スパイ・レジェンド
ピアーズ・ブロスナン、ルーク・ブレイシー、オルガ・キュリレンコ。
*
あるカフェでCIAの古参エージェントのピーター・デベロー(ピアーズ・ブロスナン)は、
女の子と仲良くしている若いエージェントのメイソン(ルーク・ブレイシー)に
誰とも親しくなるな、と忠告する。
デベローの今日の仕事は米大使の暗殺計画を阻止すること。
米大使の身代わりとなって式典会場に向かう。
会場を見渡す位置にメイソンが待機。
暗殺実行犯がデベローに近づき銃を放つ。
デベローの「撃つな」の指示に反して犯人を射殺したメイソンだが、
巻き添えで少年が凶弾に倒れる。
*
5年後、CIAを引退し小さいカフェを営むデベローをハンリー(ビル・スミトロビッチ)が訪ね、
ロシアの次期大統領候補のフェデロフ(ラザル・リストフスキー)が辣腕の殺し屋、
アレクサ(アミラ・テルツメヒッチ)によってかつてフェデロフに関連したエージェントを
次々と始末しているという。
今、秘書として潜入しているナタリア・ウラノワ(メディハ・ムスリオビッチ)が、
フェデロフをつぶす情報を握っていて、脱出にデベローを指名したと言うのだ。
当のフェデロフが議会で演説している間、ナタリアは彼の事務室の隠し金庫を開け、
中に隠された写真を撮影、ギリギリで金庫を締めて脱出し、車で逃亡を図る。
しかし、金庫の鍵を外し忘れてフェデロフにばれ、保安局に追われることになる。
ナタリアはCIAとの合流地点に着く前に見つかり、合流地点を破棄して逃げる。
いよいよ、追い詰められたナタリアの前に現れたのはデベロー。
保安局のエージェントを射殺してナタリアを車に乗せる。
指名を受けてきたはずのデベローを見てナタリアは驚き、娘の様子を聞く。
一方、救出作戦を実行するはずのメイソンら現地のエージェントはデベローだと気づかずに追う。
そうこうするうち指令室では部長のワインスタイン(ウィル・パットン)が
反対するハンリーらを無視して指令42を発令。
指令は直ちにメイソンに伝えられる。
メイソンらはデベローの先回りをしてビルの屋上に待機。
デベローはナタリアから聞いた「ミラ・フィリポワ」の名をハンリーに伝えるが、
次の名前を伝える前に、メイソンの放った弾丸はナタリアの胸部を直撃、
ナタリアはデベローにさっき撮った写真の入ったスマホを渡して絶命する。
デベローは狙撃チームに逆襲、あっという間に3人を射殺してメイソンと対峙するが、
ここで初めて互いの存在を知ったメイソンとデベローは睨みあったまま動けず、
メイソンはデベローに逃げられてしまう。
メイソンはCIAの車を爆破して証拠を隠滅、
デベローはスマホからマイクロSDカードを抜いて捨て、タクシーで空港へ向かう。
ハンリーはナタリアを射殺させたことでワインスタインを責めるが、
ワインスタインはフェデロフにばれた時点で死んだも同然だと吐き捨てる。
ハンリーが帰宅し、自宅のPCで「ミラ・フィリポワ」を調べていると、
CIAエージェントが突入、PCを撃つハンリーだったがスタンガンで気絶させられる。
本部に戻ったメイソンはワインスタインにデベローを撃たなかったことを問い詰められるが、
危険はなく、お互いに撃つ気はなかったと反論する。
しかし、ナタリアはデベローの元恋人であり、デベローの個人的復讐が始まるとみたワインスタインは、
メイソンにデベローを排除する(殺す)よう指示する。
デベローは、ハンリーの自宅を訪ね、エージェントがハンリーのPCを修復している現場を襲い、
2人のエージェントを確保してPCを操作、エージェントの振りをして
ミラ・フィリポワと接触した難民救済センターのアリス・フルニエ(オルガ・キュリレンコ)の
携帯を追跡するよう指示、アリスがとあるレストランにいることを突き止める。
一方、フェデロフの命を受けたアレクサもミラ・フィリポワを探していた。
ネットカフェで落ち合った情報屋からアリスの情報を得てレストランに向かう。
難民救済センターで働くアリスに近づく男がいた。
男はエドガー・シンプソン(パトリック・ケネディ)と言うジャーナリストで
フェデロフのチェチェンでの悪行を暴くため、アリスに協力を求めてきていたのだ。
アリスはそのカフェでケネディと待ち合わせしていた。
メイソンはハンリー宅からの電話に疑問を感じ、デベローの存在に気づく。
ウェイトレスに化けたアレクサは店に電話が入っていると装ってアリスを連れ出そうするが、
外からそれに気づいたデベローはアリスの携帯に電話しとどまらせる。
ちょうどその頃、メイソンらCIAエージェントがカフェに到着し突入。
デベローはアリスに逃げろと指示して一緒に逃げる。
デベローとアリスはメイソンらCIAに追われる。
