2010/4-6鑑賞
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この期間に鑑賞した映画の本数  
4月:7(3)[2]本、5月:7(2)[3]本、6月:6(1)[2]本、計:20(6)[7]本 。 ( )は試写会
[ ]は邦画
今年の累計:36(16)[9] 本  
1−3月期:16(10)[2]本 、4−6月期:20(6)[7]本、7−9月期:0(0)[0]本、10−12月期:0(0)[0]本  
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 アデル  ファラオと復活の秘薬   

リュック・ベッソン脚本監督。ルイーズ・ブルゴワン、マチュー・アマルリック、ジル・ルルーシュ、ジャッキー・ネルセシアン。

**

登場人物を整理しておこう。

自分自身が死にそうなジジイの科学者で死者を蘇らせる研究に熱心なマリージョセフ(ジャッキー・ネルセシアン)、
冒険作家で実際に現地取材も欠かさないアデル・ブランセック(ルイーズ・ブルゴワン)、
博物館の助手でアデルにあこがれているアンドレ・ズボロウスキー(ニコラ・ジロー)、
アデルの妹、アガサ(ロール・ド・クレモン=トネール)、
アデルを目の仇にしている冒険家のデュールボー(マチュー・アマルリック)、
パリ警察の敏腕?警部、カポーニ(ジル・ルルーシュ)

こんなところでいいかな。

原作はどうも漫画らしい。
みんな特殊メイクなのか実年齢や他の映画のキャストの時と大きく風貌が違うので、えっ、あの人?って感じです。

**

2つのエピソードが平行して進行する。

一つは、マリージョゼフだが、説明上博士扱いしていた方がわかりやすいので、マリージョゼフ博士と書くことにする。
マリージョゼフ博士は自身の研究成果として死者復活の「念」を使って、博物館の翼竜の卵を蘇らせる。
翼竜はマリージョゼフ博士と精神的に同調しており、博物館の屋根を破って逃亡。
帰宅中の知事の車を襲ってしまい、同乗の3人が水死する事件が起こる。

目撃者の話は当初信用されないが、大統領が翼竜を見たことから、回り回ってカポーニ警部に事件解決のお鉢が回ってくる。
警部は猛獣ハンターも雇って翼竜を探し、これを退治しようとする。

もう一つはアデル。
アデルは冒険作家でジャーナリスト。
現地取材もするが、ペルーへの旅行を指示されながら、エジプトへ向かい、王家の谷で医師のミイラを探す。
しかし、ミイラを発見してのもつかの間、宿敵デュールボーに見つかって逮捕され、銃殺されそうになるが、
間一髪逃げのびてミイラを確保する。

そしてこれを妹のいる自宅に持ち帰る。
妹は、頭に後頭部から前頭部にかけてピンが刺さっており(頭蓋骨を貫通)植物状態である。
アデルは、ミイラを復活させ、彼らの持つ「復活の秘薬」で妹の傷を治そうというわけだ。

ここでちょっと矛盾に感じる点があるが(後述)「ミイラの復活」と「妹の植物状態からの復活」は全く別物だと理解しておく。

さて、カポーニ警部は翼竜が博物館から逃げたものだと推察、卵について聞こうとして、
ジュラ紀の専門家であるマリージョゼフ博士を訪ねる。
マリージョゼフ博士はちょうど翼竜を手懐けている最中だったが、カポーニー警部の行動がもとで、それがばれ、翼竜も逃げてしまう。

アデルは、マリージョゼフ博士に、死者復活の念を使ってミイラを蘇らせようとするが、博士は元知事殺害の罪で死刑宣告され、
収監されているという。

アデルは弁護士に扮装して博士の脱獄を企てるが失敗、その後もいろいろと変装して脱獄させようとするもすべて失敗する。
そして、マリージョゼフ博士は処刑前日に処刑場に移送されてしまう。
アデルは大統領に恩赦を願い出るがこれも失敗。

しかし、アンドレが翼竜を博物館の植物園にかくまっていることを知り、アデルは翼竜を手懐けて乗り、博士を処刑場から奪取する。
(この辺、アバターみたいですな)
博士の奪取には成功したものの、翼竜を追っていた猛獣ハンターに発見され、翼竜は撃たれる。
翼竜と博士は一心同体で、マリージョゼフ博士も連動して瀕死の重傷となる。

アデルは、マリージョゼフ博士をアパートに連れて行き、ミイラの復活を試みる。
あと少し、と思われたところで翼竜は死に、博士も絶命する。

すべてが水泡にと思われた瞬間、ミイラは復活する。
しかし、医師だと思っていたミイラは物理学者だった。医師はファラオとともにあるという。
折角の復活も無為かと思った時、ミイラは2km四方の死者が蘇っただろうと言う。
2km四方と言えば、ちょうど近くのルーブル美術館で「ラムセス2世展」が行われていた。
ファラオや医師のミイラも復活したはずと見て、アデルは妹を連れてルーブルへ向かう。

