艇でアクアマンを助けて逃げる。

トライデントのありかを示す筒を手に二人はサハラ砂漠に飛び、地下の洞窟にたどり着く。
そこで次のヒントを得てシチリア島に飛ぶ。

シチリアで次のヒントを探していると、オームから最強のアーマーをもらったマンタがオームの部下とともに襲撃してきて、
大混乱となるが、アクアマンがついにマンタを撃退する。

次の目的地は海溝王国。野蛮な種族が住んでいるとされる。
アクアマンとメラは、海溝(トレンチ)の魔物と闘いながら海底に進む。
そこで謎の人物に助けられる。
その人は、かつてアトランティスに戻ったもののオームによって異端とされ、海溝王国に送られて処刑されたはずの、
アトランナその人だった。

アトランナはその隠れ家の奥にトライデントがあるものの守護している魔物があまりにも強く到達できないこと。
トライデントがなければここから脱出できないことなどを告げる。

アクアマンは意を決してトライデントを取りに向かう。
トライデントの所在はすぐに分かったが、それを守っている(多分)タコの魔物がアクアマンを蹴散らす。
タコの魔物はアクアマンが心が読めると知ってトライデントに触れられるか試す。

アクアマンはあっさりトライデントを岩から引き抜いてしまい、自身がアトランティスの正当後継者であることを示す。

三番目の種族も味方に引き入れ、地上人との戦いの準備が整ったオーム。
海溝人と魚類を引き連れたアクアマンが決戦を挑み、ついにはオームの槍を打ち砕いてしまう。

打ちひしがれるオーム。死んだはずのアトランナが現れてオームを抱き寄せ、オームは収監されることとなった。

こうして海底人と地上人の戦いは避けられた。

次の日も桟橋で海に消えた妻を待つトム。
そこにアトランナが現れ、二人は熱い抱擁をかわすのだった。

一方、海上を漂っていたマンタは船に救助され、会報誌他グループの研究者はオームのアーマーの威力を知り、
続編の雰囲気が漂うところで物語は終わる。

アクアマンがアーサー王伝説と同じ経緯をたどるとは思いもよらなかった。

トライデント=三叉槍はポセイドンやネプチューンの持っている武器である。
またシバ神の武器でもあるらしい。

多分に続編を意識させる終わり方だが、実際に「2」が2022/12/16公開予定とアナウンスされている。
監督はジェームズ・ワンが続投。
ジェームズ・ワンはどちらかというとホラー系。
「ソウ(1作目)」「死霊館」「インシディアス」などの監督。

アクアマンのジェイソン・モモアはハワイ出身。
アンバー・ハードは本来は金髪。ジョニー・デップとの離婚騒動で世間を騒がせた。
「ジャスティス・リーグ」でも同じメラ役で出ていた。

 

 

        

  フォルトゥナの瞳   

神木隆之介、有村架純、時任三郎、斉藤由貴、志尊淳、DAIGO、北村有起哉。

20年前。
「プルアップ、プルアップ」の警告音が響く中、山梨の山中に多くの乗客を乗せた旅客機が墜落する。

殆どの乗客が死亡したが、木山慎一郎少年は一命をとりとめた。
慎一郎が気づいた時、周りにはおびただしい死体とそれに交じって体の一部が透けて見える何名かがうめいていた。
瓦礫に挟まれた少女が「助けて」と呼び掛けるものの何もできない慎一郎。
程なく、瓦礫が崩れ少女は下敷きになってしまいます。

20年後の現在。
慎一郎は遠藤哲也(時藤三郎)に引き取られ、「GARAGE ENDO」で自動車の整備/修理に精を出していた。
腕は確かなものの、ひねくれた金田大輝(志尊淳)の嫌がらせにも耐えながら。

ある日、帰宅中の電車の中で、体が透けている男性を目にする。
かなりはっきりと透けて見え、慎一郎は気になってその男性と同じ駅で電車を降り、後をつけていく。
男性が道路を横断しようと車道に出たとたん、わき見運転のトラックにはねられてしまう。即死だった。

暫くして、社長の遠藤は2号店の開設に慎一郎を店長になるよう依頼する。
先輩(金田)を差し置いて自分が・・・と言う慎一郎。
母代わりの遠藤美津子(斉藤由貴)は、もっと自信を持つよう後押しする。

ある日、慎一郎は金田の嫌がらせに言い返すが、金田は慎一郎を突き飛ばし、慎一郎は倒れた拍子にケータイの液晶画面が割れてしまう。

翌日、ケータイの修理にショップに行くと、対応してくれた女性店員、桐生葵(有村架純)は、古い機種で修理できない、
と言いつつも、画面に保護シールを貼って応急処置をしてくれた。

とりあえず使えるようになったものの、しばらくして画面表示そのものがおかしくなり、慎一郎はまたそのショップに行く。
葵に修理困難と言われて買い換えたいと言う慎一郎だったが、携帯を還そうとする葵の手が透けていることに気づき、
慌てて店を飛び出すが、また戻ってきて、重要な話があると言って葵を誘う。

駅前のカフェ、8時半の約束に葵は15分ほど遅れてやってきた。
手は透けておらず、慎一郎は安堵する。
そして、その日はそのまま別れるが、胸に激痛を感じる。

慎一郎は2号店の店長を引き受けていた。
作業していると葵が訪ねてきた。
事務所で話を聞く慎一郎。
葵は、慎一郎が自分の命を救ったと言い出す。
あの日、葵の帰り道で工場の爆発事故があり、3名が亡くなっていた。
慎一郎が葵を誘わなければ、葵はちょうどその時刻に工場の前を通っていて爆発に巻き込まれていたというのだ。

偶然でしょ、とはぐらかす慎一郎。
その日の午後、店を手伝いに来た美津子に目ざとく女性が来たことがばれてしまう。
美津子は真理子ちゃん以来だと喜ぶ。

真理子とはかつてGARAGE ENDOで働いていた女性で、慎一郎に好意を抱いていたが、
フェラーリーに乗った客のチャラ男(DAIGO)に誘われて店を辞めてしまった。

そんな中、一号店では金田が整備中の客の車を勝手に乗り回していたことがばれ、遠藤は激怒、金田を殴って首にしてしまう。

慎一郎は事務所で遠藤の手が透けていることに気づく。
慎一郎は遠藤を食事に誘い、何とか危険を察知しようとする。
食事の帰り道、物陰から金田が飛び出して鉄パイプで遠藤に殴り掛かる。
慎一郎は咄嗟に遠藤をかばい、金田に殴られて気絶してしまう。

病院で目が覚めた慎一郎。
金田は大いに反省していたということで遠藤も穏便に済ませたいと考えていた。
遠藤の手は元に戻っており、金田の恨み心はなくなったと思えた。

担当の医師、黒川(北村有起哉)は慎一郎の胸の痛みの原因は不明だと告げた。
しかし、待合室で慎一郎が体の透けた少女に声を掛けようとしたのを見て止める。
実は黒川自身も死が近づいた人が透けて見える「フォルトゥナの瞳」を持っていると語る。
自分自身が臨死体験をすることによって得られた能力だったが、死に近づいた人の運命を変え、
たとえ助けたとしても、誰にもわかってもらえないし感謝もされない。
それなのに、助けたことの裏返しで自分の体を傷つけることになる、胸の激痛もその証だという。
そして人の運命にはかかわるな、と忠告する。

慎一郎は意を決して葵に交際を申し込む。
葵の回答は「はい」こうして二人は付き合うことになった。

明石海峡大橋の舞子公園のデートの時、慎一郎は幼いころの飛行機事故の話をする。
そのころから人が透けて見え、よけいな能力を持ってしまったと語る。
葵は私を助けてくれたじゃない、と返す。

2号店にかつて真理子をナンパした男がやってきた。
食ってかかる金田をなだめ、仕事を受ける慎一郎。

数日後、予定より早く車を引き取りに来た男の手は透けていたが、慎一郎はそのまままキーを渡す。
結局、居眠り運転で事故って男は死んでしまい、慎一郎は自責の念に駆られる。

ある日、慎一郎は公園で遊んでいる園児たちが透けていることに気づく。
子供に近づきすぎて、保育士に変質者と疑われる。
その場に落ちていたチラシによれば、翌々日の24日の7:30の電車で遠足に行くことになっていた。
駅に行くと大勢の乗客の体が透け始めていた。
慎一郎は葵が24日は早番で7:30の電車に乗ると言っていたのを思い出し、突然旅行に行こうと言い出す。
何とか調整するという葵。
その夜、葵と慎一郎は結ばれるが、なぜか葵は涙していた。

医師の診断を受けると、狭心症の症状が出ていて、これ以上、人の運命に手を出すと命がないと言われた慎一郎だが、
葵の命は救うつもりだった。

慎一郎は葵に結婚を申し込むつもりで指輪を用意していたが、葵との別れを覚悟し指輪を投げ捨てる。
慎一郎は保育園に電話して遠足を延期しろと申し入れるが公園の変質者と思われてしまう。

翌日、沖縄旅行は嘘だったと告白文を書いていると、葵から休めなくなったとのメールが入る。
7:30の電車に乗るのを止めようと家を出た慎一郎だが、刑事がやってきて任意同行を求められる。
すきをついて振り切った慎一郎はタクシーで駅に向かう。

ギリギリで電車に間に合わなかった慎一郎。ガラス越しに葵と目が合う。
すぐに駅を出てタクシーを拾い、2つ先の駅に向かう。

警察の追跡を振り切って駅に着いた慎一郎。

駅の近くでクレーン車が作業しているのを見て、電車事故の原因になると感じた慎一郎は、発煙筒を手に線路を走る。
運転士が異変に気付いて、急ブレーキをかける。
ほぼ同時に道路の陥没が起こり、クレーン車は線路上に倒れる。

電車はぎりぎりでクレーン車のアームに乗り上げることなく停車する。

先頭車両まで駆けてきた葵は非常コックでドアを開けて飛び降り、息絶えた慎一郎を抱きしめるのだった。

慎一郎の葬儀も終わり、遺品を片づける葵。
引き出しの中にペアリングの箱を見つける。そう、実は投げ捨ててなかったのだ。

慎一郎には黙っていたが、葵自身もフォルトゥナの瞳を持っていた。
しかも、20年前の飛行機事故で助かった一人だった。

そして舞子公園での慎一郎の告白により、瓦礫の下で助けを呼んでいたのが葵。
瓦礫は崩れたが、葵は下敷きにはならず隙間で生きており、そこから引っ張り出してくれたのが、慎一郎だった。

沖縄へ行こうと言い出した慎一郎の体が透け始めたことに気づいて涙し、慎一郎には自分が透けて見えていると悟った。
そして、沖縄へ行かず、電車事故で死ぬことによって(運命を変えずに)慎一郎が助かることを願った。
しかし、慎一郎は葵を助けるために自分の死を覚悟したのだった。

切ない結末。
細かい設定は原作と異なる点もあるようだが、全体の流れやフォルトゥナの瞳を持つ者については原作通りらしい。

ラストの展開は映画と原作では大きく異なるようだが、映画のほうが腑に落ちる。
原作のラストでは、金田(退社し運送会社に勤務)のトラックと電車の衝突を阻止して死ぬ。
葵は電車に乗っておらず、報道で慎一郎の死を知るらしい。

原作を読んだ人からは葵が何もしなかったことに疑問を抱く人もいるようだが、映画では
お互いが自分の命を賭して相手を救おうとするわけで、双方の愛が強調され、ずっと受け入れやすい。

ただ、映画では透けることと死ぬまでの時間の関係は示されないが、原作では経験から透けるレベルで
死ぬまでの時間がだいたい予測できることになっているらしい。

映画でも、透けるレベルをもう少し強調するか色が変わっていくなどで表して、その辺がわかりやすければよかった。

一人の人間が他人の運命に手を出すなんてのはおこがましいというか、差し出がましいことと言うのは共感できるが、
誰にも感謝されないから止めとけというのはちょっとどうなのか。
他人を救うことで自分に危害が及ぶのは良いとして(設定として理解できるが)、運命はゼロサムのほうがわかりやすい。
つまり、誰かの命を救えば代わりに誰かが死ぬ、みたいな。ありそうな設定だけど。

チラシには「寿命が迫った人間透けて見える「瞳」。未来を誓い合った最愛の人が・・・」とあるがやや違和感。
事故死も寿命だといえばそれまでだが、透けて見えるのは寿命が迫った人ではなく、死期あるいは死が迫った人で、
葵と慎一郎は愛し合ってはいるもののまだ未来を誓い合ってはいない。

鑑賞中、どうも神戸っぽいなと思っていた。
ただ、海岸などは自分の知っている場所ではなかったが、公園の告白のシーンで明石海峡大橋に違いないと確信した。
明石海峡大橋の神戸側の舞子公園だと思われる。

 

 

       

 ピア まちをつなぐもの    

細田善彦、松本若菜、川床明日香、水野真紀、尾美としのり、升毅。

大病院で医師をしていた高橋雅人(細田善彦)は開業医の父、圭蔵(升毅)が倒れ、高橋医院を継ぐこととなった。
地元で子供のころからよく知る人も多い中、丁寧な診療を心がけていた父と比べられる毎日。

父は脳梗塞か何かで半身不随、車いす生活となり、手も動かせないことから診療は不可能。
そんな父から、往診をしてくれと頼まれた雅人はいやいやながら往診に向かう。
通り一遍の検査結果を見て処方せんを書いて終わり、みたいな診察にケアマネジャーの佐藤夏海(松本若菜)は、
患者の身になっていないと怒りまくる。

他にも、患者の意向を無視して布団を止めて介護ベッドにするよう勧めたり、嚥下の難しい患者に安易に胃ろうを勧めたり、
自宅での看護を止めて施設に入るよう勧めたりして、行く先々でケアマネと対立する。

そのうち、患者が介護ベッドから転落して大腿骨鼠径部を骨折したり、認知気味の患者が大量に似たような薬を
処方されていることに気づいたりしたことで、雅人は在宅医療に向き合うことにし、夏海に協力を仰ぐ。

在宅医療には、ケアマネや介護療養士、リハビリも複数の専門家がいたり、管理栄養士など多くの職種が関連する。
いわゆる多職種連携。

在宅医療に真剣に取り組むようになった雅人は一人のがん患者と出会う。
乳がん片乳全摘、抗がん剤治療などを経て完治と診断されて自宅に戻っていた藤本由紀子(水野美紀)は、
当初は元気だったが、そのうち咳が止まらなくなり、雅人が診断し、念のため既知の倉松病院で精密検査を受けることに。
その結果はガンの再発。
倉松病院に入院し、抗がん剤治療を始めるが改善が見られない。
ついに倉松院長(尾美としのり)は打つ手がないと判断する。

雅人はケアマネの夏海も含めて倉松院長と相談し、由紀子を退院させることにした。
しかし、高校生の娘、波留(川床明日香)は当然受け入れられず、激しく反発する。
夏海も説得にあたるが、雅人の説得が効いて波留も納得する。