予告でも出たデベローとメイソンの電話のやり取りはこのシーンである。
デベローは電話の転送を使ってメイソンらを混乱させ、駐車場に入り込む。
駐車場で車を爆破してメイソンらを巻いたデベローとアリスは電車で移動する。
デベローはアリスに事の次第を説明する。
フェデロフの悪事を知っているミラをフェデロフとCIAが追っている。
ミラの所在がはっきりしない今、接触した人物としてアリスが狙われている。
アリスはミラの所在を知らないと言う。
チェチェンで両親や家族を殺されたミラはろうあ者の振りをして殺害を免れ、
フェデロフの慰み者になっていたと言う。
何年かのちにフェデロフから逃れ、難民救済センターに現れてアリスが担当したが、
程なく行方が分からなくなってしまったと言う。
壁に貼ってあった1枚の写真、ポンビキだというアリスにデベローは本名はデニソフで、
チェチェンでフェデロフの右腕だったと告げる。
デベローはデニソフのナイトクラブに行く。
デベローはフェデロフがチェチェン時の関係者を始末している、次はお前だろう、と言い、
デニソフはフェデロフがチェチェンでCIAと結託して、ロシア軍のいるビルを爆破、
ロシアがチェチェンから攻撃を受けたとして介入し、結果として石油利権を奪取したと告白する。
メイソンはワインスタインに失態を責められ、デベローの評価だ、としてUSBメモリを渡す。
そこにはデベローとナタリアの仲睦まじい写真の他、デベローの書いたメイソンに対する報告書もあった。
報告書ではメイソンは「不合格(DROP)」となっていた。
自身は恋人がいながら他人にはきつく当たり、挙句不合格にしたデベローにメイソンは激怒する。
その頃、デベローはメイソンのアパートに行き、不在で向かいの家に侵入する。
そこでメイソンを張り込み、アリスがピアノがうまくロシア語をしゃべることを知る。
デベローは夜、メイソンがネコを飼っている隣家のサラと出かけ、帰宅するのを確認した。
デベローはアリスに金と携帯を渡し、一人で逃げるよう指示する。
翌朝、ベッドで寝を覚ましたメイソンだが、サラはいない。
引き出しの拳銃もなくなっている。
調べるメイソンの前に現れたのはサラの頭に銃を突きつけたデベロー。
メイソンに女を助けるか犯人を追うかと問い、サラの太ももを切って逃げる。
メイソンはデベローを追わず、大出血するサラを助け救急車を呼ぶ。
デベローはCIAの秘密のアジトでエージェントを倒して、監禁尋問されているハンリーを助ける。
チェチェンでのビル爆破に加担したCIAエージェントは誰だ。
詰問するデベローにハンリーはワインスタインだと告げる。
そしてミラはロシア度と英語が得意だとも教える。
つまり、アリスこそがミラだったのだ。
その頃、アリスはシンプソンに近づき、フェデロフのすべてを話すと告げる。
意気揚々と家に帰るシンプソンだが、待ち伏せしていたアレクサがシンプソンをめった刺しにする。
アリスは驚いて逃げ、瀕死のシンプソンがアレクサの足を引っ張りアリスは逃げおおせる。
メイソンはデベローの書類をチェックしていて小さい少女の存在に気づく。
ナタリアとの間に生まれた娘・・メイソンは早速ワインスタインに報告する。
また、分析官のセリアと情報を洗い直し、アリス・フルニエがすでに死んでいること、
アリスは整形して顔を変えたミラだと判る。
アリスはデニソフのナイトクラブに行き、デベローからの指令だと言ってデニソフに依頼をする。
その頃、フェデロフは会議出席のためホテルのスイートルームにいた。
アリスはデベローからの電話にフェデロフを殺すと言い、説得するデベローを無視してホテルに入る。
アリスはデニソフからの娼婦を装ってフェデロフの部屋に入り、トイレに入って鏡を割り、凶器を作る。
ベッドで鼻の下を長くして待つフェデロフに襲いかかったアリスだが、フェデロフにミラだとばれ、
一思いには殺せないで、フェデロフの反撃にあう。
一方、デベローもフェデロフのホテルに侵入、部下をあっさりと倒してフェデロフの部屋に入り、
アリスを助け、フェデロフの自白を録画しようとアリスに携帯を持たせる。
デベローはチェチェン時代の写真、自分とワインスタインとハンリーの兵隊姿の写真を見せ、
紛争の原因となったビル爆破に協力したのはワインスタインか、と迫る。
押し問答の末、フェデロフはハンリーだと白状する。
アリスが、このハゲ男を知っている。彼がフェデロフと会っていたと叫ぶ。
その頃、メイソンらがホテルに到着、フェデロフの居室に突入する。
デベローはスタッフ室に入って業務用エレベーターでアリスを逃がし、自分は階段で降りていく。
他のCIAエージェントを倒し、地下機械室に逃げ込むデベローと追うメイソンの格闘となり、