物理学者ミイラの念力でルーブルのカギを突破してファラオや侍従、医師などのミイラを棺から出し、妹の治療を頼む。
医師のミイラはファラオの秘薬を合成し、妹を治療する。
かくして、妹は植物状態から復活し、姉妹は感激の再会って、妹は自分の置かれた状態に気づいてませんでしたけど。

アデルは休暇旅行と称し、船旅に向かう。
残された妹は元気になり、アデルに会いに来たアンドレとも出会う。

デュールボーは、アデルを追い、船中でアデルを殺そうと企んでいる。
そしてアデルの乗ったその船こそ「タイタニック号」だったのだ。

***

お気楽、ご都合映画ではあるけど、いまいちキレがなかったように思う。
リュック・ベッソンにしてはセリフが多い。
フランス語は「私はフランス語が喋れません」と「たばこは吸わないでください」「これは何ですか」くらいしか喋れないので、
あんなに早口でまくしたてられたら面白いんだか何だかよくわからない。

ラストに「タイタニック」を持ってきて、続編なんか考えているんだろうか。それとも別の意図があるのか。

矛盾、と書いたのは、わざわざミイラを復活させてファラオの秘薬で妹を治すよりも、
妹を死なせてマリージョゼフ博士に直接妹を助けてもらえばよかったのに、と思った次第。

何故博士が妹を助けられないのかは不明だった。

アデルはフランスTVのお天気お姉さんで、コスプレ衣装で有名な人らしい。
マリージョゼフ博士救出作戦はそのパロディというか、オマージュというか、その類?

男性キャストのほとんどは汚いメイク、老けメイクだった。
マリージョゼフ博士は見た感じ90歳でも100歳でもおかしくなく、演技中にほんとに死ぬんじゃないかと心配したが、
実際には、キャストのジャッキー・ネルセシアンは、1950/11生まれ、まだ59歳だ。

また、敵役(かたきやく)のデュールボーはとても汚く、「007慰めの報酬」のグリーンと同一人物とはとても思えなかった。

糞にしても汚いきれいの感覚が日本と違うのか、パリなら糞が上から降ってきてもおかしくないのかも。

 

 

 ザ・ウォーカー 

デンゼル・ワシントン、ゲーリー・オールドマン、ミラ・クーニス、ジェニファー・ビールズ、マルコム・マクドウェル。

**

時代は不明、場所はアメリカ。戦争が終わって少なくとも30余年。
一人の男(デンゼル・ワシントン)が、旅を続けていた。
この後、長く男の名前が明かされることはないが「男」では書きづらいので、エリ(ELI、英語読みではイーライ)と書く。

すべての文明が崩壊した世界。

エリの前に手押し車が壊れたと助けを求める女性が現れる。
近寄る男に物陰から物取りの数人が襲いかかる。

リーダーらしき男がリュックを渡せとエリを小突く。
「二度と俺に手を出すな。さもないと手を戻せなくなるぞ。」
リーダーらしき男が再びエリを小突くと、手首から先がなくなっていた。

襲いかかるすべての男どもをあっという間になぎ倒し、女に水のありかを聞いて、エリは去っていく。

途中、旅の男女に襲いかかるバイク集団を見かけるが、エリは見ないふりをしてやり過ごす。
男女は殺され、荷物は奪い去られる。

水があるという町、エリは雑貨屋でバッテリーの充電を頼む。
水は向かいの酒場にあった。

カウンターの男に物々交換で水を頼むと、バイク集団の一人がエリのところへやってくる。
「今、俺の猫を小突いたろ。どうなるかわかってんのか。」
そいつは、途端にエリの逆襲の餌食となる。

その酒場を仕切っているのはカーネギー(ゲイリー・オールドマン)、バイクの一味に「ある本」を探させていた。
訝しがるレッドリッジ(レイ・スティーブンソン)に「ただの本じゃない、力だ、武器なんだ」と怒りをぶつける。

エリの腕前を見て、カーネギーは新しく作る街を仕切ることを持ちかけるが、エリは西に向かうからと丁寧にきっぱりと断る。
カーネギーには盲目の愛人クラウディア(ジェニファー・ビールズ)とその連れ子サラーラ(ミラ・クーニス)がいた。
カーネギーは、サラーラにエリの相手をさせ懐柔しようとする。

エリは食事の前に祈りをささげ、サラーラの相手はしなかったが、「本」を持っていたことを知られてしまう。
「最後の本。戦争はこの本のせいだと言う人もいてすべて打ち払われた。これが唯一残っている。」
「頭の中で声がして、本のあった瓦礫の中に導かれた。そして西へ持っていくように言われているんだ。」

翌朝、サラーラは祈りのまねをし、カーネギーに「その本」のことを知られる。
エリは、カーネギーの脅しを断り去ろうとする。
そして銃撃戦となり、多くの男が死に、カーネギーも足を撃たれる。