由紀子の症状は悪くなる一方だったが、雅人やヘルパーらの検診で毎年恒例のお花畑への散策を果たすことができた。
程なくして由紀子は亡くなるが、夫の孝二(竹井亮介)は雅人らに感謝する。

こうして雅人は在宅医療にますます力を入れるようになっていく。

一人の医師の成長物語としてはきれいにできているが、きれいすぎる。
嫌な奴は一人も出てこないし、患者や家族もわがまま放題だったり、逆恨みする人は一人もいない。

もちろん、現場取材も各方面の協力も得ての脚本だろうし、演出だろうし、演技だろうとは思うが、
つらい、きつい、悩み苦しむ場面がほとんどなく、まるで介護業界のリクルート映画のようだった。

在宅医療が何たるかを知るにはいい映画かもしれない。
しかし、介護や看護の問題を提起するものではない。

患者側にしても介護ベッドにしたら、と言われて(たとえ1割負担でも)すぐ介護ベッドにできるものなのか。
多職種連携を見せるシーンだとはいえ、一人の患者の家に10人以上の看護師や介護士、リハビリ士、栄養士、
薬剤師などなどが、集まって支援することは、よほどのセレブならいざ知らず一般家庭には不可能だし、
もし大きな経済的負担なく、一般サラリーマン家庭でもできるとすれば、医療費がいくらあっても足りない。

医師にしても開業医がその地域の医療の中心的な役回りだとしたら、何人も何十人もの患者を毎日診るわけで、
嫌かどうか面倒かどうかにかかわらず、自由自在に往診で飛び回ることもできやしない。

終末期に本人が希望し、在宅医療が良いと分かっていても、介護負担の現実を考えると施設に入れざるを得ない。
それが経済的に叶わない場合は家族による介護看護で、家族も疲弊してしまうのが悲しい現実。

もちろん今でも介護/看護関連の方々は、きついお仕事の中、できる範囲でやれるだけのことはやっておられるとは思う。
映画のように介護や看護の必要な人々を十分に支えることができたらどんなに良いだろうか。

もう一つ気になったこと。
飲みニケーションはもう古い。
はやりすたりではなく、酒の席で親交を深めるとか、お互いを理解しあえるという考えはもう通用しない。
結局、飲み会か、と思ったのは私だけか。

恥ずかしながら、peer(ピア)が仲間を意味するとは知らなかった。
商売柄「ピア・ツー・ピア」は普通に使っていて「個」を意味すると思っていた。

辞書的には確かに「仲間」ではあるが「俺たち仲間じゃないか」のニュアンスではなく、
同等、同格、対等の仲間、というイメージ。

コンピューター用語では、「ピア・ツー・ピア」の反語と言うか対義語として「クライアント・サーバ」がある。
サービスを提供するサーバと、それを受けるクライアントから構成されるネットワーク、通信の形態だ。
これに対し、ピア・ツー・ピアは同格、対等のコンピュータとして互いにやり取りする通信方式を言う。

 

 

     

 

 グリーンブック  

ビーゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ。

1960年代初頭のニューヨーク。
有名クラブのコパカバーナで用心棒として働くトニー・リップ(ビーゴ・モーテンセン)。
客同士のもめごとには呼び出されて客を追い出す役目だが、時に激高して客をしこたま殴り倒すことも。
大体家に帰るのは明け方。妻と子供二人と逆に眠りにつく。

ある日、家の中が騒がしいので目が覚めると親戚中が集まってTV観戦中。
何事だ、と尋ねると黒人男性二人が水道の工事中。
義父は「黒人が家の中にいるのに娘をほっとけるか」とのたまう。

作業が終わり、黒人作業員が帰ると、トニーは黒人たちが使ったガラスのコップをつまんでごみ箱に捨てた。
妻のドロレス(リンダ・カーデリーニ)は黙ってグラスを取り出す。

コパカバーナが改装のため、一時閉店となり、トニーを含む従業員は解雇された。
元の清掃局のトラックドライバーにでも戻るかな、と言うトニーだったが仕事のあてはない。
ハンバーグの大食いで賭けをして稼ぐぐらい。

そんなある日「ドクターがドライバーを探している」という連絡が入る。
医師が送迎のためのドライバーを探しているだろうと考えて教えられた住所に行くと、
そこはカーネギーホールだった。

従業員に「ドクター・シャーリーに呼ばれてきた」と告げると、この上の6階(?)へ行けと言われる。
そこでは、インド人の執事がいて、経歴などを書かされ、順番を待つ。

部屋に入ると豪華調度品が満載で、一段高い玉座のような椅子があった。
奥から長い民族衣装のようないでたちの背の高い黒人が現れ、ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)と名乗った。

ドクター・シャーリーはピアニストでこれから「南部へ」演奏旅行に出かけるので、ドライバーを探しているという。
条件は、
・週給100ドル。食費/宿泊費などの経費はドクター・シャーリーが負担
・8週間でその間家に帰れないこと
・ドクター・シャーリーの身の回りの世話もすること

トニーは、週給125ドルでドライバーはするが世話はしない、それが嫌ならこの話はなし、と言って帰ってしまう。

トニーはドロレスに、ドクター・シャーリーがカーネギーホールの上階に済んでいて王族のような恰好をしていたと話す。
ドロレスはトニーの口ぶりから黒人だったの? と聞く。

翌朝、トニーにドクター・シャーリーから電話が入り、ドロレスに代わる。
ドクター・シャーリーは「トニーを8週間借りることになり申し訳ない。条件はトニーの言う通りで良い」と話し、
ドロレスはOKする。

親戚連中はどうせ4週間も持てばいいほうだ、と言ってトニーを送り出す。
プロモーターはトニーに車のキーと前金で半金を渡し、コンサートに一度でも間に合わないと残金は払わない、と言う。

カーネギーホールに着くと同じ車がいて、ロシア人のチェリストとベーシストが待っていた。
ドクター・シャーリーとトニーが同乗、チェリストとベーシストが別の車に同乗し、こうしてトリオの南部ツアーが始まった。

トニーはあらかじめ渡されていた「グリーンブック」に沿って黒人が泊まれるモーテルやレストランに行く。
中には有色人種専用(白人は泊まれない)宿もあり、時々別のモーテルになることも。

NYでも黒人差別は確かにあったが、南部での黒人の扱いは劣悪を極めた。
有色人種用の宿は粗末で、トニーにとっても「ドクター・シャーリーはよく我慢してる」と思わせるほどだった。

ゆく先々のコンサートはハイソな観客に囲まれ大喝采。
しかし、移動や街中では差別的な扱いが続く。

ある時は、コンサートの幕馬(インターミッション)にトイレに行こうとしたら、外のぼろトイレを指示され、
屋内トイレが使えないならモテルに戻るから往復で30分は掛かる、と言うと「待つ」と言われる。

トニーはドクター・シャーリーに単独行動をとらないよう言うが、ある町でドクター・シャーリーは一人でバーに行き、
白人にしこたま殴られていると連絡が入り、トニーが助けに行く。

スーツを新調しようとテイラーに入るが試着を断られ、静かに店を出る。

別の町では警察に捕まって裸で留置されていたところ、トニーがうまく警官を口車に乗せて「寄付」して釈放させる。

雨の夜、次の町へ急ぐ中で道を間違えパトカーに止められる。
警官は黒人が夜出歩くのは違法だと難癖をつけ、トニーをイタ公が黒んぼの云々とののしる。
激高したトニーは警官を殴り、二人は留置される。
ドクター・シャーリーは弁護士に電話する権利があると訴えて電話を掛けると、程なくして州知事より警察署長に電話があり釈放される。
ドクター・シャーリーの電話した相手はロバート・ケネディで、ドクター・シャーリーは司法長官に迷惑をかけてしまったと嘆く。

こうして長いツアーもいよいよ最後の町。
会場のホテル内のレストランでトニーとトリオの2人が食事しているところへドクター・シャーリーが入ろうとすると止められる。
地域の規則では入れないと頑として入店を拒否する支配人。
トニーも引かないが、支配人はトニーに金を渡してドクター・シャーリーを説得させようとした。
怒るトニーをなだめたドクター・シャーリーは、このレストランで食事できないのならコンサートもできないと宣言してホテルを去る。
トニーと二人で場末のレストランに入ったドクター・シャーリーは促されてピアノを弾き、店のメンバーと即席のセッションで盛り上がる。

気分良く店を出た二人。
ドクター・シャーリーは今から帰ればクリスマスイブに間に合うと言ってトニーに車を走らせる。
しかし、ひどい雪に見舞われ苦労しているとパトカーに停止させられる。
またかよ、と思いつつ対応すると警官の言葉はなんと「パンクしてますよ」だった。
警官が他車の誘導をしてくれる中、トニーがタイヤを交換し終えると警官は「気を付けて」と送り出してくれた。

そのころ、トニーの家ではクリスマスパーティの準備で大忙しだった。
先を急ぐトニーだが眠気には勝てない、もう休ませてくれと言うのだった。
ドクター・シャーリーが運転を交替しついにトニーの家までたどりついた。
ドクター・シャーリーはトニーを起こし、家族に会ってくれと言うのを振り切ってカーネギーホールの部屋に戻る。

にぎわうトニーの家。あの黒んぼ(ニガー)はどうだったと聞く親戚に対し、その言い方は止めろとたしなめるトニー。
そこへチャイムが鳴り、ドクター・シャーリーがやってきた。
全員で大歓迎し、パーティが一層盛り上がるところで映画は終わる。

タイトルのグリーンブックは1966年まで発刊されていた「黒人ドライバー(後に「旅行者」に改題)のためのグリーン・ブック」
表紙は青緑っぽいが、実際には著者がビクター・グリーンであることに由来する。

実話に基づく。
脚本にはトニーの息子であるニック・バレロンガも参加しており、物語は劇中にもあった「トニーからの手紙」を
元にしているそうだ。

ラストでドロレスがドクター・シャーリーに「手紙をありがとう」と耳打ちするシーンは感動的。
その前の「トニーをお返しします」の字幕は「ご主人を長い間貸していただいてありがとう」の方が良かった。
字数が問題なら「トニーを長く借りて申し訳ない」ぐらいか。

尚、映画では8週間のツアー旅行だったが実際には1年以上だったらしい。
当時司法長官だったロバート・ケネディに電話したのは事実らしい。

第91回アカデミー賞作品賞受賞作。
どんなものにも批判はつきもので本作にも「白人救世主」の物語だ、との批判があるらしい。
「白人救世主物語」とはかわいそうな非白人の窮地を善良で勇猛果敢な白人が救う物語で、主人公はもちろん白人、
非白人は自分たちで問題解決ができず苦境に甘んじている無能な人々として描かれているというもの。

しかし、個人的にはその批判は当たらないと思う。
確かに主人公のトニー・リップは白人で、ドン・シャーリーは黒人だし、トニーは何度もドクター・シャーリーの危機を救う。
しかし、トニーもまた差別されるイタリア系民の子で、粗野で理不尽ででたらめで、決して高邁な人物ではない。
言葉遣いもひどく、自信をブルシット(bull shitt)と呼ぶぐらいだ。

一方のドクター・ドン・シャーリーは天才的ピアニストと言うだけでなく教養に富み、行儀作法も言葉遣いも素晴らしく、
争いを避け、感情を押し殺す人物。(だからこそ終盤感情を爆発させるシーンが秀逸)
窮地を救われるものの何もできないかわいそうな人々(の代表)ではないと思う。

かわいそうな扱いを受ける多くの黒人が登場するシーンもあるが彼らは本編とは直接の関わりを持たず全く救われもしない。

本作を「ホワイト・セイビアー」だと批判するのは「アリータ」を「ホワイト・ウォッシュ」だと批判するのと同じ
言いがかりにすぎないと思うのは私だけでしょうか。

映画が楽観的過ぎるとか現実を見てないとか、トニーとドクター・シャーリーの関係はあんなではなかったとの批判もあるらしい。
実話に基づくとはいえ映画は映画。
伝記ドキュメンタリーでも再現フィルムでもないんだから、人間関係が事実と違おうが希望のある内容結末にしようがどこが悪い。

 

 

      

  

 運び屋  

クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、マイケル・ペーニャ、ローレンス・フィッシュバーン、
ダイアン・ウィスト、アリソン・イーストウッド、タイッサ・ファーミガ、アンディ・ガルシア。

2005年。
園芸家のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は自慢のデイリリーを品評会に出す。
アールのブースは大人気で、花を配ると人が押し寄せるような状態。
すぐそばでは、ネットで花を注文するデモをやっていたがアールは冷ややかに見ていた。
結果、アールのデイリリーは最優秀賞を取り表彰後にはバーに移ってパーティが行われた。

そのころ、ストーンの家では娘のアイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式の日だった。
式に遅れそうな父をやきもきしながら待つアイリスに母親のメアリー(ダイアン・ウィスト)はどうせ来ないと言ってのける。
「じゃ、花嫁の父(花嫁の父は花嫁をエスコートしてバージンロードを歩み、花婿のところまで連れていく)はどうすんのよ」
と焦りまくるアイリスだったが、そのころアールは、パーティ会場でみんなにおごりまくっていた。

12年後。
妻、娘、孫娘は家を去り、アールの園芸場はつぶれ、家も差し押さえられていた。
アールは使用人になけなしの金を配り、家財をトラックに積んで家を後にした。

アールは結婚前のパーティをしていた孫のジニー(タイッサ・ファーミガ)の家を訪れる。
ジニーは歓迎してくれたが、そこへメアリーとアイリスがやってきてアールを見て憤慨して帰ってしまう。

さみしそうに帰ろうとするアール。
ジニーのパーティに来ていた一人がアールを慰めに来て、車の話になり、全国を回ったとか違反したことがないとか、
その男は、運転するだけの簡単な仕事があると言って名刺を渡す。

アールが電話した先はメキシコ国境にほど近いテキサス州のタイヤ屋だった。
シャッターの中で胡散臭そうなメキシコ人っぽい男たちに囲まれ、乱暴な口を利かれて荷物を運ぶよう指示される。

イリノイ州の指示されたモテルまで行き、車のキーをダッシュボードに入れて1時間車を離れる。
戻るとキーと金がダッシュボードに入れられているという段取りだった。

車に戻ったアールがダッシュボードを開けると封筒に入った法外な大金が。
びっくりするアールに窓を叩く男がメモを渡し、またやりたければここに連絡しろという。
一回だけの約束だ、と言うアールに男はもしもの時のためだ、とメモを押し付ける。

アールは長年使い続けたおんぼろトラックを黒のSUVに買い替え、差し押さえられた家の借金も返すことができた。
なじみの退役軍人会館へ向かうと、厨房が火事になり金も払えなくなって閉鎖するかもしれない、と言われる。

アールは2度目の仕事を受けまた金を手にする。多額の寄付をしたおかげで会館は再開することができた。

そのころDEA(麻薬取締局)のベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)はシカゴ支局に転勤。
上司(ローレンス・フィッシュバーン)に激励される。
ベイツ捜査官は同僚のトレビノ捜査官(マイケル・ペーニャ)とともに、麻薬組織の一人を無理やり情報提供者に仕立て上げ、
麻薬運搬一味を逮捕しようと考える。