デベローはメイソンを倒し、携帯を渡して逃げていく。
メイソンはCIAの事務所に戻り、セリアとともに携帯の動画を見て黒幕がハンリーだと知る。
しかし、ワインスタインは既に帰国、ハンリーが後釜になっていた。
ハンリーはCIAがフェデロフの弱点を握り、操るためにデベローを利用していると語る。
デベローはアリスと合流、デベローはアリスに正体を明かし、元CIAエージェントで
引退してカフェを営んでいること、娘ルーシーがいること、母親のナタリアが死んだことなどを告げる。
デベローはルーシー(タラ・ジェフロシモビッチ)に電話をするが出たのはハンリーで、
ルーシーは拉致されており、ハンリーはルーシーとアリス(ミラ)を交換すると申し出る。
デベローはアリスに3枚の切符を買って駅で待つよう言い、ハンリーとの約束の場所に向かう。
一方、アレクサは情報屋からアリスが切符を買ったことを知らされ、情報屋を始末して駅に向かう。
アリスは駅の端末からシンプソンとミラの共同名でフェデロフの悪事を暴露する記事を書く。
しかし、書き終わらないうちにアレクサに見つかり逃げるが、階段上で反撃してアレクサを倒し、
端末に戻って記事を書き上げ、メディア宛てに送信する。
一方、デベローはハンリーと合流。
ハンリーはフェデロフを牛耳り、ロシアを牛耳り、NATOに組み入れて協力させるという。
デベローは携帯でルーシーの安全を確認してアリスがバス停にいると告げる。
現場に急行するメイソンら。
そこにセリアから携帯の場所の連絡が入る。
メイソンは車をぶつけて同乗のエージェントを怪我させ、ルーシーを助ける。
戻ってきたメイソンはハンリーの部下を倒してハンリーを確保、デベローを逃がす。
デベローは娘とともにアリスの待つ駅に向かい逃走する。
後日、アリスは本名のミラ・フィリポワとして証言台に立ち、フェデロフの悪行と
CIAのハンリーの共謀を暴露。
フェデロフは政治生命を失い、ハンリーは逮捕監禁される。
しかし、フェデロフは釈放されて大型クルーザーに乗って地中海辺りで豪遊、
次の機会を狙っていたが、一発の銃弾がフェデロフの額を貫通、命を奪った。
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一言で言えば、ご老体スパイものシリーズ。
「96時間」のリーアム・ニーソン(1952年生)、「ラスト・ミッション」のケビン・コスナー(1955年生)
に負けじと頑張るピアーズ・ブロスナン(1953年生)といったところ。
このお三方は残念ながらいずれも「老いたな」感は否めない。
動きがやや鈍いと言うか、口だけは達者だが、と言う感じか。
アレクサのアミラ・テルツメヒッチはボスニア・ヘルツェゴビナの新体操チャンピオン。道理で。
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登場人物が複雑に入り組んではいるが、そこここにヒントがちりばめられており、それほど判りにくくはない。
逆に言うとIT的な新鮮味はあっても、だまし、だまされはやや単純。
それぞれのイベントの発生する場所の位置関係がややわかりにくい。
ロシアなのか、ヨーロッパのどこかなのか、アメリカなのか。
事件の起こる場所が近いのか遠いのかもよくわからず、移動に掛かる時間的なものがよく把握できない。
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邦題の「スパイ・レジェンド」はよく思い切って恥ずかしくもなくつけたものだ。
IMDBによれば、原作はビル・グレンジャー(Bill Granger、米、1942-2012)の「There
Are No Spies」(1987)
ところが同氏の作に原題と同じ「The November Man」(1979)があり、混乱する。
ビル・グレンジャーと言えば、1969年生のイケメン料理研究家がいて、これもまた混乱の要因。
スパイ小説の「The November Man」と言えば、ブラアン・フリーマントル(Brian
Freemantle、英、1936-)が、
1976年に書いており、こちらの方が有名らしいのと米ソが全く逆ながらプロットがよく似ているため、混同されているようだ。
(次期アメリカ大統領候補がソ連に巨額の援助をして世界平和を実現すると主張。
しかし、その裏にはアメリカを牛耳ろうとするソ連の陰謀があり、
東側の命令で工作活動していた主人公がKGBに疑われていることに気づく、と言うもの)
「十一月の男」の邦題で訳本が出ている。
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