エリは去り、カーネギーは追撃の準備をする。
サラーラもエリの後を追い、一旦は追い払われるが、結局は一緒に西へ向かう。

カーネギーたちは装甲車を持ち出して追跡する。
そして、野中の一軒家でついにエリたちに追いつく。

その家はマーサ(フランシス・ド・ラ・トゥール)とジョージ(マイケル・ガンボン)という偏屈な老夫婦が住んでいた。
来訪者を招き入れ、殺しては食べていたらしい。

逃げようとするエリとサラーラだったが追いついたカーネギーたちと銃撃戦になり、老夫婦は死亡、
本は奪われ、エリは撃たれて倒れる。
サラーラは連れ去られるが、途中で車を奪って脱出する。

サラーラはエリを助けに戻るが、その場所にすでにおらず、さらに西へ向かっていた。
サラーラはエリを車に乗せて西へ向かう。

カーネギーはガス欠を恐れて追わず、町に戻る。
鍵がかけられていた本は雑貨屋によって丁寧に開けられる。
中は白紙?ではなく、点字だった。
読むように指示されたクラウディアは点字はもう忘れた、とうそぶく。
階下では、主要な部下を失い傷ついたカーネギーを見限った悪党どもが暴れていたが、
すでにカーネギーにそれを抑える力はなかった。

一方のサラーラとエリは、ついに西海岸に到達した。
ゴールデン・ゲート・ブリッジから見る孤島はアルカトラズ島。
エリとサラーラは手漕ぎボートで島に向かう。
そして、エリは島の護衛に告げるのだった「キング・ジェームズ・バイブルを持っている」と。

島では、ロンバルディ(マルコム・マクドウェル)が、文化資産の複製復興を行っていた。
エリは、傷ついた体で聖書の全文を口述し、やがてそれは活字に起こされ、印刷され製本された。

聖書をあるべき場所に届けたエリは、使命を終え土に還った。
そして、サラーラが新たなるウォーカーとして帰還の途に就いたのだった。

**

それが聖書であることは容易に想像がつくし、そのこと自体が物語の謎というわけではありませんが、
聖書の謎にはちょっとびっくり。
私自身は聖書にはなんの思い入れもないので、宗教的な意味合いの感動を感じ取ることはできなかったが、
宗教が人々に何をもたらすのかは議論のあるところかもしれない。

エリ(イーライ)がなぜ使命を与えられたかはよくわからない。
Kマートの店員に過ぎないと言うと語弊があるが、一般人のエリが、30年間の放浪の成果だとしても、
いつの間にあれだけの観察力、動体視力、戦闘能力を身に着けたのかは疑問が残る。

役柄と実際の年齢がほぼ同じだとして50過ぎだとすると、歩き始めたのは20代前半ということになる。
特殊部隊でもなければ、独学であの手練手管は難しいでしょう。

**

ジェニファー・ビールズは、あの「フラッシュ・ダンス」の主人公。ずいぶん感じが変わりました。

出ているとき気が付かなかったので、マイケル・ガンボンの名前をクレジットに見たときはちょっとびっくり。
しかも、フランシス・ド・ラ・トゥールと「ハリーポッター」の校長コンビとは恐れ入った。

IMDBによればノンクレジットということだが、マルコム・マクドウェルの名前も探したが見つからなかった。

 

 

 アウトレイジ  

北野武監督。
ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、三浦友和、北村総一郎、國村隼、石橋蓮司、杉本哲太、小日向文世、塚本高史

**

本筋に入る前に上下関係、組織関係を整理しておこう。
やくざ用語には詳しくないので、一般的な用語を使う。
また、組の名前などは混乱するので、キャストの芸名(ただしビートたけしは「北野」とする)で組名を表すことにする。

まず、本家総代、会長と呼ばれる大親分、北村総一郎と北村組のNo.2が三浦友和。

傘下の組の一つに國村組、組長の國村隼は北村組のメンバーではない石橋組と兄弟分になっている。
No.2は杉本哲太。

石橋組の組長は石橋蓮司、No.2は中野英雄。

國村組の配下に北野組があり、No.2は椎名桔平、金庫番に加瀬亮など何人かの子分がいる。
小日向文世は警視庁の(暴)担当刑事。
北野組の北野武とはボクシング部の先輩後輩の間柄で、金をもらって情報をリークしている。
情報は北村組にも流しており、三浦友和からも金をもらっている。

**

さて、ある暑い日。
北村組で、会長の北村とともに、傘下の組長が食事会をしていた。
食事会が終わり、会長が立ち上がって傘下の組長が退出しようとするが、國村は呼び止められる。
國村は北村一家に入っていない石橋組とつるんでいるとして会長にたしなめられる。

三浦友和は、國村に真相をただすが、石橋とは兄弟分だと答える。
会長の手前、あまり石橋と仲がいいことを勘ぐられたくない國村は北野にもめ事を起こすよう指示する。

石橋が國村隼と兄弟になったのは北村一家に入りたいからだが、北村総一郎は石橋が覚せい剤を扱っていることを知って嫌っている。
國村は石橋をうまく言いくるめて覚せい剤の上りをかすめ、北村に紹介すると言うのは口先だけだった。