3度目の仕事。今度の荷物は過去2回よりかなり大きい。
走行中、荷物が気になったアールは路肩に止めて中身を見てしまう。
大量の麻薬の包み。まずいことになったと思っていると警官が近づいてくる。
積み荷が気になって、と積んでいたナッツの包みを見せて警官をやり過ごそうとすると警察犬におしっこをさせるところだと言う。
咄嗟に痛み止めクリームを手に塗って近づいてきた犬の顔をなで、麻薬の臭いをごまかす。
警官は犬に触らないで、と言って犬を連れて戻っていった。

いつものモーテル。
時間を空けて戻ったアールは大量の札束を手にした。

こうして回を重ねるごとにアールの運ぶ荷物の量は少しずつ増えていく。

麻薬組織のボス、ラトン(アンディ・ガルシア)は、アールにいつもの何倍もの麻薬を運ばせることにした。
しかし、心配なので、配下のフリオとサルを監視役につけて荷物を運ばせる。

アールは荷物を積む際に組織の一人に届け先の住所をスマホに入れてもらう。
フリオとサルはアールの車に盗聴器を仕掛け、少し離れてついていく。

アールはパンクした車を助けたり、予定外のところに泊まったりとフリオを翻弄する。
フリオは怒りまくり、ラトンにアールを殺していいかと尋ねるが、普段通りだから怪しまれない、一蹴する。

アールは目的地の直前で、突然予定外のルートに入りモーテルとは全く別のところに車を止める。
ここに行けと指定されたと言い張り、荷物を渡そうとするが、追い付いたフリオらとその場所のやくざが揉める。

ある時、アールが北部のカフェで止まるとメキシコ人が珍しいのか、皆が怪訝な目でフリオとサルを睨む。
アールはここのポークサンドはうまいんだと、フリオとサルにサンドイッチをおごる。

店を出ると警官がフリオとサルを呼び止める。
アールは2人とはホームセンターで知り合って引っ越しの手伝いをしてもらっているんだと警官に言い、
車を開けてみんなで食べてくれと言ってどでかいポップコーンの缶を2つ警官に渡す。

ラトンはアールの仕事を喜んでメキシコの自宅に招き、大パーティを開いて歓迎する

アールは金回りが良くなり、ジニーの学費も出してやったり金のブレスレットをしたり。
運び屋稼業も順調で仲間からは「タタ」(おやっさん、父ちゃん)と呼ばれ、麻薬運搬量の組織の月間新記録まで作ってしまう。

情報提供者からの情報で、運び屋は黒いSUVに乗っていることと、運ぶ日付がわかる。
ベイツとトレビノは、運搬ルートで黒い車中心に捜査をするが、全くアールにはたどり着かない。

泊っているモテルの情報を得たが、怪しいとにらんで捕まえた屈強な男はわずかのコカインを持っていただけだった。
翌日、カフェでベイツと遭遇したアール。会話を交わしたもののベイツはアールを全く疑わない。

全く成果の上がらないベイツとトレビノに業を煮やした幹部連中は、捜査の打ち切りをにおわす。
ベイツとトレビノは通報情報をもとに組織の拠点の一つをガサ入れし、大量の麻薬を押収する。

組織ではラトンのやり方に反発する勢力がラトンを殺し、ボスに成り上がる。
そして、アールの監視役を交替させる。

新しい監視役はアールを森の中に連れて行き、サルの死体を見せて遅れたりルートを外れたりするとこうなると脅す。
そして、12回目の麻薬運搬中に孫のジニーから電話が入り、メアリーが倒れ、手の施しようがなく数日の命と告げられる。
仕事中といったんは断るが、アールは運搬を中断してメアリーのもとに駆け付ける。

メアリーはアールが来たことを喜び、金はどうして手に入れたと聞く。
最初ははぐらかしていたアールもついには麻薬を運んで大金をせしめたと白状するがメアリーは信じず笑うだけだった。
アールはずっとメアリーに付き添い最期を看取った。アイリスもアールを許し、和解する。
そして葬式に参列してから、運搬を再開した。

その間、組織はアールの所在を見失い、いら立っていた。ベイツとトレビノも「タタ」の消息をつかめないでいた。

監視役がついにアールを見つけ傷めつけるが「妻の葬式に行っていた、殺すなら殺せ」と開き直る。
監視役は新ボスに電話して結局運搬を続けさせることに。

しかし、その間も黒いSUVを追っていたベイツとトレビノもついにアールの車を見つけ、道路を封鎖してアールを停止させる。
ベイツは車から降りたアールに驚くが、アールは抵抗もせず逮捕される。

裁判。
弁護人は脅されてやむなく運び屋をさせられていたと弁護しようとしたが、アールは罪をすべて認めると言って結審する。

服役していたアールは刑務所内の花壇で得意のデイリリーを育てるのだった。

**

派手な場面はほとんどなく物語は淡々と進む。
イーストウッド流と言った感じ。

実話に基づく新聞記事をベースに映画化したもの。
アール・ストーンは、レオ・シャープと言う実在の人物をベースにしている。
レオ・シャープは2年間にわたって運び屋を務め、87歳で逮捕され、3年間の刑期を終え、92歳で死亡したらしい。
映画と違い、有罪に「私にとっては死刑と同じだ」と落胆したらしい。

「差別」がまだまだ残っていることをさりげなく示している。

アールが黒人に対し「ニグロ(ニガー)」と言って「今はそう言わない」と言われるシーン。
アールには差別意識がないのにそういう用語を使っていることがわかる。

また、イリノイ州だと思うが、カフェでサンドイッチを食べるシーン。
アールはここでも言葉は忘れたがヒスパニックを差別する用語を使う。
ただアール自身に差別意識はなく、むしろ地域の人が差別的な目で見ており、(おそらく警察に通報したことで)
ヒスパニックと言うだけで、警官が職質する。

このシーンはアールの対応にフリオらが心を開く説明シーンと言うだけでなく人種差別を示している。
ことさらこれを強調していないのは、序盤でアールがそもそも日常的に深い意味もなく、ヒスパニックの使用人らと
ひどい言葉を交わしあっていることを示して、旅先でもアールは特に意識せず普段通りの行動をとっていると
見せているからで、実は深い。

モデルとなったレオ・シャープはミシガン州デトロイト在住で出発地ははっきりしないが、デトロイトまで麻薬を運んでいたらしい。
映画ではアール・ストーンの居住地ははっきりしないが、南部テキサス州エルパソからイリノイ州シカゴまでの運搬だった。

レオ・シャープがアール・ストーンのようにヒスパニックを雇い、スペイン語で悪口三昧だったとは思えないので、
意識して盛り込まれたものだと思われる。

分かりにくいのが、アメリカ流の仕事と家庭との関係に対する考え方。

品評会を娘の結婚式より優先するのは行き過ぎだとは思うが、園芸が趣味で家が傾いたのならまだしも
ユリの栽培で生計を立てているのに、かみさんや子供は全く理解しないのだろうか。

旦那の仕事を承知で結婚したのではとは言わないし、娘の用事より仕事が優先とも思っていないが、
仕事を全否定するような発言はどうなのか。

娘役のアイリスはアリソン・イーストウッド、クリント・イーストウッドの実の娘である。
孫娘役のタイッサ・ファーミガはベラ・ファーミガの妹だが、年の差は21歳。
スチル写真の中にはベラ・ファーミガの面影が見えるものがある。

原題は「The Mule」。
かかとのない靴のミュールと同じスペルだが。俗語で「運び屋」のこと。
その意味で邦題はピッタリそのまま。
変な修飾語をつけなかったワーナージャパンには拍手。

アールが呼ばれていた「タタ」(el tata)は、「父ちゃん」。英語でいえばダディ。
連中が「父ちゃん」ではおかしいが、「爺さん」は言い過ぎ。
「とっつぁん」「おやっさん」「おやじ」てなところか。

 

 

      

 

   えいがのおそ松さん     

*

20歳になったおそ松ら六つ子の面々は、高校の同窓会に来ていた。
6人のあこがれの的であるトト子ちゃんも参加していたが「高橋さん」という覚えのない同窓生を探していた。

おそ松がトイレに行き、残りの5人がカウンターで一列になって飲んでいると友達が仕事を聞いてきた。
5人は「ニート」と言えず、つい「サラリーマン」と答え、彼女だっているとほらを吹いてしまう。

しかし、もどっきたおそ松は「ニートで彼女もいない童貞」だとばらしてしまい、場がしらける。
6人は二次会にはあとで行くと言って行かず、帰宅。
家で車座になって飲み続ける。

翌朝、目が覚めると部屋の様子が違っていて、高校時代の6人の部屋のようになっている。
町の様子も高校時代のよう。

6人が焦って外に出てみると町の様子も通っていた高校も当時のまま。
トト子ちゃんは相変わらず可愛いが、陰から眺める高校生の自分たちの姿には恥ずかしい限りだった。

6人の記憶が一部違っているのは、ハタ坊が象に追いかけられて車と衝突し、撥ね上げられて航空機と接触し墜落させた事件が
あったのかなかったのか、という点。
そしてなぜかわからないが高校時代の6人はバラバラで仲が悪かった。

よく見ると同級生たちの顔が「へのへのもへじ」だったり、町の様子もところどころ手抜きの絵の様だったり。
ちょうど出会ったデカパン博士に事情を説明すると、6人は誰かの後悔の念が生み出した思い出の世界に迷い込んでおり、
その思いを解消しなければ元の世界には戻れない、さらに時間が経てばこの世界は崩れ6人は閉じ込められてしまうだろうという。

6人はいろいろと記憶を探り、ついに1通の手紙にたどり着く。
それは、高校の卒業式の前日。家の玄関に挟まれていた「松野君へ 高橋」と書かれていた封筒。
同窓会で奇しくもトト子ちゃんが言っていた「高橋さん、来てないね」と言っていた。
手紙は真っ先に帰宅したチョロ松(本当は誰だったか失念、説明都合上チョロ松とした)が発見したが、
誰宛かわからなくて開けるに開けられず、翌日みんなに聞こうと持っていた。
しかし、屋上で6人は喧嘩になって手紙をなくしてしまい、それっきりになっていたのだ。

もしかしたら、6人のうちの誰かに当てたラブレター。6人にはバラ色の高校生活が(と言っても卒業間近だが)
あったかもしれないのだ。

大人の6人は変装して高校に乗り込み、6人のけんかを止め手紙を読み、誰宛かをはっきりさせることにした。

そして卒業式当日の屋上。
まさに喧嘩を始めようとする6人の前に立ちはだかる覆面姿の怪しい6人組。

乱闘の末、6人の正体が大人になった六つ子だと、高校生の六つ子にばれたものの、何とか手紙を手に入れた。
そしてその手紙の内容は、なんと白紙。
それもそのはず、ここは思い出の世界。
現実には手紙をなくしてしまい誰も中身を見ていないので、その思いでも空っぽだ。

6人は記憶のない「高橋さん」に事情を聞くことにする。
よく覚えていない高橋さんの住所を探し当て、思い出の世界がどんどん崩れていく中、町はずれの高台にある高橋さん宅を目指す。
そしてついに高橋さん宅に到着し呼び鈴を押し、高橋さんを呼び出すことに成功した。
「ごめん、せっかくの手紙を亡くしちゃったんだ。何が書いてあったのか教えて。」
「そんなことより、写真を撮って。」

6人は高橋さんを中心に記念写真を撮る。
そして崩れ行く世界の中で、気づいたら元の世界に戻っていたが、デスクには高橋さんと一緒に撮った写真が残っていた。

高橋さんの手紙は6人の誰かに宛てたものではなかった。
仲良しだった6人全員に宛てたもので、自分は遠くに行きもう会えなくなるので、最後に一緒に写真を撮りたいというものだった。
そして、ベッドに横たわり、窓の外を眺める高橋さんの姿が映って物語りは終わる。

**

漫画「おそ松くん」では全く同じ一卵性の六つ子の「おそ松」「カラ松」「チョロ松」「一松」「十四松」「トド松」の話で、
読み手には誰が誰だか分からない状態で展開していたが「おそ松さん」では、それぞれに別々の個性が与えられ、
イメージカラーまで設定されている。
「おそ松さん」の年齢は20代前半ということらしいので、この映画は時系列的にはその前にあたる。

テレビの「おそ松さん」見ていないので、声優陣については全く分からない。
六つ子の一人が「かよチュー」の井畑、高橋さんは「ちびまる子ちゃん」のたまちゃんだと思っていたがどうも違うようだ

トト子ちゃん、デカパン、ハタ坊、のほかに、チビ太、ダヨーン、イヤミが登場する。
ウナギイヌ、ケムンパスなどは出ない、というか出番がない。
また、「おそ松くん」を初め、赤塚作品でよく登場する「本官」(目のつながった警官)や「レレレのおじさん」も出ないが、
彼らは本来「天才バカボン」のレギュラーメンバーである。

高校時代のトト子ちゃんが、あの特徴的な髪型ではなく、垂らしたロングヘアーだったのは意外だった。

空想の世界では何でもありが許されるので、展開が読めないだけでなく細かい点がハチャメチャだった。
ただ、空想の物語ではなく、タイムスリップものとしても十分成立するし、それも面白い話になったのではないだろうか。
高橋さんの言う「遠く」がどこなのかは明示的には示されないが多くの観客には想像がつく。

 

 

             

   アリータ バトル・エンジェル  

ローサ・サラザール、クリストフ・バルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリ、エド・スクライン。

26世紀。
没落戦争(ザ・フォール)から300年。
殆どの空中都市は戦争で墜落し、ザレムだけが残っていた。
地上にはくず鉄が山になったアイアンシティがあり、人々は貧困生活を強いられていた。

サイボーグ医者のイド(クリストフ・バルツ)はくず鉄の中から使えそうなサイボーグパーツをあさっていたが、
偶然、殆ど傷んでいない胸から上だけになった少女のサイボーグを発見する。

イドは、それを医院に持ち帰り、どこからかサイボーグの体を運んできて少女の体を修復する。
少女の脳は失われた技術で作られた心臓によって損傷なく生きながらえており、感覚も正常に作動していた。
しかし、記憶は全く失われていた。

名前も忘れてしまっている少女にイドは「アリータ」と名付けた。
町に出たアリータは空中に浮かぶザレムを見て行ってみたいとイドに告げるが、下の人は上に行けないと言われる。

イドが医院に戻り一人になったアリータに額に三角のマークがついた女性(ジェニファー・コネリー)が近づく。
アリータの体は実はイドが亡き娘アリータのために作ったサイボーグボディで、後に明かされるが
イドとこの女性シーレンはかつてザレムに住む夫婦。

アリータは町で人懐っこい小型犬を見つける。
ガードロボットに惹かれそうになったその犬をアリータは驚異の身体能力ですくう。
それを見ていたヒューゴ(キーアン・ジョンソン)は、アリータに接近する。

アリータはヒューゴのモノバイクに乗って町の様子を見て回り、ヒューゴがザレムに行く夢を持っていることを知る。
そして自分はくず鉄山に落ちていたことから不要になってザレムから捨てられたんだと思う。