ある日、ポン引きに連れられて行った人のよさそうなサラリーマンは、ぼったくりバーで60万を請求される。
覚悟して事務所に金をとりに行くと言うサラリーマンにポン引きの塚本高史が付け馬で着いていく。
ついて行った事務所は「北野企画」で、中には、北村組の代紋が掲げられていた。
サラリーマンは北野組の組員だった。

塚本高史はビビルが、無理やり代金だとして100万円を持って帰される。
翌日、事の顛末を聞いた石橋は、國村に電話を入れ、
塚本に指を詰めさせて、No.2の中野に金を持たせ、詫びに行かせる。

しかし、北野は詫びを受け入れない。
中野に因縁をつけた挙句、顔を十字に切りつけて追い返す。

サラリーマン役だった北野組の組員は、再びぼったくりバーへ行きタダ酒を飲み、ほかのバーでも石橋組をバカにする。
中野は切れ、北野に復讐しようとその組員を殴り殺し、北野企画の事務所前に放置する。

北村は末端ではあっても、配下の組員がコケにされたと考え、國村に始末をつけろと指示する。

北野はぼったくりバーに殴り込み、塚本の居場所を探る。
塚本高史は実家に逃げ帰ろうとするが、北野組のヒットマンに電車内で射殺される。

石橋は、國村と一緒に北村に詫びに行くが、北村は受け入れたふりをして石橋を絞めろと命令。
北野は歯医者で石橋を襲う。

石橋は怒るが、結局國村と手打ち、引退させられてしまう。
おさまらない中野は北野に報復を試みるが、返り討ちに会い這う這うの体で逃げる。
跡を継ぐのは北野組、覚せい剤の密売組織も傘下に入れる。

椎名と加瀬は、ある大使館内で覚せい剤が密売されていることを知り、
大使を策略にはめて大使館の移転とカジノの経営を強要する。
カジノはうまくいくが、やがて、カジノに國村が入り浸るようになり、
カジノの上がりにも影響が出始め、北野は國村を疎ましく思う。

北野は覚せい剤の上りが減ったことから、石橋の引退は偽装で、覚せい剤を卸していることを知り激怒、
國村から指示されて石橋と組の幹部をみな殺しにする。

北村は、北野が引退した石橋を殺したとして、國村に北野の破門を指示する。
北野は激怒、國村を殺して埋める。

ここまでは実は北村の作戦通り。
石橋の子分の生き残りか北野が國村を殺すと読んでのことだった。

北村は杉本に國村の跡を継がせるには親のかたき討ちが必要として、北野の始末を指示する。

北野は小日向から、杉本に自分を始末させる命令が出たと聞き、主要メンバーを逃がす。
そして、立ち寄ったレストランでたまたまトイレに行ったときに爆弾が投げ込まれ、大勢が死ぬ。
北野は残った部下を逃がすが、一人、また一人と杉本の手にかかって死んでいく。

北野は、ついに一人となり、小日向に命を託して逮捕される。

北村の本部。
杉本はねぎらいの言葉をかけられるが、次の食らわされたのは三浦の放つ銃弾だった。
杉本は即死、三浦は翻って別の銃で北村を射殺、杉本が北村を撃ち、三浦が杉本に撃ち返したように装う。

北野はおとなしく収監され、服役していたが、休憩時間に同じ刑務所に入っていた中野に刺殺される。

小日向は北野逮捕などの功労で出世し、後釜の悪徳刑事を三浦に紹介する。
新会長となった三浦の下で金庫番を務めるのは、北野組から寝返った加瀬だった。

**

北野武。
監督では北野武と名乗り、演者ではビートたけしと使い分けている。
監督としては15作目であるが、私は「座頭市」とこれしか見ていない。

作品の評価は全般に高く、特に海外では高く評価されているが、国内での興行成績はあまり芳しくなく、
10億円を超えたのは2003年の「座頭市」(28億5千万円)だけだが、本作は久々の10億円越えかと言われている。

ともかく「全員悪人」というキャッチコピーがそのままの物語。
しかも生き残るのはごく少数のすごく悪いやつ。

これだけの大事件を続けていれば、警察が知るのは当然で、
劇中でもそのことはうかがい知れるが「警察の活躍」は表現されない。
小日向文世が悪徳刑事として登場するだけである。
また、マスメディア、世間といったものも見せないで、裏社会から見ただけの表現となっている。

数ある悪いやつの中では、石橋蓮司が一番損な役回りだった。

大勢の悪いやつが出るが、よく知らないキャストも含め、相関上の立場はちゃんとわかるようになっており、
こいつどっちの味方だっけ?などの混乱は起こらない。

北野組の若いひげの組員がいるが、柄本時生で、柄本明の二男。
「守護天使」の殺人犯役、柄本佑は実兄である。

 

 

 告 白  

松たか子、岡田将生、木村佳乃、そのほかのキャストはみな若い。

**

ある中学校、3学期の終業式で担任の森口悠子(松たか子)が語り始める。

少年法。
14歳未満の少年は処罰されない規定により、犯罪を犯した少年(=触法少年)が刑罰を受けることはない。
(2007年改正法以前の法、現在は12歳に引き下げられている)

森口悠子はシングルマザーの教師。
自分の娘、愛美(芦田愛菜)を保育園に預け、学校に通っていた。
会議などのある日は早めに保育園に迎えに行き、学校の保健室で待たせていた。
そんなある日、愛美がプールで溺死する。

森口は、まじめに聞こうともしない生徒を置き去りにして静かに語る。
事件は事故死として処理されるが、実は違っていた、クラスの生徒に殺された、というのだ。
しかし、被害者の肉親としての思い込みや憶測ではなく、事実として真相を語り始める。

彼女は犯人の名を語らないで、少年AとBと呼ぶ。
実際にAやBと話した内容をクラスメートに語る。

成績優秀で発明家の少年A、自分の発明した虐殺マシンで野良犬、野良猫を殺しHPで公開する。
そして防犯財布として発明した装置で娘の愛美に電撃を与える。

クラスメートはすぐに誰が少年Aなのかを知る。

少年Bはおとなしい生徒。
甘やかされて育ち、すぐに挫折しては目の前の困難から逃げる。
学校で起きたある事件をもとに変更された手続きによって、
事件を起こした際、担任の森口が来ずに別の男性教師が来たことで、森口を逆恨みしていた。
そして、少年Aと共謀して、森口の娘を少年Aの標的にすることにし、電撃で昏睡していた愛美をプールに投げ入れた。
少年Bもすぐクラスメートにその正体が知られる。

少年Aの電撃装置には人を殺すほどの威力はなかった。
つまり、森口の娘は生きたまま、少年Bによってプール投げ込まれ溺死したのだ。

以上は、両少年によって森口に直接語られた。
優秀な母親が父との離婚で別れ、放任状態の少年A。
父が留守がちで母親(木村佳乃)に溺愛され、犯行を自白してもなお母親に被害者扱いされる少年B。

森口はある熱血教師の名前を出す。
HIVに感染、エイズを発症して余命いくばくもないまま、さらに熱血的な指導を続けたある教師。
森口は、その男性こそ愛美の父親であり、自分の愛した人であると告げる。
そして、その血液、HIVに侵されたその血液を、少年AとBの飲んだ牛乳に混ぜたと告白する。

森口は事前の予告通り教師を辞め、新学期からは新しい寺田良輝(岡田将生)が担任となる。
クラスは持ちあがりでクラスメートは変わらず。
事件の真相を知らないのは、自分をウェルテルと呼ぶ寺田先生だけだった。

クラスでは、事件の真相を口外したものは少年Cとみなす、とのメールが回っていた。
少年Bは不登校となっていたが、少年Aは相変わらず登校していた。
クラスでは、少年Aに対するいじめが公然と行われ、「制裁ポイント」としていじめを助長する仕組みが作られていた。

ウェルテルは心の病の少年Bを励まそうと提案、クラス委員の美月とともに家庭訪問を行う。
美月はおとなしいく、いじめをしない、むしろいじめられっこの生徒だったが、裏の顔があった。
かつて、ルナシー事件としてマスコミを騒がせた少年による家族の殺害事件に共感し、危険な薬品を集める趣味があった。

少年Bの母は息子を甘やかし、事件は少年Aのせいで自分の息子はむしろ被害者だと信じていた。
あの終業式以降、息子が不登校となり、風呂にも入らず着替えもせず、引きこもりとなったのは森口のせいだと恨んでいた。

息子が不憫でついに息子を睡眠薬で眠らせ、散髪し、体を拭き、着替えをさせるが息子の怒りを増長するだけだった。
いつしか、怒りの矛先は、森口ではなく熱血教師のウェルテルにも向けられるようになった。

ある日、クラスにいじめがあってそれを密告する手紙があったとウェルテルがクラスに告げる。
みんなでいじめをなくそうと熱く語るウェルテル。
しかし、そのせいでチクったとして美月がいじめにあう。
それがもとで少年Aと美月は急速に親しくなる。

少年Aは優秀な研究者の母の子として生まれるが、厳しく育てられるうち、無能な父との衝突で母は離婚、
少年Aは両親から疎ましく思われて離れに住み、いつか母に褒められることを夢見て発明家を目指していた。
そのための一環として森口をテストに使い、応募した電撃装置の付いた防犯財布が、コンテストの最優秀賞になったのに、
マスコミのトップはルナシー事件。
「できる」少年Aのニュースはごみ記事扱いだった。

少年Aは数々の発明を自身のHPで公開するも世間の反応はなく、でたらめに作った猫殺しのページには大反響。
いつしか悪いことでしか注目されないと思うようになった。

少年Bを利用して森口の娘を殺害し、それを言いふらされることで世間の注目を集めようとしたのに、
少年Bがプールに投げ込んでしまったことで事故死になってしまい、森口に犯行を敢えて自白したのに、
事件を蒸し返さないと言ったことでそれも無駄になってしまった。