そのころ町では女性が殺され、その体からサイボーグ・パーツが盗まれる事件が頻発していた。
夜中に大きいトランクを持ってこっそりと出かけるイド。

アリータはイドがそのパーツ強盗殺人半ではないかと心配し、ある夜、出かけたイドの後を追う。
イドはフードをかぶった女性を待ち伏せし、トランクから武器を取り出し待ち構える。

アリータが咄嗟に阻止しようと飛び出すと、実はその女性はアウトローの強殺サイボーグ、ニシアナで、
アウトローのハンターであるイドをおびき寄せていたのだ。

アリータに「逃げろ」と叫ぶイド。しかしアリータは反撃し、ニシアナを叩きのめす。
アリータは同時に襲ってきたマッチョボディのサイボーグ、グリュシカにも反撃し、片腕をもぎ取る。
その戦闘中、アリータは自身が戦っていた記憶が少しよみがえり、99号と呼ばれていたことを思い出す。

グリュシュカは逃げ、町のボス、ベクター(マハーシャラ・アリ)のもとに行く。
グリュシュカをつぶそうとするベクターに対し、シーレンがグリュシュカを修理し強化するというと、
グリュシュカを遠隔操作するザレムの支配者、ノバがそうしろと指示する。

また、アリータの格闘技の能力を調べるため、アリータを確保するよう指示する。

イドはアリータに分かっていることを説明する。
アリータの脳は10台の女性のものであること、接合した体は自分の娘のために用意したものであること。
イドは娘が違法なサイボーグパーツ強殺犯に殺されたため、自ら賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)のハンターウォーリアーとなり、
娘の復讐とともに稼いだ賞金で委員をやっていること。
アリータの心臓は失われた技術の反物質のマイクロリアクターで、強大なパワーを持っていること。
特殊な戦闘能力は、戦争で失われた格闘技パンツァークンストによるものであること、
すなわちアリータは300年前の戦闘員であること、などだ。
アリータはザレムに行けば記憶がよみがえるかもしれないと考えるがイドは猛反対する。

ヒューゴと急速に親密になっていくアリータは、一緒にモーターボールを見に行って興奮する。
ヒューゴは用事があると言って先に帰るが、実はヒューゴとその仲間はサイボーグパーツ強殺団だった。
非ユーゴが奪い取ったパーツはビクターが買い上げ、シーレンがモーターボール・プレイヤーに改造を加えていた。
シーレンもヒューゴもザレムに行くために「つて」を持つベクターの指示に従っていたのだ。

次の日、ヒューゴと仲間たちはアリータを湖に墜落した宇宙船のところに連れて行く。
没落戦争は地球と火星連合URMの戦いで、宇宙船はその残骸だった。

アリータは躊躇なく水中に飛び込んで宇宙船の中に入っていく。
そしてその中で、自分の体にフィットするハイパーボディ(バーサーカー)を見つける。
医院に持ち帰り、体を交換してほしいと頼むアリータにイドは拒否する。

アリータは、ハンター登録所に赴いて「ハンターウォーリアー」の登録をし、ハンターウォーリアーがたむろするバーに行く。
アリータはザレムのやつらをぶっ潰そうと熱弁をふるうが、皆の反応は薄い。
ザパン(エド・スクライン)をはじめとした何人かが襲ってくるが、アリータが反撃していると強化されたグリュシュカが入店。
以前助けた小型犬を刺し殺してしまう。

怒りまくるアリータを地下道に誘い込んで戦いを挑むグリュシュカ。
強化されたグリュシュカはアリータの片腕、両足、胴体を切り離す。
アリータは残された片腕でグリュシュカの片目をつぶす。
そこにヒューゴやイドが加勢に入り、グリュシュカは逃げる。

四肢と胴体の大半を失ったアリータ。イドはやむなくアリータをバーサーカーと接合すると、バーサーカー自身が変化してアリータと融合した。
アリータは新しい体をヒューゴに見せる。
ヒューゴがあと少しの金でザレムに行けると知ったアリータは自分のマイクロリアクターの心臓を差し出す。
ヒューゴが断るとアリータはモーターボールで賞金を稼ぐことにする。

ヒューゴはアリータの試合を見る前にサイボーグパーツ強殺団から抜けると仲間に言いに行くが、
ザパンがヒューゴを殺人犯に仕立て上げ、指名手配犯にした。

一方のアリータの試合相手はハンターウォーリアーやお尋ね者だった。
モーターボール主催者でもあるベクターはアリータを殺すよう指示、ゲームが始まった。

ボールの奪い合いではなくアリータをターゲットにした殺し合いとなった試合。
そこにザパンに追われているヒューゴから通信が入る。
アリータは会場を飛び出し、追ってくる相手を抹殺しつつ、ヒューゴのもとに急ぐ。
ザパンは追い付いたアリータにヒューゴの正体を明かし、ヒューゴに剣を突き立てる。

ヒューゴの首を切り取れと迫るザパンにヒューゴを抱いて教会に入るアリータ。
体をあげたいと泣くアリータにシーレンがアリータの心臓をヒューゴの脳とつないで命をつなぐ。

ヒューゴの首を取ったアリータ。ザパンがヒューゴの首を確認し、奪おうとすると違法行為とみなされ、
ガードロボットに制止され、アリータはザパンの顔面を切り落とす。

イドによってサイボーグの体にされたヒューゴ。
イドはザレムに行くにはモーターボールで優勝する以外にはない、ヒューゴは騙されたという。

一方、シーレンはベクターに咎められ、ザレムに行くことを止めベクターから去る。
さこにアリータが現れ、ベクターにザレムに行く話は嘘だったのかと詰め寄る。
ベクターはザレムには行けるがバラバラの臓器になってだ、と言い放つ。

そこへ待ち伏せしていたグリュシュカが現れ、アリータの脇腹を刺す。
一瞬倒れるアリータだが自己治癒し、グリュシュカを真っ二つにする。
そしてベクターを操るノバの存在を知り、ベクターを刺し殺す。

この時、アリータはかつてザレムを破壊するため、仲間とともにケーブルを登っていて、防御装置の攻撃に遭い体が切断されたことを思い出す。
イドの医院に戻ったアリータはヒューゴが医院を抜け出してケーブルを登って行ったと知り後を追う。

罠だと必至にヒューゴを諭すアリータ。
ヒューゴがアリータの説得に戻ろうとしたとき、ノバがスイッチを押し、防御装置がケーブルを降下、
うまくかわしたアリータだったが、ヒューゴは体を切断され、辛うじてアリータに腕をつかまれる。
しかし、その腕もちぎれてしまい、ヒューゴは霧の中に落ちて行った。

数か月後、モーターボール会場にザレムに行くためチャンピオンを賭けて最終戦に挑むアリータの姿があった。

**

完全に続編を匂わせる終わり方。
本国での興収は今のところ冴えないが、中国はじめ諸外国での成績は順調で続編に期待が募る。
このところのハリウッド映画はリメイク、リブート、時期のずれた続編なども多く、
ヒット作は「2」「3」と作るのが常態化しているから、続編は十分期待できる。

ただ、ジェームズ・キャメロンには「アバター2、3」など大作が目白押しで、続編があったとしてもいつになるかは不明。

劇中にゲームシーンが組み込まれる場合、本題とはあまり関係ない展開で、極端に言えばなくても済むことが多いが、
本作ではモーターボールに出る必然性やそこでバトルになる蓋然性がうまく組み込まれている。

また、ヒューゴの商売とベクターの関係性などもうまく説明されていて違和感はない。

アリータは「メイズランナー」に出ていたローサ・サラザール。
アリータのキャスティングをまだ知らなかったとき、「メイズランナー 最後の迷宮」を見ていて、ローサ・サラザールがやればいいのに、
思ったが、その後実際そうだったと知ってびっくりした。

顔や体はCGIだが、その動きはローサ・サラザールによるもので、動きや表情に違和感は全くない。
最初見たときは目の大きさにちょっと引いたがすぐに慣れ、違和感は雲散霧消した。

目が大きいのは原作コミックというか日本のコミックへのリスペクトだそうだ。
設定では火星連合の戦士はみんな目が大きいことになっているらしい。

よくよく考えれば体の切断など結構グロいはずのシーンが多く出て来るが、気味悪さは感じない。
サイボーグの血液に相当するものが青いことも違和感を少なくしているのかも。
物語の本質には関係ないが、生物の血が赤いのは鉄のせいで、イカなどの薄い青系の血は銅によるものだ。
酸素の運搬には鉄系の血が有利なので赤い血が多いのだから、青い液体の原理、正体は気になってしまう。

原作は未読だが、本城ゆきとの「銃夢」(がんむ)。
主人公の少女は原作では「ガリー」らしいが、英語では悪い意味の単語に近いため、英語版コミックにされる際に「アリータ」に変更された。

日本の漫画の映画化ということでまたぞろ「ホワイトウォッシュだ」との批判があるらしい。
プロデューサーであるジェームズ・キャメロンはそもそも原作では日本とも日本人とも限定されていない、と反論している。

このホワイトウォッシュ論争は全く以って不毛ではないだろうか。あるいはいちゃもんである。
元々は黒人のキャスティングを白人が奪っているとの批判から出発しているのだろうが、それはそれで意味があるとして
日本人役は日本人、イギリス人役はイギリス人などとやっていけば自分たちの演技の幅を狭めるだけでなく、
逆に国籍による排除、差別につながってはいかないか。
そのうち、宇宙人役を人間がやるのはおかしいとなりかねない。

最近は同性愛者の役をLBGTでない人物がやったことでも批判があった。
これを突き詰めれば、殺人犯の役は本物の殺人者、被害者役は被害者、強盗役は強盗などとなってしまう。
それじゃ、ドキュメンタリーしか作れないことになってしまうし、死者の出る映画は作れない。

映画はあくまでフィクションであり、原作があったとしても原作と映画は表現方法だけでなく様々な点で別物だから
完全に原作通りである必要は全くないと考える。

 

 

      

 七つの会議   

野村萬斎、片岡愛之助、及川光博、香川照之、鹿賀丈史、橋爪功、世良公則、藤森慎吾、朝倉あき、勝村政信、北大路欣也。
他に土屋太鳳、小泉孝太郎、春風亭昇太、立川談春、吉田羊、木下ほうか、溝端淳平、役所広司らも出演。

中堅電機メーカー、会議室に東京建電の全営業部員の居並ぶ中、11時きっかりに営業部長の北川(香川照之)が入室。
ほんのわずか遅れて入室した親会社ゼノックスの常務、梨田(鹿賀丈史)の見守る中、月次営業会議が始まった。

営業2課はまたも目標未達、2課長の原島(及川光博)は北川から激しく叱責される。
一方の営業1課は連続の目標達成、1課長の坂戸(片岡愛之助)は北川から褒められるが、なお一層の頑張りを指示される。

会議中、1課のお荷物係長、八角(やすみ、野村萬斎)が居眠りをしているのがばれ、北川はにらみつけるだけだった。

課に戻り、のうのうと有給申請を出す八角。
坂戸は罵声を浴びせ、有給申請を破り捨ててしまう。
八角は怒りをあらわにし、社内のパワハラ委員会に訴えると声を張り上げる。

坂戸はパワハラの審問を受けることになったが、多くの営業部員は八角の訴えは無視され、坂戸はお咎めなしと予想する。
しかし、予想に反し坂戸は人事部付きに異動させられ、後任の1課長はなんと原島が任命された。

伝票や事務の詳しいことは庶務担当の浜本(朝倉あき)に聞いてくれと引継ぎもそこそこに1課を後にする坂戸。
ただ、浜本は何か月か先には寿退社の予定になっていた。

翌月の営業会議。
課長が変わったとたんに業績未達の1課。
原島は北川に激しく叱責されて吐いてしまうが、席に戻る時、椅子からひっくり返ってみんなに大笑いされる。
しかし、北川と八角だけは笑っていなかった。

庶務担の浜本は表向き寿退社の予定だったが、社内不倫の末、自分に嫌気がさして辞める気になり退職願を出したものの
坂戸に理由を聞かれ、つい「結婚する」と言ってしまったのだった。
浜本は提案会議で社内にドーナッツの販売コーナーを設けてはどうか、とのアイデアを出す。
営業と仲の悪い経理は加茂田課長(勝村政信)と新田係長(藤森慎吾)が結託してアイデアをつぶしにかかるが、
親会社から出向している村西副社長(世良公則)の一声で試験販売が認められた。

加茂田は新田に営業部の鼻を明かせるネタを探すよう指示する。

新田は「ネジ六」という部品会社への接待費が高いことをなじりに営業に乗り込むが、八角に反撃されぐうの音も出ない。
その「ネジ六」は以前下請けとして使っていたが、坂戸がコスト高を理由に切った会社だった。
それを八角が坂戸が失脚した途端、坂戸が決めた「トーメイテック」から再び「ネジ六」に戻す「転注」をしていた。
八角は自ら町工場の「ネジ六」を訪れ、東京建電に切られて資金繰りの苦しい「ネジ六」に再びねじを作ってほしいと持ち掛ける。
妹の奈々子(土屋太鳳)になだめられながらも怒りが収まらない三沢社長(音尾琢真)だったが、八角からねじを受け取って
引っ張り試験機にかけると、その表情は一変した。

新田は「トーメイテック」からコスト高の「ネジ六」に転注したことで差額の月90万を八角追い落とし材料になると見た。
癒着? バックマージン? 
新田はこれを加茂田に進言、飯山経理部長(春風亭昇太)も部長会議で営業部を非難し八角をつぶそうと考えた。

部長会議で飯山は意気揚々と加茂田にこの件を宮野社長(橋爪功)に報告させ、八角のせいで年間1千万ものコスト高だと説明した。
北川は部品のコストは営業の責任で行っている、それに決裁したのは新課長の原島であり、八角には関係ないと擁護した。
この件は宮野社長が経理が口を出すことではないと一喝して落着。経理は大恥をかかされることになり、加茂田は新田に激怒した。

浜本から部長会議で「ネジ六」への転注を自分がやったことになっていると聞かされた原島は、八角について調べることにした。
北川部長と同期の八角。新人時代から最高の評価を得ていた八角は係長昇進直後の約20年前から突然最低ランク評価になっていた。

八角の謎を坂戸なら知っているだろうと原島は浜本と一緒に坂戸の自宅を訪ねたもののたまたま来ていた兄が対応。
暫く不在で行く先はよくわからないということだった。

一方、浜本のドーナッツ試験販売は盛況で完売することが多かったが、時々料金が合わないことがあった。
無人販売を良いことにドーナッツ泥棒がいるのではないか、そして浜本は八角が怪しいとにらんでいた。
新田は浜本にドッナーツ売り場は絶対認可しないと言い放つが、黙って聞いていた八角は「元カレなのに冷たいな」と言う。
そう、発覚は浜本の不倫相手が新田であることを知っており、浜本も認めざるを得なかった。

八角は浜本の示す売上表から水曜の夜が怪しいと見抜く。
水曜の夜、浜本は原島と一緒に物陰からドーナッツ泥を探す。
そしてついに発見、ドーナッツ泥は経理の新田だった。
浜本の追及に開き直る新田だったが、原島の登場で観念した。
浜本は新田との関係やドーナッツ泥の件を人事にリークするまではしなかったが、新田は東北営業所に異動となった。

浜本の社内の情報ネットワーク(女子社員同士のリークネット)では異動の理由はばれていた。

カスタマー室の佐野室長(岡田浩暉)はかつて営業1課で北川と出世を競っていたが、争いに敗れクレーム対応に追いやられた。
佐野は北川を恨んで、その失態を暴き、あわよくば営業部への復帰をもくろんでおり、原島にも北川を失脚させると吹き込んだ。
しかし、程なく佐野は小倉営業所に飛ばされてしまう。

ますます八角が怪しいとにらむ原島。
社内で関係者の関連を調べていると、八角が近づき、それ以上首を突っ込むなと脅してくる。

原島は浜本とつるんで八角の行動を探ることにした。
定時退社した八角は、事務用品の中古店で東京建電製のパイプ椅子を念入りに見たり、中華料理屋で女性(元妻、吉田羊)と会っていた。
女性は浜本に後を付けさせ、バックマージンで高級マンションに住んでいるのでは、と、八角を追った原島。
自宅は意外にもオンボロアパートだった。

原島がカスタマー室で聞いたところ、佐野が調べていたのはやはり、同じシリーズのパイプ椅子のクレームだった。
そしてその原因の多くがネジが折れたことによるものだった。

浜本は会議室の椅子が最近全部入れ替わったことを思い出す。
原島が業績会議でひっくり返って壊した椅子も八角が中古品店で見ていた椅子も同じシリーズの自社製の椅子だった。

壊れた椅子だけでなく全入れ替えに疑問を抱いた原島は浜本と一緒にの前橋工場を訪れる。
工場長(赤井英和)は、原島を佐野の後任と勘違いし、在庫品置き場に案内する。
トーメイテック社製のネジを探していると八角がやってきた。
寸でのところで八角に会わずに逃げた原島と浜本は、商品管理室の奈倉(小泉孝太郎)に引っ張り強度試験を依頼する。
パイプ椅子のネジは設計強度14N(ニュートン)に対し、7Nで破断した。

そこに八角が現れ、設計強度130Nの航空機の椅子用のネジを試験機に入れると、60Nで破断した。
強度不足。
坂戸が強度不足のネジを発注しコストダウンを図ったことが椅子破損の原因だった。

社長に進言すると息巻く原島。
既に報告済みだとする八角。
影響範囲とリコール費用を算定してからリコールを発表する、とする宮野社長に従い、北川と八角は調査を進めることにした。
特に親会社から出向の村西副社長には極秘で調査を進めることになったとのことだった。
そのため、不正な発注を指示した坂戸は隔離されて人事部から詰問され、ネジの強度不足の顛末に近づいた新田と佐野は左遷されたのだ。

そしてその調査も間もなく終わるので、しばらく待ってほしいと原島、浜本に頼むのだった。

トーメイテックに調査に行った原島と浜本。
江木社長(立川談春)は強度を落とすのは坂戸からの提案だという。
浜本は東京建電のドーナッツ売り場の仕入れ店の特製ドーナッツが置かれているのに気づく。
それは、地域限定で売られているもので誰かが持ち込まない限りトーメイテックにあるはずがない物だった。

トーメイテックに強度を落としコストカットするよう指示したのは北川ではないのか。

程なく八角は調査を終え、宮野社長に報告に行く。
強度不足とリコールの発表を迫る八角に対し、宮野社長は隠ぺいを指示する。

怒る八角は北川の部屋に強度不足のネジの入った箱を持ち込んで説得するが、北側は応じず八角は問題のネジをぶちまけて部屋を出る。

翌日、村西副社長が宮野社長室に怒鳴り込んでくる。
強度不足の報告書が村西に送られてきたという。

本社に報告すると言う村西に驚愕する宮野。

そして、ゼノックス本社。
社長の徳山(北大路欣也)を前に、強度不足の説明をし謝罪する宮野。
本社の梨田常務は宮野、村西を厳しく叱責し、会社を解体すると言い出す。

責任を押し付けられそうになった北川は事情を知る者を呼ぶとして、八角と坂戸を会議室に呼び入れる。
梨田が怒鳴る中、徳山社長は八角に話を続けさせる。

発端についてトーメイテックの江木社長は東京建電からの指示だと言い、坂戸はトーメイテックからの提案だと言う。
八角は、トーメイテックに原島、浜本と一緒に行き、江木社長を詰問。
江木はついに野球部の大先輩の指示だったと白状する。その大先輩とは宮野社長だった。

宮野がトーメイテックに強度とコストを下げるよう指示、北川はコストダウンと坂戸に指示、
トーメイテックを含む会社リストを作り、坂戸がトーメイテックを選ぶように仕向けたのだった。
全てはコストカット、利益第一の企業風土が生んだ、偽装体質、隠ぺい体質だったのだ。

しかし、八角は続ける。
売上至上主義、無理な目標。顧客の都合も顧みず、部下の人格を無視したような叱咤激励。
20年前に東京建電に出向していた梨田部長の植え付けた企業風土が今の隠蔽気質になっていると指摘した。

徳山は影響範囲と対応金額の調査、回収/改修方法などについて至急調べるよう指示し、会議室を出ようとする。
八角は、いつ問題を発表するのかと問うと、徳山は発表するとは言っていない、暗に議事録を作らないようと指示し去っていく。

八角が東京建電に戻ると自分のパソコンが消えていた。
北川のパソコンもしかり、ゼノックスの社員が大挙して訪れ、ネジに関する資料を根こそぎ持ち去ったということだった。
全てが闇に葬られる。
愕然とする八角に北川がネジを一本渡す。
八角がぶちまけたネジの一つがソファーの下に落ちていたというのだ。
北川は大切な証拠だ、と八角に手渡した。

八角はマスコミにリーク。
一斉に報道がされ、東京建電に査察が入る。また親会社のゼノックスにも査察が入る。
宮野社長はじめ幹部による謝罪会見が行われ、リコールにより航空機、列車等の大々的な改修作業が行われることになり、
運休、欠航が多発することとなった。

東京建電は営業1課を残して分離し別会社となり、営業1課はリコール対応と残務処理の組織となった。

関係者は処分され、北川は実家に戻り農業をすることになった。
原島と八角は営業1課に残った。
浜本は退社したがドーナッツ屋に転職、いまでも東京建電にドーナッツを持ち込んでいる。

ゼノックスは責任を問われたものの徳山は引責せず、社長でいつづけた。

八角は調査委員会に一部始終を供述した。
今後の対応にと委員長(役所広司)から問われると、隠ぺいは決してなくならないと語るのだった。

**

八角が強度偽装に気づいたのはいいとして、佐野、新田はとんだどはっちりだが、図らずも重要な部分に近づきかけた。
とすれば、八角がいかに切れ者だとしても、他に直接間接に製品強度が不足していると感じる人物がいてもおかしくはない。
特に商品管理、品質保証、検査などの部門では気づいた者がいるはず。
奈倉などは真っ先に気づいて当然ではないのか。
たとえ全数でなくても抜き取りででも強度試験、耐久試験は部品、製品を問わずやるはずだ。
特に仕入れ部品が強度不足だったら致命的だ。

ただ現実には「安全率」があり、必要な強度の2倍程度の強度で物が作られている場合が多い。
正しい使い方、例えば椅子ならちゃんと置いた状態で体重100kgまでの人物が座ることを許容する場合、
体を反り椅子を斜めにしたり、椅子の上に飛び乗ったり、足を上げたりすることも踏まえ、200kgとか250kgなどの
過負荷に耐えうるように作るのがふつうである。
したがって設計強度の半分だとしても普通に使う限りそう簡単に壊れるはずはない。

しかし、航空機の場合は安全率が低く、過負荷を許容する範囲が狭い。
こちらは設計強度の半分では非常にまずい。

パソコンを取り上げられたから証拠のデータがすべてなくなるのはどうなのか。
もちろん紙の書類や証拠のボルトなど東京建電にあるすべての資料が取り上げられているとはいえ、
なぜ調査報告書や検査データの「控え」をとっておかないのか。
仮にすべてのデータの社外持ち出し禁止措置が取られていたとしても何らかの形でデジタルコピーを取っておくことはできたはずだ。

また、八角が怪しいと思うのはいいとして、なぜ一介の庶務担が課長とともに係長の行動を監視し、工場や関連会社まで同行するのか。
浜本の仲間の女子社員の口の軽さから見て、原島の行動も筒抜けになっている危険性が大きい。
浜本が女性だから信用できないというわけではありません。
原島は男女関係なくもっと経験があり口が堅く信頼できる盟友を選ぶべきです。
劇中では商品管理室の奈倉が適任と思われたが、ちょい役だった。

「一人の善人が巨悪に立ち向かう」物語ではない。
「悪事はいつか暴かれる」ことにはなるが、原作者には企業の隠蔽体質はなくならない、大企業ほど悪事に目を背けがち、
との思い込み、あるいは思い入れがあるのかもしれない。
組織の上に行くほど悪事に目をつぶったり耳をふさいだりしなくてはやってられないと思っているのかも。

人気テレビドラマを量産している池井戸潤にとって映画化は「空飛ぶタイヤ」に続く2作目となる。

「七つ」とは何か、の議論があるようだ。
ひとつにはフォーブスジャパンに「誰が会社を殺すのか? 駄目な経営者と危険な社風 7つの兆候」という記事があり、
それを比ゆ的に表しているという説がある。

しかし、この記事は、「誰が〇〇を殺すのか」シリーズのひとつで「2018/1/19」付けとなっており、
原作小説の初刊行時期(2012/11/5)はもとより、連載開始(2011/5)ともまるで整合しない。

原作連載時は7話の短編集となっており、単行本化時に1話加えて8話構成となったことから、
7つのエピソードを示しているという説もある。

また、7つとは7人の主要キャスト、すなわち、「八角」、「北川」、「原島」、「坂戸」、「三沢」(ねじ六)、
「江木」(トーメイテック)、それに「徳山」のことだとする説もある。
しかし、それではエピソードの一つでもある「新田」、事件の重要人物である「宮野」「梨田」はなぜ入らないのか。
作者である池井戸潤が7つとは7人であり、それらはこれこれ、と言っているのならともかく、どうも納得がいかない。

「七つ」が、具体的に7つの何かを示しているとしても、全体の流れの中ではそれほど決定的な意味を持っているとは思えなかった。

 

 

     

 

  マスカレード・ホテル   

木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、渡部篤郎、篠井英介、石橋凌、菜々緒、宇梶剛士、濱田岳、生瀬勝久、勝地涼、前田敦子、
笹野高史、松たか子、田口浩正、橋本マナミ、高嶋政宏、鶴見辰吾。

都内で起きた3件の殺人事件。
それぞれの現場に残された暗号(謎の数字)は、やがて起こる次の殺人事件の現場を示していた。
警視庁は事件を同一犯による連続殺人事件と考え、3番目の現場に残されていた暗号から、
4番目の事件は都内の高級ホテル「コルテシア東京」と考え、事件を防ぐためホテルに潜入することになった。

秘密裏にホテルの地下の一室に捜査本部が置かれ、捜査員がホテルの従業員に紛れ込んで犯人捜査に当たる。

捜査陣の中で唯一の帰国子女で英語がペラペラの新田浩介(木村拓哉)はフロントスタッフに紛れ込むことになった。
とはいえ武骨な刑事が紛れ込んでいることがばれては元も子もない。
指導と補佐役には優秀なフロントクラークの山岸尚美(長澤まさみ)が指名された。

新田浩介は「いかにも」といった感じのいでたちで、このままではフロントに立たせられないと考える山岸から
髪型、着こなし、姿勢、言葉遣いといった基本を指導されるが、内心反発で一杯だ。

ホテルには数々の問題客が訪れる。

例えば綾部(濱田岳)。禁煙の部屋を頼んだのにたばこの臭いがすると言って部屋替えを要求。
おそらくは自作自演だろうが、山岸はより高い部屋を用意することでクレームを回避した。

常連客の大野(笹野高史)は、急いでいるのにチェックアウトに時間が掛かるとして、
近くにいた新田に処理するよう言いつけるが、新田は列に並ぶよう反論し大野の怒りを買う。
山岸が代わって手続きし、請求書を送ると言ってその場を収める。

サングラスの怪しい男性(田口浩正)、チェックインした和服女性、森川(橋本マナミ)をじっと見つめている。
挙動不審とみる新田に山岸は、政治評論家の密会だと知っており、よくあることだ、と言ってのける。

続いては、ホテルも目を付けていた古橋(高嶋政宏)。
前回宿泊時にホテル備え付けのバスローブが紛失した(古橋が盗んだ)ことから要注意客となっていた。
チェックアウト時に山岸は時間を稼いで部屋をチェックさせたところ、バスローブが1枚紛失していた。
同伴女性の荷物を確認させてほしいと言う山岸。
古橋が対応しようとすると新田がしゃしゃり出てそのまま古橋を帰した。
新田は、新品のバスローブが残されていたことから、因縁をつける目的で盗難を偽装したと推測したのだ。
部屋を再度チェックしたところ、案の定ベッドのマットレスの下に隠されたバスローブが出てきた。

そんな中、新田の知った人物がチェックインする。
所轄の刑事能勢(小日向文世)は、連続殺人の最初の事件がまだ連続殺人かどうかわからない段階で、
所轄で新田とペアを組んでいた刑事だった。
能勢は新田が本庁に戻ったことを悔しがっているようでもあった。

客の一人、栗原(生瀬勝久)はチェックインから新田を指名して難癖をつける。
まずは見晴らしの良い部屋を予約したのに見晴らしが悪いと難癖をつけ、片桐が用意した代わりの部屋すべてを
新田を伴って確認し、挙句元の部屋に戻った。
暫くすると、パソコンのデータが消えたと言いがかりをつけ、新田に打ち直しを指示して外出。
外から確認の電話を入れると言う念の入れよう。

調べたところ、栗原は英語の教員志望で教育実習時、新田のいるクラスを担当。
英語ペラペラの新田に恥をかかされた過去があったのだ。
そのため、挫折し、教員に成れなかった逆恨みでつらく当たっているようだった。

ホテルに戻った栗原は大勢の前で作業に抜けがあるとして新田を罵倒し、土下座しろと迫る。
こらえる新田は土下座では作業が完成しないからやり直しをさせてくれ、と頼み、
栗原はついに嫌がらせをしていたと白状し、黄身には勝てないとホテルを後にする。

どうしてホテル内から電話をかけさせたのか、との新田の疑問に対し、外からならオペレーターが
どの部屋につないだかわからないからだ、と答える片桐。

新田は最初の事件の犯人と目された手島の電話のアリバイが偽装工作によるものではないかと思いつく。
新田は能勢に偽装工作の可能性を話し、能勢はその線から捜査を進めることにした。