少年BはHIVの感染を信じ、母親は感染させまいと食器などは異常なほど気を使い、
自分自身は生きている証として、髪は伸び放題、衣服や部屋の汚れや体の垢や臭いをそのままにしていた。

しかし、それも息子を思う母がきれいにしてしまい、少年Bは自身の存在感を失う。
そして、自分が本当は殺人者であること、死んだ(と思い込んだ)愛美をプールに落したのではなく、
息を吹き返した愛美を、少年Aが殺すことができなかった少女をプールに投げ入れることで少年Aに勝ったと思ったと語る。

母は絶望を感じ、息子を殺して自分も死のうと考えるが、あっさり返り討ちに逢い、絶命する。

少年Aはまたも少年Bが世間の注目を浴びたことに嫉妬する。
そこへ、大学の准教授となった母からのメール。
一旦は母に会いに行く少年Aだったが、直接会うより、自分の偉業を見てほしいとして、爆弾を作り、講堂に仕掛け、
自分が最優秀賞を受け、学校で表彰される作文の表彰式で爆発させ、大勢の生徒ともに爆死することを計画。

そして、その後マスコミや評論家が推測で勝手なことを言わないようにと、自白ビデオを作るのだった。

また、少年Aは些細な口論から、美月を撲殺しバラバラにして冷蔵庫に保管する。

そしてその表彰式。
弁舌をふるい、クライマックスで起爆ボタンであるはずの携帯の発信ボタンを押しても何も起こらない。
仕掛けたはずの爆弾は取り除かれていた。

そこへ電話がかかってくる。
それは森口だった。
森口は爆弾の仕掛けを稚拙だとバカにし、自白ビデオでべらべらしゃべるからだとなじり、
もうすぐ、美月の死体を発見した警察が来るから覚悟しろと告げる。

さらに、母からのメールは自分のウソ。
少年Aが、母に会いにのこのこと大学へ出かけ、不在の母に捨てられたと泣いていたのを見ていたと告げる。

そして、母親は決して少年Aを忘れていなかったことと、爆弾を母親の研究室の机の下に置いてきたこと、
そして、押さなきゃいいのになと思っていたのに、携帯の発信ボタンを押しちゃったよね、とうそぶくのだった。

すべてを失い、呆然とする少年Aの前に森口が現れる。
そして、告げるのだった、これから本当の地獄が始まる、な〜んてね。

**

いきなり、事件の告白。
自分の口からはあえて名指しはしないものの、犯人をあかし、事件の真相を語る。
この時点ですでに、この映画が謎解きの物語ではないということが示される。

そこから事件の真相を共有したクラスメートと犯人の二人の少年の神経戦。
追い詰められていく少年たちの物語か、と思わせておいて、
実はそれぞれの事情があり、考えがあり、思惑通りにいかなかった真実がある、と語る。

そして、最後にすべては森口の仕組んだ罠だったことが示されて結末を迎える。

ちょっぴり、楳図かずおの「おそれ」を思い出した。

なかなか凝った構成で、途中に入る「告白」も効果的だった。
原作は知らないが、原作の読者感想を読む限り、作者の意図はかなりの部分でうまく映像化できているように思える。

登場人物のそれぞれが別々の背景、過去、思い、思惑を持ち、その考えに沿って行動するが、
全く噛みあわないまま接点を持ち、人生は目論見通りには進まない。

そしてほんのちょっとした行き違いが、物事を思わぬ方向に進めていくが、その代償は大きい。

うまく嵌められたのは観客である我々かもしれない。



最後に、少年法によって14歳未満が処罰されないのは2007年まで。
2007年改正法では、12歳未満となっている。

ただし、14歳未満の者は特段の事情がない限り少年院送りとはならず、
保護観察ないし、児童自立支援施設か児童養護施設送りとなるだけである。

 

 

 

 アイアンマン2   

ロバート・ダウニーJr.、グウィネス・パルトロウ、スカーレット・ヨハンソン、ミッキー・ローク、ドン・チードル。

**

前作で自らがアイアンマンだと明かしたトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)
ロシアでそのTVを見ながら親父の死を看取る男がいた。
男はイワン・バンコ(ミッキー・ローク)その後、バンコ/スタークと記載された設計図からアーク・リアクターを作り上げる。

半年後。
トニー・スタークは、スターク・エキスポを開催、世界中の先進技術や未来につながる技術、製品の展示会を主催していた。
一方で、アメリカ議会からはアイアンマンのアーマーを国家に引き渡すよう求められ、議会の証人として登場したのは
ライバル会社で軍事企業の社長ジャスティン・ハマー(サム・ロックウェル)だった。
しかし、トニーは自分とアイアンマンは一体だとして拒否する。