能勢は新田と何度も話をするうち、3つの事件の手口が全く違うことが疑問だとつぶやく。
それは新田も不可解だと思っていた。

また、視覚障害の老婆がホテルを訪れる。
対応する新田に対し、老婆、片桐(松たか子)は山岸を指名した。
丁寧に対応する山岸。触覚が大事なはずなのに手袋をしていたから、怪しいとにらむ新田。
視覚障害の方にはよくあることと取り合わない山岸。
部屋に霊を感じると部屋替えを要求、山岸と同行した新田は目が見えていると確信した。
その後も何度も山岸を指名する片桐だったが、チェックアウト時に、ついに事情を話す。
目が見えることはばれていたんでしょ、と言い、手袋はやけどをしているからとのことだった。
自分は目が見えるが主人が視覚障害で近々に友人と東京で会を催すので下見に来たというのだ。
ホテルの対応に満足した片桐は静かに帰っていった。

ホテルの仕事は宿泊だけではない。
ホテルで挙式を予定している高山(前田敦子)も衣装合わせから式、披露宴の打ち合わせなどで、何度もホテルを訪れていた。

徐々にホテルマンの意識が身についていく新田。
少しずつ刑事の立場も理解できるようになっていく山岸。

ある日、ストーカー被害に遭っているという安野(菜々緒)がチェックインし、ストーカーの写真を見せて
絶対に近づけないでくれ、と頼む。
山岸は誰が来ても安野の部屋は教えないから大丈夫だと言い、写真は受け取らない。

山岸は新田に過去にもストーカーの女性が訪ねてきたことがあり、泊まっていないと断ったと語った。
それでも泊まると食い下がる女性に部屋は用意できないと追い返したのだそうだ。

そのうち、安野の言っていた男(宇梶剛士)が来訪、予約していたため追い返すことはできなかった。
片桐は念のため安野に男の部屋を教えくれぐれも気を付けるよう依頼した。

その後、男の部屋には女が訪ねてきたが、安野は部屋を出て男の部屋に向かった。
ストーカーと被害者が逆だったと気づいた山岸と新田が男の部屋に向かうと、安野は実は男は旦那で浮気現場を抑え、
離婚届を突き付けるところだという。

捜査会議で、稲垣係長(渡辺篤郎)は、事件は連続殺人に見せかけた3つの事件だったと説明した。
(能勢の捜査で判ったらしいが)手島のアリバイ工作は新田のにらんだ通りで、アリバイが崩れた。
新田のパソコンから、犯行は別々の事件を連続殺人に見せかけたもので、4番目の犯人X4がホテルを狙っていた。

高山が式の打ち合わせに来訪。
山岸はお友達からだと言って、ワインを差し出すが、新田は怪しいと遮る。
デパートの包装で宅配便なのはおかしい。一旦開けられた可能性があると言うのだ。

調べたところ、件の友人はワインを送っておらず、誰かの偽装だった。
高山はストーカー被害に遭っていると語り、その相手からの嫌がらせなのではないかと言った。
しかも、ワインのコルクには注射針の跡があった。

4番目の事件のターゲットは高山、犯人はストーカーの男、と判断した捜査本部は高山の結婚式を警備することにした。
いろいろあって山岸に事情を話した新田。
山岸は当初新田の申し出を断るが、1日だけ、高山の結婚式まで事情を支配人に放さないと約束した。

そして結婚式当日。
山岸は紙袋を持った男が女装して宴会場に向かったのに気づく。
果たして女装した男(勝地涼)は、高山に近づいたところを刑事たちに囲まれて逃げ、階下で待っていた新田に確保される。

男は暗号の書かれたカードを持っていたが、渡すよう言われただけだ、と叫ぶ。
X4と目される男が確保され、過去の3つの事件の別々の犯人もそれぞれ確保され、一件落着かと思われた。
新田は最初の事件の手島のアリバイ工作を手助けした女性を調べるよう能勢に依頼。
能勢は名古屋へ飛ぶ。

視覚障害を装っていた片桐がまた来訪し、山岸が対応する。
旦那の上京はキャンセルになったが自分はまた泊まりに来たのだと言う。

新田は4つの事件が別々の4つの事件ではなく、複数の殺人を隠すための偽装ではないかと考える。
そして手島の所属していた劇団に片桐によく似た老婆役の女性がいることに気づく。

能勢が調べたところ、それは長倉真貴と言い、最初の事件の被害者と付き合っていたというのだ。

片桐は山岸を部屋に呼び、祈りをすると言って山岸をだまして拘束した。
片桐は山岸が追い返したストーカーの女性で、泊まることも拒否されたため、雨の中外で夜を明かし、
結果、体を壊して流産、相手の男性ともども山岸を許せないと考えたらしい。

新田は片桐に用意されていた5つの部屋を次々と調べていく。
しかし、どの部屋にも人はいない。
片桐は山岸を浴室に引きずり込んで隠れていた。

新田が部屋を出た後、山岸に筋弛緩剤を注射しようとしていたところへ、新田が飛び込んできて片桐、いや長倉を確保した。
新田は部屋に置かれたホテルの文鎮の向きがずれていたことで部屋が使われた形跡を知ったのだった。

こうして、長倉の殺人と殺人未遂が明らかになった。

事件後、刑事に戻った新田、私服の山岸に能勢を加えて3人での食事会を催したが、能勢は急用ができたと帰ってしまう。
こうして新田と山岸の新たな関係が始まる。

**

原作、東野東吾。
様々な客のエピが次々と描かれるため、途中からは連続殺人に名を借りたいわゆる「グランドホテル形式」なのかとちょっと心配した。

しかし、容疑者が次々と現れては消えていく状況をグランドホテル形式風に描いているのだと分かった。
従って大勢の容疑者の中から犯人を絞り込んでいくタイプのサスペンス、刑事ドラマではない。

小説は月刊誌に2年近く連載された後、450ページを超える長編として単行本化されている。

また、シリーズとして前日譚にあたる「マスカレード・イブ」、最新刊は再びコルテシア東京での謎解き「マスカレード・ナイト」が
発刊されている。

前田敦子のストーカーが勝地涼なのはちょっと笑った。

明石家さんまが出ている。
エンドロールに(友情出演)とクレジットされていたが、セリフなしアップなしでストーリーにも絡まず、カメオ出演にもならない
その他大勢、エキストラ並みの出演だったらしい。もちろん気づかず。

松たか子の登場では「どんな役やってんだ」とは思ったが、笹野高史、濱田岳、宇梶剛士、菜々緒、等々普段と違う役回りの
絶妙なキャスティングが伏線となっていて観客をだますには十分だった。

本筋でもわかりやすい伏線と謎解きで、映像で見ても面白いが、情景を想像しながらの所説も多分面白いと思われる。

ホテルのロビーはセットを作ったらしい。

一点だけ気になったのは、ラストの食事のシーン。
既に木村拓哉と長澤まさみのグラスにはワインが注がれており、小日向文世のグラスにワインが注がれる。
グラスワインの場合はテイスティングはしないらしいし、すでに二人には注がれているので、
仮にテイスティングが必要だったとしても、済んでいると思われる。

また注ぐときにエチケット(ラベル)を上にしていたが、ワインに限らず、ビールや薬品でも必要なこと。
しかし、ワインボトルの真ん中あたりを持って注ぐのはいただけない。
超一流高級ホテルなんだからワインも高いと思われるが、大きめのパント(底のへこみ)が有れば、
親指を入れて持つのが順当ではないのか。パントに指を入れることが必須でないとしても、
ボトルの下部、もしくは底を持たないといけない。
映画では持つ位置が上すぎるし、注ぎ終わりに瓶を回せない。

それに注ぎ終わった後にトーション(ナプキン)で、瓶の口を覆うように拭う動作もなかったように思う。

 

 

     

 メリー・ポピンズ リターンズ  

エミリー・ブラント、リン・マニュエル・ミランダ、ベン・ウィショー、エミリー・モーティマー、コリン・ファース

前作「メリー・ポピンズ」から20年後。(25年とも、IMDBではdecades=何十年)

明け方に街の灯りを消して回るジャック(リン・マニュエル・ミランダ)。
霧のロンドンは相変わらずだが、世の中は大恐慌の不景気真っただ中だった。

前作で銀行勤めだったMr.バンクスの息子、マイケル(ベン・ウィショー)は、男女の双子、アナベルとジョン、
それにジョージの3人の父親。
前年に家の切り盛りをしていた妻を亡くし、家計のやりくりに追われている。
エレン(ジュリー・ウォルターズ)は、相変わらず家政婦として働いている。
姉のジェーン(エミリー・モーティマー)は未だ独り身で、弟一家の世話を焼いている。
家は古くなり、水道管から水が噴き出すような傷み具合。

そんな一家のもとに2人の弁護士がやってきた。
2人は、マイケルが臨時雇いで勤めるかつて父が勤めていた銀行から受けた融資の返済が滞ったため、一括返済を求めに来た。
5日間の間に残金を返済しないと家を差し押さえると言うのだ。

いろいろ話をしていると父、ジョージ・バンクスが銀行の株を持っていたことに気づいた。
弁護士を帰し、マイケルとジェーンは父の遺品の中から株券を探そうとする。

なかなか見つからないが外に捨てたガラクタの中から凧が風にあおられて飛び出した。
そのころ、買い物に出かけていたアナベル、ジョン、ジョージ。
ジョージが凧を掴まえて空高く上げるが引きが強くて持って行かれそうになる。
通りかかったジャックも手伝い、凧を引き寄せようとすると、大空高くから凧を掴まえたメリー・ポピンズが降りてきた。

そこにアナベルとジョンが追い付くが、泥だらけの二人を見たメリー・ポピンズは3人を家に連れて帰る。

メリー・ポピンズはナニー(乳母、しつけ係、字幕では教育係)になると申し出、マイケルは渋るが、ジェーンに押されてOKする。

メリー・ポピンズは嫌がる3人を風呂に入れるが、魔法で海の中に連れて行く。
すっかりメリー・ポピンズが気に入った3人だったが、ジョンは家が借金の方に取られると知ってしまう。

株券が見つからないマイケルとジェーンは、銀行に出向き頭取のウィルキンス(コリン・ファース)に株の話をする。
ウィルキンスは株主名簿を確認、ジョージ・バンクスの名前はないと言って2人を帰すが、その後、
ジョージ・バンクスのページを破って燃やしてしまう。

ジョンはエレンが食器が高いというのを聞いて母の形見のロイヤルドルトンの陶器製のボウルを売ろうと考えるが、
アナベルやジョージと争いになり、ボウルを落とし欠いてしまう。

見ると描かれていて馬車の車輪が外れてしまっている。
メリー・ポピンズは、3人とたまたま来ていたジャックを連れてボウルの中に入り馬車の車輪を直す。
そしてそのまま陶器の中のロイヤルドルトン・ミュージック・ホールに行き、ミュージカルを楽しむ。
しかし、ジョージのおもちゃのキリン、ギリーがいじわる狼に盗まれ、ジョージも連れ去られる。
アナベルとジョンが追い、ついにはジョージを取り返すが、ボウルから零れ落ちてしまう。

そこは現実世界で3人はベッドで眠る。

翌朝マイケルは銀行に仕事に出かける時に慌ててかばんを忘れてしまう。
メリー・ポピンズは3人の子供たちを連れてボウルの修理に出かけるついでにカバンを銀行に持っていくことにした。

何でも修理屋はメリー・ポピンズのいとこのトプシー(メリル・ストリープ)。
第2水曜は天地がひっくり返るから仕事をしないというトプシーを説得して何とか修理を頼んだ一行は銀行に向かう。
しかし、件のボウルの価値は大したことがないと分かる。

メリー・ポピンズがマイケル・バンクスを呼び出している間に弁護士が頭取の部屋に行くのを見てジョージが後を追う。
ウィルキンス頭取は弁護士に借金の形を取り上げた件数が多いことを褒める。
ジョージは頭取の姿をボウルの中の狼と見て騒ぎ出し、カバンを受け取りに来たマイケルにこっぴどく怒られる。

結局、期限までに株券を見つけられず家を空け渡そうとするマイケル達。
ジョージが家に凧を忘れて取りに行くとなんと凧の穴を修理した紙は探していた株券だった。

急いで銀行に向かうマイケルとジェーンだが、期限までの残り時間はわずか。
メリー・ポピンズはジャックの仲間を集め、ビッグベンの時計を遅らせようとする。
何とか時計台の上まではたどり着いて、一旦灯りは消したものの時計の針には届かない。
メリー・ポピンズが空を飛んで時計を5分遅らせる。

期限の時報(鐘)を今や遅しと待っていたウィルキンスだったが、時計がずれたおかげてマイケルが着いてしまう。
マイケルは急いで頭取の部屋に行き、凧から切れ切れになった株券を外して組み合わせていくが、最後のピースが見つからない。

非常にも無効を宣言するウィルキンスに、前頭取のドース(ディック・バン・ダイク)が現れてウィルキンスを首にし、
頭取に復帰、株券は有効だが、前作でマイケルが銀行に預けた2ペンスが投資した結果、借金完済できるほどになっていると告げる。

こうして、バンクス一家は家を手放さなくて済んだ。

桜満開の中、公園で開垂れているフェスティバル。
風船にぶら下がって大空を飛ぶみんなの姿を見ていたメリー・ポピンズは一人静かに大空に帰っていくのだった。

前作に対するオマージュ満載。

屋根裏で見つけたのは「2ペンスを鳩に」で出てきたスノウボールと思われる。
姉のジェーンは、女性参政権運動に熱心だった母親に似て労働者の権利運動に力を注いでいる。

凧も前作でマイケルが遊んでいたものと同じ設定。

エレンは前作でも登場。同じ人物の設定だがさすがに同一キャストではなく、ジュリー・ウォルターズ。
彼女は「ハリポタ」でロンの母親のモリー・ウィズリー、「マンマミーア」ではメリル・ストリープの友人のロージー。

前作では煙突掃除屋で先代のドース頭取との二役だったディック・バン・ダイクが、(前作では息子の)ドース頭取役で出ている。

ジュリー・アンドリュースには公園の風船売りのオファーがあったが、ジュリー・アンドリュースが固辞したため、
アンジェラ・ランズベリーになった。
実はアンジェラ・ランズベリーは前作でジュリー・アンドリュースの前のメリー・ポピンズの候補だったそうだ。
二人とも撮影時は91歳(現在はともに93歳でアンジェラが2か月上)でディズニー映画史上最年長男女となっている。

一応ストーリーはあるが、展開がややグダグダでつぎはぎ感は否めない。

思い出補正の可能性もあるが、曲全般は前作の方が良かった。
個人的には歌は「本は表紙じゃわからない」と「無くしたものが行くところ」が良かった。
エミリー・ブラントが下手というわけではないが、歌はジュリー・アンドリュースの方が一枚上。

 

 

            

 

 クリード 炎の宿敵  

シルベスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン、ドルフ・ラングレン、フローリアン・ムンテアヌ、テッサ・トンプソン。