実はトニーはアーク・リアクターのパワーの源でもあるバナジウム電池の副作用で、体内に毒素が蓄積していた。
バナジウムに代わる元素が見つからない中、トニーは自分の命が徐々に蝕まれているのを知っていた。
しかしそれを隠し、自分は研究に専念するためとして、社長のイスをペッパー・ボッツ(グウィネス・パルトロウ)に譲る。

社長変更の法的手続きだとして現れたのは法務部の社員、ナタリー・ラッシュマン(スカーレット・ヨハンソン)。
英語のほかに4か国語を操り、武術に長け、しかも魅力的。

トニーは、モナコ・グランプリで、自身のチームのドライバーとしてF1に乗り込む。
ところが、係員に紛れ込んでいたバンコが、強烈な破壊力を持つ鞭、ウィッブラッシュを持ってコースに乱入。
次々と車を切り裂いて、トニーにも襲い掛かる。
車を切り裂かれクラッシュするトニー。やっとの思いで脱出するが危機は迫る。

ペッパーは、ハッピー・ホーガン(ジョン・ファブロー)とともにスーツケースタイプのアイアンマン・アーマーを持って駆け付け、
バンコを撥ねてトニーを助ける。

バンコは死なず、アイアンマンとの戦いとなるが、最後はアーク・リアクターのパワーソースを外されて逮捕される。
しかし、アイアンマン不敗伝説は崩れ、議会や軍はますますアイアンマンのアーマー引き渡しを迫る。

バンコは刑務所で何者かの手引きによって身代わりを仕立てられて脱走する。
その何者かは軍事企業の社長、ジャスティン・ハマー(サム・ロックウェル)だった。
ハマーはバンコに自社のパワードスーツの強化を依頼、バンコはパワード・スーツではなくドローン(無人機)に改変する。

トニーの体調はますます悪くなり、奇行が目立つようになる。
誕生日パーティで、自分は最後の誕生日になると思い込んで、アイアンマン・アーマーで登場して度が過ぎ、
トニーをかばっていたジェイムズ・ローズ中佐(=ローディ、ドン・チードル)もついにブチ切れて、
アイアンマン・マーク2でトニーとケンカになる。

結局トニーをブッ飛ばしたローディはアイアンマン・アーマーを空軍基地に持ち込み、
ハマーの武器を装着したウォー・マシーンを開発する。

ドローンがなかなか完成しないことに腹を立てたハマーは、バンコからドローンを取り上げて完成させる。

死期が近づいたと考えているトニーの前に、前作でも登場したニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が現れ、
父の遺品を渡す。(同時に、ナタリー・ラッシュマンが、ナターシャ・ロマノフという自分の仲間だとも明かす)

トニーは父のビデオメッセージから、トニー・エキスポの都市模型にヒントがあると考え、
コンピューターのジャービス(声:ポール・ベタニー)を使って、新元素の構造を解き明かし、加速器を作って新元素を生成する。
これによって作成した新型のアーク・リアクターは毒素を生まず、スタークの体は回復する。

スターク・エキスポでハマーは、陸、海、空、海兵隊の4種のドローンとアイアンマン改良型のウォー・マシーンを公開する。
しかしそれらはハマーやローディの意思を無視して暴走し、アイアンマンを追尾する。

重装備のドローンを破壊しつつもほぼ同じ能力のウォーマシーンは倒せない。
ナタリーは、ドローンのコントロールがバンコによるものだと分析、ハマーの研究所に乗り込む。
バンコは逃げた後だったが、ナタリーはウォーマシーンのリブートに成功し、ローディはマシンのコントロールを回復する。

しかし、トニーとローディの前へ現れたのは、アーマーに身を包んだバンコ。
結局、トニーとディの協力でバンコを倒すが、バンコはすべてのアーマーが自爆するよう仕組んでいた。

エキスポ会場では、ペッパーが一般人の脱出を確認していた。
アーマーの自爆寸前でアイアンマンはペッパーを救い出し、爆発を免れる。

ペッパーは、あまりにも異常な出来事の連続に嫌気が差して社長を止めると言い出し、トニーもそれを認める。

フューリーは、アイアンマンを計画中の「アベンジャーズ」には不適格だとしながらも相談役としてメンバーに入れ、
トニーは参加条件として議会による自分とローディの表彰を要求、それが実現してアイアンマンは議会と和解する。

めでたしめでたし。

アイアンマンの監視役としてついていた政府のエージェント、フィル・コールソン(クラーク・グレッグ)は、
転勤となってアイアンマンのもとを去っていたが、赴任地のニューメキシコの砂漠地帯で、クレーターの中からあるものを発見。
それはソー(Thor)の持つハンマー、ミョルニール(Mjolnir)であった。