前作から3年後。

アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)は、前作の序盤にスパーリングでのされて車を失った因縁の相手、
ダニー・ウィーラー(アンドレ・ワード)とタイトルマッチを行い、ビアンカ(テッサ・トンプソン)の見守る中、
見事ノックアウトし、タイトルを獲得する。

どぎまぎしながらもビアンカにプロポーズするアドニス。ビアンカもそれを受け入れる。

一方、アポロ・クリードを殴り殺し、ロッキー・バルボアに破れたイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の息子、
ビクター・ドラゴ(フローリアン・ムンテアヌ)は、ウクライナのキエフで、劣悪な環境で父の指導の下
ボクシングの腕を磨き、ローカルな試合に出ては圧倒的な強さを見せていた。

ビクターの試合を見に来ていたプロモーターのバディ・マーセル(ラッセル・ホーンズビー)はほくそ笑む。
そして、ドラゴ親子ともにアメリカでアドニス・クリードへの挑戦をぶち上げるのだった。

イワンはロッキーの店を訪れ、ロッキーとの対戦に破れてすべてを失った。
今度はアポロの息子を自分の息子が倒し、すべてを取り返すと言い放って去る。

アドニスはビクターの挑戦を受けることに決め、ロッキーに相談に行く。
止めろと言うロッキーに反発して言い争いとなり、物別れに終わる。

アドニスはフィラデルフィアを離れ、ビアンカとロサンゼルスの新居に移る。
まずはアドニスの母、メリーアン・クリード(フィリシア・ラシャド)に会うというビアンカ。
アドニスはそこでビクターとの対戦を打ち明けようとするが、メリーアンにビアンカが妊娠していると言い当てられて戸惑う。
難聴が遺伝するかもしれないと心配するビアンカだが、アドニスが励ます。

アドニスはかつてアポロが属していたジムに行き、アポロのトレーナーの息子、トニー・バートン(ウッド・ハリス)に
トレーナーとセコンドを頼む。

ドラゴ親子、アドニスとトニー、いずれも厳しいトレーニングを重ね、試合当日を迎える。
計量で、チビ、ファザコンとののしりあった二人。
会場はアドニス・クリード応援一色。

ロッキーは自分の店で一人試合を見守る。
試合は序盤から体格で勝るビクターが優勢。
ビクターはアドニスの腕を抱え込んだままの強烈なボディブローでアドニスの肋骨が折れる。

激痛に耐えながらも反撃するアドニスだが、さらにボディブローで片膝をついたところ、ビクターがレフェリーの制止を無視して
強烈なパンチをくらわしたため。アドニスはノックダウンする。

試合はビクターの反則負けとなってアドニスのチャンピオンは動かないものの、裂傷、打撲、骨折に腎臓損傷となって入院する。
心配して駆けつけたロッキーにアドニスは悪態をついて追い返してしまう。

やがて傷は癒えたが、ボクシングをやる気にはなれない。
久しぶりにジムを訪れても外から見るだけ。
トニーは近々にタイトル戦をしないとタイトルが剥奪されると告げる。

フィラデルフィアにいるロッキーにメリーアンから息子(=アドニス)に会いに来てくれとの手紙が届く。
自宅に戻ったアドニスはロッキーが来ているのに驚くが、心情を吐露。
ロッキーは今までのスタイルでは巨漢に通用しない、俺のやり方に変えろとアドバイス、二人は仲直りする。

そこに母親から病院に来るよう電話が入り、アドニスはビアンカの出産に立ち会う。
果たして生まれた娘にも聴覚障害があったが、ロッキーは子を愛すればよいと諭す。

そのころ、ビクターとイワン親子はロシアでは一躍有名になっており、政府高官に食事に招待されるが、
そこに父と自分を捨てた母、ルドミラ(ブリジット・ニールセン)が現れるとあからさまに嫌がる。

ロサンゼルスでロッキー、トニーと相談するアドニス。
判定では不利というトニーに対し、ロッキーは判定にしなければいいと言い、ここにアドニスのトレーナーとしての復帰が決まる。
ロッキーはアドニスを砂漠の真ん中の虎の穴ボクシングジム(仮称)に連れて行き、一から過酷なトレーニングを始める。
一方のビクターは恵まれたジムでの厳しい練習に明け暮れる。

いよいよ対戦の日。
決戦の場所はロシア、モスクワ。

完全アウェイの中、ビアンカの美声に乗って入場するアドニス。
ビクターとの対戦が始まった。

ビクター対策を十分練ってきたアドニス。
接近戦を挑み、互角の戦いを続ける。

一方のビクターはアドニスの変貌に驚くとともにいつも圧倒的に勝っているため、長丁場のラウンドに疲労を重ねていく。
とはいえ、ビクターの強烈なパンチに幾度となくアドニスはマットに倒れる。

しかし、徐々にアドニスの半夏派が功を奏し始める。
イワンはビクターに再び肋骨を狙えと指示、ビクターの強烈なフックでアドニスの肋骨が折れる。

アドニスは激痛に耐え、試合を続行する。
何度ダウンしても立ち上がり、ついには疲れの見えたビクターをダウンさせる。
一度は立ち上がったビクターだが、もはや力は残っていない。2度目のダウン。
ギリギリで立ち上がったビクターにイワンはタオルを投げ入れ、アドニスのTKOとなった。

観客も熱戦に満足し大興奮。リング上は大騒ぎとなったがロッキーはその輪には入らなかった。
イワンはビクターに叱咤ではなくよくやったと声をかけるのだった。

アドニスはビアンカと1歳になった娘を連れて、父アポロ・クリードの墓を訪れた。

一方、疎遠だった息子ロバートのもとを訪れたロッキー。
大きくなった孫を前に息子と仲直りをするのだった。

**

もう今度こそ完結編と言っていいのではないでしょうか。
ロッキーが最後にアドニス・クリードに「もうお前の時代だ」というセリフがそれを象徴しています。

今までの友情、夫婦愛から、今作は家族愛がテーマとなっています。

「ロッキー」では名もない三流ボクサーだったロッキー・バルボアが実力はあるのに人気のないアポロ・クリードと対戦、
僅差で敗れたもののその闘志にみんなが感動する、というものでした。リングから「エイドリア〜ン」と叫ぶ姿が印象的でした。

「ロッキー2」では、ロッキーの評判に不満なアポロがロッキーと再戦。
激しい戦いの末、ダブルノックダウンからロッキーが立ち上がりチャンピオンとなるのでした。

「ロッキー3」では、チャンピオンとなって10度の防衛を果たし一度は引退しようとしたロッキーが、
新進気鋭のクラバーに煽られて対戦し、敗れる。トレーナーのミッキーも死に、アポロがトレーナーを買って出て
ロッキーを鍛え直し、クラバーとのリターンマッチに勝利しチャンピオンに返り咲く。
その後、ジムで観客もいない中、アポロとクリードが対戦する、という終わり方でした。

「ロッキー4」は、イワン・ドラゴが登場。ロッキーへの挑戦状をたたきつけるが、アポロがやりたいと言い出し、
ドラゴと対戦して殴り殺されてしまう。ロッキーは不利な条件でドラゴとの対戦に応じ、モスクワで対戦。
壮絶な戦いの末、ついには最終ラウンドでドラゴを倒し勝利する。

「ロッキー5」では、引退したロッキーが育てたトミーが引き抜かれ、チャンピオンとなったものの不評でロッキーとの対戦を望む。
ロッキーは拒否するが酒場で義兄がトミーに殴られたことで激怒してストリートファイトとなり、トミーを倒す。

「ロッキー・ザ・ファイナル」では、引退したロッキーと現役チャンピオンのバーチャル・マッチ(シミュレーション)でロッキーが勝ち、
現役チャンピオンがロッキーに挑戦しようとする。ロッキーはライセンスを復活させてチャンピオンと対決する。
試合は激闘の末チャンピオンの判定勝ちとなるが、ロッキーは満足げにリングを降りる。

そして、前作「クリード」
不良だったアドニス・ジョンソンは、メリーアンからアポロの息子だと告げられる。
ボクサーを目指し、ロッキーに師事して鍛えるも、世間にアポロの息子だとばれてしまう。
チャンピオンがアドニスに対戦を申し込み、明らかに格下なのにアドニスは挑戦を受ける。
ダウンの奪い合いで壮絶な戦いの末、チャンピオンの判定勝ちとなるが、チャンピオンはアドニスを称える。
最後はあのフィラデルフィアの階段のシーンで幕を閉じる。

と、過去作を一通りおさらいしてみると、「ロッキー4」の続編というか、再来というか、輪廻というか、因果というか
そういう物語です。

イワンの息子、ビクター役のフローリアン・ムンテアヌは本物の現役ボクサー。
過去作でも現役ボクサーの出演はあったが、ここまで物語のメインテーマとして扱われたのは初めてかも。

アポロ・クリードはとっくに死んでしまっているので、ボクシングにかける親子愛はドラゴ親子が代弁。
母との確執も描かれて物語をウェットにしている。
アポロにはタオルを投げなかったロッキーだが、それまで息子を叱咤していたイワンはついにタオルを投げ、
息子によくやったと告げるところは、相手を倒されるべき単なる敵役としていないところが秀逸。

主要キャストは続演。メリーアン、変わったよね、と思ったのは勘違いだった。

 

 

    

 九月の恋と出会うまで   

高橋一生、川口春奈、川栄李奈、中村優子、浜野謙太、ミッキー・カーチス、古館佑太郎

小説の書き出しがセリフになって物語が始まる。

(神奈川県内の)とある公園。
女の子が噴水に入れてしまったボールを裸足になって取ってあげた女性、北村詩織(川口春奈)は
しゃれたアパートの2階B号室に越してきた。

北村が部屋を整理していると中庭からチェロの音が聞こえる。
弾いていたのは楽団員の倉(浜野謙太)、聞いているのは劇団員の祖父江(中村優子)とオーナーの権藤(ミッキー・カーチス)。

このアパートはオーナーの意向で何らかの芸術に関係する者でないと入居できない。
北村は学生時代からの趣味のカメラが芸術性ありとして認められていた。

一人の地味なサラリーマンが帰ってきた。
男は平野進(高橋一生)、向かいの棟の住民だが一応は隣になる。
平野は挨拶もそこそこにそそくさと部屋に入っていった。

それは、9月14日のことだった
午後9時ちょうど。北村がオーディオをつけて部屋を片していると、なんとなく部屋の空気が変わった。
次の瞬間、どこからか男の声が聞こえる。

北村が耳を凝らすと、どうやら壁際のエアコン用のダクトから聞こえるようだ。
「北村さん、北村詩織さん」
「どなたですか」
「ひらのです。2Aの。」
「シラノさん?」
「いえ。ひらのです、平野。」
「平野さん。」

「はい、そちらは何年何月何日ですか。」
「2017年の9月14日です。」
「よかった。間に合った。」

平野は1年後の未来、2018年の9月14日から話しかけている、と言う。
平野は理由は詳しく言わず、現在の自分にばれないように尾行してほしいと頼んできた。
「尾行してくれたら、町で一番おいしいレストランでご馳走します。」
どこかで聞いた記憶のあるセリフだったが、にわかに信じがたい北村に対し、
平野は明日、ひょうが降ると予想して見せた。
果たして、翌日のTVでは、激しいひょうのニュースが流れていた。

翌日の夜、やはり9時過ぎ。
平野は、事故や事件や芸能人のニュースなど未来を次々と予言、それは全て確かに的中した。

こうなっては北村も信じざるを得ない。
理由は後で話すからと言う平野の言葉を信じ、翌日から平野を尾行することにした。

仕事で外回り、本屋に行く、コンビニやスーパーでの買い物、郵便物の投函、特に怪しい様子はない。
尾行が忙しいため、仕事が終わるととっとと帰る北村に後輩の香穂(川栄李奈)は男でもできたかと疑う。

マンションの中庭で挨拶しそびれたからと言って祖父江に平野はどんな人か聞くと、部屋で包丁を振り回していた怪しい人、との答え。
ある日、仕事帰りの平野をつけているといつもの道を外れ、工事現場でコンクリート片をもって壁に殴り掛かる様子が見えた。
ますます怪しい。

北村は思い切って理由を聞かせてくれないと尾行は止める、と未来の平野に言ってみた。
平野は明日、9月27日になったら理由を全部話すから、もう1日だけ尾行してくれと頼んできた。
北村はしぶしぶ承知し、風邪気味なのに自分の休日である翌日も平野の後をつけた。
そして、午後3時、町中の信号で平野と離れた北村を一瞬変な空気が襲う。
周りの人は何事もなかったかのように歩いている。めまい?

尾行は5時までで良いと言われていた北村がマンションに帰ると鍵が開いたままになっており、部屋中が荒らされていた。
空き巣だった。
幸い現金が何万円か盗まれただけで済んだが、警察に届け刑事が捜査に来た。

夜9時。満を持して未来の平野に理由を問いただそうとする北村だったが、エアコンのダクトからは何も聞こえない。
不審に思った北村が2Aを見ると、平野の部屋の外にはエアコンがついている。
それで未来とのつながりが切れたと思った北村はつい、「どうしてエアコンつけたんですか」と怒鳴ってしまった。
「え、何ですか? 」と返す平野。北村は気づいた、声が違う。

突然怒鳴られた平野は、エアコンの音がうるさいとの苦情だと勘違いし、北村の部屋を訪れた。
「エアコンはそれほどうるさくないと思いますが」と弁明する平野。
北村は熱のせいでふらふらと倒れてしまった。

平野は北村を介護して寝かせ、買い物に行き、冷えピタで看護、おじや、果物などを用意した。
気が付いた北村がびっくりすると、平野は不用心すぎる、エアコンの苦情はいずれ聞きます、と言って帰っていった。

翌日、平野が食事の用意をしていると少し回復した北村が訪ねてきた。
作りすぎたので、と誘う平野と北村は一緒に食卓を囲んだ。
平野は趣味で小説を書いているということだった。

北村は思い切って未来の平野の声の話をした。現在の平野の尾行をしていたことも。

意外にも平野は信じ、タイムリープという現象ではないか、と言った。
別の日、平野は北村の部屋を訪れ、エアコンのダクトを見せてもらった。
通常、タイムリープが起こる場合、同じ場所で未来と過去がつながり、別の場所とつながることは考えられない。
それは未来の平野、仮に「シラノ」としておくが、シラノは未来の2Bから話しかけたのではないか、と言う。
しかし、北村は引っ越したばかりで1年でまた引っ越すなんて考えられない、と言う。

そこに刑事が訪ねてきて、空き巣犯が捕まったとのことで、実はただの空き巣ではなく、連続強盗犯で殺人も犯した凶悪犯だと告げる。

平野は帰り際に北村に一つの仮説を示した。
シラノは北村が家にいて強盗に殺されることを知っており、何らかの理由をつけて北村を家から遠ざけていたのではないかと言う。
シラノは平野と北村の両方をよく知る人物で、今はいないため、平野に成りすましていたのではないか。

そして、平野は有名な「親殺しのパラドックス」を持ち出し、歴史の矛盾が生じたと言う。
シラノによって命が助かった北村はそのまま生き続け、未来のシラノには北村を助ける理由がなくなり、
そのため、危険を教えられなかった過去の北村は強盗に殺されてしまい、未来のシラノは北村を助けようとする。
これを無限に繰り返すというタイムループに陥ってしまう世界。

北村の殺された世界と殺されなかった世界が別々に存在し続けるというパラレルワールド。
そして、矛盾を解消するため、北村詩織の存在をこの世から抹消してしまう世界。

そのいずれの未来が来るかは1年後にしかわからない。
唯一助かる方法は、全てを知っているシラノが1年後、2B号室から1年前の北村を助けること。
それも一字一句そっくり同じに、9月14日から9月27日まで。

そのためには、シラノを探し出し1年後のことを頼まなければならない。
何が何でも北村を助けたいと強く願う人物が必要だ。
北村には一人だけ心当たりがあった。それは学生時代の彼氏、森秋真一(古館佑太郎)。
卒業後はアメリカに行ってしまい、連絡が取れないという。

平野と北村は協力して森秋を探すことにした。
ネットでも見つからず、大学へ行っても見たが手掛かりは得られなかった。
平野が親身になって心配してくれることに北村はどんどん惹かれていった。

そんな中、北村に茅ヶ崎支店への昇進転勤の話が舞い込む。
決断を迷う北村。その時、オーナーの権藤の孫がアメリカから帰ってきて同居するという。
その人物はなんと森秋真一だった。娘の息子と言うことで名字が違っていたのだ。

これで舞台は整った。
2B号室から北村がいなくなり、北村を熱愛する森秋の登場。
後は森秋にシラノを演じてもらえばいい。

平野に惹かれていた北村は森秋ではなく、平野にシラノになってほしいと頼む。
しかし、平野はそこまで北村を思い詰めていないと断ってしまう。

北村は森秋には事情を説明せず、茅ヶ崎支店に転勤してしまう。
そして1年が経ち、9月27日。
運命の日の午後3時を一人静かに迎えたい北村は午後休を取り、茅ヶ崎海岸に立っていた。
もしかしたら、自分が消えてしまうかもしれないのに。

そして午後3時。
北村のケータイが鳴った。
電話の相手は平野だった。
平野はシラノは自分だったと言った。

あの後、平野は森秋に会い協力を頼もうとしたが、森秋は北村に振られた上に翌月には転勤で海外に赴任すると言った。
平野はやむなく自分が2Bに移ってシラノになろうと考えた。
オーナーの権藤は平野に「殻を破ること」を条件とし、平野は必至で小説を完成させ、なんと見事に新人賞を獲得。
新人賞表彰式は9月14日。
授賞式もそこそこに会場を抜け出して家に飛んで帰った平野だったが、9時になっても何も起こらない。
エアコンのダクトを覗くと、北村と平野の2ショットの自撮り写真が残されていた。
写真を抱きしめて涙する平野。
その時、ダクトの向こうからオーディオの音が聞こえた。
必至に呼びかける平野に北村が応じたのだった。

平野は北村のすぐ後ろで電話をかけていた。
近づいた平野は北村に「大好きです」と言い、熱い抱擁と口づけを交わした。

実は平野は北村が公園でボールを噴水から拾ったのを見ていてひとめぼれだったのだった。

**

原作は「書店員が選んだもう一度読みたい文庫」恋愛部門第1位の同名小説。
当然と言えば当然だが、設定などは変えてある。

最初に平野が焦っていた理由、そっけなかった理由などもうまく回収されていた。

しかし、「声が違う」と言う点は説明がされていない。
小説では実は語りかけたのは1年後ではなく6か月後であり、花粉症で声が違っていたことになっている。
平野がシラノではない理由のひとつに、マンションは家賃を2年分前払いが前提になっていることがあり、
貧乏な平野には部屋を移ってさらに2年分の前家賃は払えないから、となっているようだ。、

また、そもそも北村が越してきたのは前のアパートで趣味のカメラの現像液の臭いに苦情が出たからになっている。

細かい点では穴がいっぱいあるけど、SF要素を入れたラブストーリーとしてはよくできている。
ただ海岸のシーンはもう少し風の穏やかな日にできなかったのか。
波の感じはよかったが、髪はよくなかった。

チェロの演奏はすごくよかった。
浜野謙太は管楽器が専門のはずで、劇中でもチェロは弾いていないと思われるが違和感はなかった。さすが、ミュージシャン。

古館佑太郎は古舘伊知郎の息子。

人から言われて気づいたが、声がタイムリープする物語としてはデニス・クエイド主演の「オーロラの彼方へ」がある。
息子が30年前に殉職したはずの消防士の父と無線で交信して父は助かるが、その後母が殺人犯に殺されてしまう。
今度は父と協力して母を助けようとするお話。結末は忘れた。

過去に戻って悪かった歴史を修正するが、そのせいで現在はもっと違う方向に悪くなってしまい、
過去に戻るたびにどんどんひどくなるのが、アストン・カッチャー主演の「バタフライ・エフェクト」

SFの原理を全く無視し、思いを募らせて過去へワープするのはクリストファー・リープとジェーン・シーモアの「ある日どこかで」。
映画はものすごくいいけど、結末はとことんやるせない。

タイム・パラドックスを解消する結末には、映画の中での説明のほか、過去は結局変えられないというものがある。
「親殺しのパラドックス」は子供が過去に戻って自分の生まれる前の親を殺すのだが、親殺しに失敗すればパラドックスは生じない。
どうやっても結局親は殺せないとなればいいわけだ。

「ドラえもん」のシリーズではこの展開が良く使われる。
例えば、誰かに大切なものを盗まれたので、犯人を捜しに過去へ行き、盗まれないように隠したら、結局自分が盗んでた、みたいな。

本作では、北村は殺されていないので「北村が殺されるタイムラインは存在しない」となればいいわけで、
実際そうなっているから矛盾は生じていない。

タイムトラベルものは原理よりもタイムパラドックスをどうまとめるかが肝要でその意味でも良くまとまっていると言える。

 

 

   

 未来を乗り換えた男   

フランツ・ロゴルスキ、パウラ・ベア、ゴーテハルト・ギース。

現代のフランス。
ドイツではファシズムが勢力を増し、フランスにも勢力を伸ばしていた。

ドイツから逃れてパリにいたゲオルク(フランツ・ロゴルスキ)は、友人Aに誘われ、マルセイユから国外に逃げることにした。
友人Aはゲオルクにあるホテルの6号室にいる男性に2通の手紙を届けるよう頼む。
ひとつは妻からの手紙で、もう一通はメキシコからの手紙。

ゲオルクがそのホテルに行くとフロントの女性が6号室で掃除をしていた。
書きかけの小説原稿、手紙やパスポートを残し部屋には誰もいなかった。浴室は血だらけだ。
フロントの女性は、ゲオルクをドイツの捜査機関と勘違いし、事情を話す。
男性が喚き散らした後、手首を切って自殺したというのだ。死体はフランス警察の知り合いに頼んで処理したという。

死んだ男は反体制作家のバイデルだった。
フロントの女性はバイデルの遺品をゲオルクに押し付けて出てってくれと言う。
ゲオルクはそれらを持って待ち合わせの場所に行くと、友人Aは警察につかまっていた。
ゲオルクはとっさに逃げ、一緒に行くはずだった友人Bの家に行くと、友人Bは腹を撃たれて苦しんでいた。

友人Cはゲオルクと友人Bに貨物列車でマルセイユに逃げるよう指示、瀕死の友人Bを貨物列車に乗せてマルセイユに向かう。
途中ゲオルクはバイデルの遺品の原稿を読む。残された手紙はバイデルの妻からの離縁状だった。
無事マルセイユについたものの友人Bはすでに死んでしまっており、ゲオルクは逃げる。

海岸で友人Bの家を調べていると、見知らぬ女が近づいてきて、ゲオルクの顔を見てびっくりして立ち去る。

マルセイユの友人Bの家には誰もおらず、少年ドリスとしばし遊んでいると、母親が帰ってくる。
母のメリッサは聾唖で、ゲオルクが友人Bが死んだことを告げるとドリスが手話で教え、メリッサは号泣する。

ゲオルクはホテルで預かった2通の手紙を読む。
1通は離縁状を送っていた妻からの復縁の申し出でマルセイユで待つというもの。
もう1通はメキシコ政府からの招待状で、メキシコ領事館で手続してくれと言うものだった。

翌日、ゲオルクはメキシコ領事館に行く。
アメリカ人の友人の犬を連れた女。コロンビアで演奏活動をするという男性。待合室は人であふれかえっていた。

ゲオルクの順番がやってきた。ゲオルクはバイデルの遺品を渡して去ろうと考えていた。
しかし、書類を見た係官は領事に連絡、領事はゲオルクをバイデルと勘違いし、バイデルとその妻の2人のビザと乗船券、
それに小切手を渡し、スペインとアメリカの通過ビザを取るよう指示する。

ゲオルクは安ホテルに入り、バイデルのパスポートに自分の写真を移し偽装する。
警察が部屋を調べに来るが別の部屋の女性が捕まってその場は収まる。

翌日、小切手を金に換え、腹を満たしたゲオルクはドリスの家に行き、真新しいサッカーボールを与えてしばらく遊んでやる。

次の日もドリスと遊んだゲオルクは、ドリスをカフェに残し、アメリカ大使館に入る。
通過ビザの申請をしようとしたがそこでもバイデルと勘違いされ、奥さんが探している、と告げる。
そして「捨てられた者と捨てた者、どっちが先に忘れる」と聞く。
ゲオルクはもう妻の顔も思い出せないと答える。

ドリスは戻ってきたゲオルクを見て去るのかと聞く。ゲオルクがメキシコに行くと答えると、ドリスはゲオルクを罵って去る。

翌日、ゲオルクがカフェにいるとメリッサが飛び込んできた。
筆談でドリスが具合が悪いと告げると、ゲオルクは小児科医を探し回る。

港近くで小児科医のリヒャルト(ゴーテハルト・ギース)を見つけたゲオルクは往診を依頼。
リヒャルトのおかげでドリスは無事だったが、ドリスがゲオルクに会いたくないと言ったことでゲオルクを責める。

リヒャルトは一旦女と国外に出ようとしたが、女が船を降りてしまい、自分も降りた。
その後、検問が厳しくなって女が国外に出られなくなり、自分も残っているという。

翌日、ゲオルクはリヒャルトを訪ねる。一緒にいた女は本当の夫を探している、と言い、夫がいないとビザが降りないという。
一旦は別れの手紙を書いたが、ビザが要るのでマルセイユに来てほしいとの手紙を頼んだ、と言う。
そして、「捨てられた者と捨てた者、どっちが先に忘れる?」と聞いた。「夫は自分を忘れてしまった」と大使から聞いたという。
そう、女はマリー。バイデルの妻だったのだ。

ゲオルクはバイデルが死んだと言いそびれ、リヒャルトとマリーを国外へ出してやろうと考える。
マリーのビザを何とかするからとリヒャルトを言いくるめて先に船に乗せるが、リヒャルトはフランス軍人に席を奪われて戻ってきてしまう。

ゲオルクはアメリカ大使館を訪ね、マリーの分のビザを申請する。
リヒャルトを残してマリーと一緒にメキシコへ行くつもりだった。

出発の日が近づき、ゲオルクはドリスに別れを言おうと家を訪ねるが、ドリスもメリッサもおらず、見知らぬ男女が大勢住んでいた。

失意で歩いていると、以前犬を連れていた女が声をかけてくる。
前には食事をおごってくれと言っていたのに、今日はおごると言い出し、犬は死んだと告げる。
犬の話はしたくない、ただ一緒に食事がしたいだけ。
食後、展望台で女とゲオルクはともに一服したのち、女は身を投げて死ぬ。

マリーは急に出国を承知し、ゲオルクはアメリカ大使館で通過ビザを手に入れ、タクシーで一緒に港に向かう。
マリーはとても喜んでいた。メキシコ領事にバイデルが今日の船に乗ると聞いたというのだ。
ゲオルクにも紹介するとはしゃぐマリー。ゲオルクはビザ、通過ビザ、乗船券をマリーに渡し、忘れ物をしたと言って車を降りる。
急いでアパートに戻ったとゲオルクは、リヒャルトに書類がそろったと嘘の説明をして金をもらい、リヒャルトを港に行かせた。

二人が乗ったであろう船を窓から眺めるゲオルク。船が見えなくなるまでじっと見つめていた。

バイデルの原稿をカフェの主人に託しリヒャルトが残した靴でも履いてピレネー山脈を越えて国外に出るか、などとうそぶくゲオルク。
そこにマリーがやってきてすぐ出て行った。
焦って追うが姿はない。

ゲオルクは港に行き、乗船名簿を見せるよう頼むと係員は「確かに乗っていた」と答える。
その船は機雷に触れて沈没し全員が死亡した、と言うのだ。

愕然とするゲオルク。
それでもなお、マリーが助けられた可能性を信じて、カフェで行き交う人を見つめるゲオルクだった。

不思議な映画。

マルセイユにつくまでは比較的テンポよく緊迫感もあるが、マルセイユでの時間はゆったりと流れる。
ゲオルクに焦りはなく、マリーの焦燥感だけが募る。

終盤は嘘をついていた自分を恥じ、マリーとリヒャルトを助けようとするゲオルクだが、
結局、ゲオルク自身は八百比丘尼のように、自分自身が輪廻の輪に取り込まれて、マリーの役回りと同じようになってしまう。

ドイツとフランスの合作映画で、出演者はドイツ語とフランス語を操る。
ただ、聞く人が聞けばわかるんだろう、ゲオルクのフランス語はすぐにドイツ人と見破られてしまう。

ゲオルクがフランスに「不法滞在」しているという説明はあるが、なぜドイツから逃げてフランスにいたのか。
なぜドイツの官憲から追われているのか、はよくわからない。
人種的な説明も「排除」の論理の説明も(少なくとも字幕には)出てこない。

マリーの心情はよく理解できなかった。
一旦はバイデルに愛想をつかして捨てたのに、ビザのために利用しようとしているのかと思えば、再会の期待に胸躍らせている。
リヒャルトのアパートに転がり込んでいるかと思えば、ゲオルクにも恋愛感情を抱き、それをバイデルにも説明するという。
そういうものなのか。

原作はWW2時代にナチスに追われてスイスからフランスを経てメキシコに渡った女流作家、アンナ・ゼーガースの小説「トランジット」。
一旦はゲシュタポにつかまったものの、旦那がハンガリー人でハンガリー国籍だったため難を逃れられたらしい。
ゼーガースはSeghersとつづり、カタカナ表記は「ゼーガース」で確定しているようだが、「ゼーゲルス」のほうが近いのでは。
なお、同じつづりのオランダ名では「セーヘルス」と発音するようだ。

邦題はやや違和感。
特に主人公に明るい未来が待っているとも思えず、希望が持てるような終わり方ではなかったし、
「未來を乗り換えた」と言うより「過去をすり替えた」わけで「過去を入れ替えた男」かな。

ありきたりだが、原題の「トランジット」でもよかった。

 

 

            

 

 

 

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