**

派手で面白いが、あまり教訓やら訴えるものがある映画ではない。
とにかく楽しめばいい。

モナコは本当にF1のコースで撮影したらしい。

途中出てくるドーナッツ看板は実在する本物。
2012では、脱出の背景で同じドーナツが転がるシーンがある。

**

空軍中佐のローディは、テレンス・ハワードからドン・チードルにキャスト変更。
一説によればギャラで折り合いがつかなかったらしい。

アイアンマンだけでなく、マーベル・コミックの多くのヒーローが、SHIELDの傘下に入り、
協力して悪に対峙する「アベンジャーズ」のメンバーとなる。

「アベンジャーズ」は、SHIELDの発案者であるニック・フューリーをチーフとするスーパーヒーロー軍団で、
大勢が参加したり離脱したりしている。アイアンマンのほか、ソー、キャプテン・アメリカが中心メンバーらしい。
ハルクやブラック・ウィドウ(=ナタリー・ラッシュマン)も参加するようだ。

ラストでその存在が示唆された「ソー(Thor)」は、もう撮影は終わっているようで、現在ポスト・プロダクション。
クリス・ヘムズワース主演で2011/5/6全米公開予定。
ナタリー・ポートマン、アンソニー・ホプキンス、浅野忠信らが出演する。

浅野忠信は、ホーガン(=Hogun、ホーガン・ザ・グリム、ハッピー・ホーガン=Hoganとは別人)を演じる。

また、「アベンジャーズ」は2012/5/4全米公開予定。
アイアンマン(ロバート・ダウニーJr.)、ソー(クリス・ヘムズワース)、キャプテン・アメリカ(クリス・エバンス)、
ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)が主要キャスト。
このほか、スカーレット・ヨハンソン、ドン・チードル、クラーク・グレッグらも同じ役柄で出ると言われている。

 

 

 プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂 

ジェイク・ギレンホール、ジェマ・アータートン、ベン・キングスレー、アルフレッド・モリーナ。

**

周辺諸国を制圧し広大な国土を誇るペルシャ帝国。

その王が街中を視察中に無礼を働いた子供、部下が逮捕して首を切ろうとするが、
素早い身のこなしに感嘆した王はその子を助け、養子にし、3人目の息子として育てる。

やがて時が過ぎ、15年後、少年ダスタン(ジェイク・ギレンホール)は、立派に成長していた。
長兄、次兄、叔父(ベン・キングスレー)とともに、遠征中に聖都アラムートを攻める。
アラムートが武器を製造し、ペルシャの敵国に密輸していたというのが理由だ。

戦いの先陣を切るのは次兄。正面からの正攻法で攻める。
ダスタンは、側面から城内に入り、内部から開門、本隊を場内に引き入れるが、迎え撃つ敵を翻弄し味方を有利に導く。

その頃、アラムートの城内では若き女王タミーナ(ジェマ・アータートン)が兵士に短剣を託す。
しかし、兵士は場外に逃れようとしてダスタンに倒され、短剣はダスタンの手に入る。

長兄はアラムートの民を懐柔するためとしてタミーナを何番目かの妻にしようとするが、タミーナは拒絶する。
しかし、ダスタンがあの短剣を持っていることに気づき、結婚を受け入れる。

やがて、ペルシャ国王がアラムートに到着。
褒めてもらえると思った長兄は逆に聖都を攻め落としたことを叱責される。
ダスタンは長兄から託された聖職者のガウンを父に贈り、大変喜ばれる。
さらに、ダスタンがタミーナを長兄の妻にと申し出たところ、反対されダスタンの妻にせよと言われる。

ところがしばらくして、ガウンに塗りこまれた毒によって王は火傷を負い、死んでしまう。
ダスタンは、一転して王殺しの汚名を着せられ、その場から逃げる。
タミーナはダスタンを誘導して一緒に逃げる。

何とか城から逃れた二人だったが、敵同志、当然仲が良くなるわけはない。
いざこざの最中、ダスタンが偶然短剣の握りにある宝石を押した途端、今起きた出来事が逆回転する。

元に戻ったことをタミーナに告げると、タミーナは激怒、時間逆回転は握りの中の砂のパワーで、砂を使い尽くしたとダスタンをなじる。

ダスタンはこの短剣の秘密を知っていた長兄がダスタンを罠にはめ、短剣を手に入れようとしていたと考え、
叔父にすべてを暴露すれば、王殺しの汚名は晴れると考える。

そこで、砂漠の盗賊の住む谷を抜けて城に戻ろうとするが、タミーナに一杯食わされて、盗賊につかまる。
ダスタンはタミーナを捕まえることを条件に盗賊の頭(アルフレッド・モリーナ)に取り入り、混乱に乗じてタミーナとともに逃げる。

ダスタンはタミーナの懇願も無視して、王の葬儀に紛れ込んで、短剣の秘密を叔父に告げる。
しかし、叔父はダスタンを捕まえようとする。王殺しは叔父の陰謀だったのだ。

ダスタンは長兄に会い、すべては叔父の陰謀だったと言い、短剣の秘密と自らの潔白を証明するため短剣を胸に突き立てて死ぬ。
長兄は、短剣の宝石を押しダスタンの死ぬ前に戻り、ダスタンの説明を信じるが、直後に現れた叔父に首を切られて死ぬ。

再び追われる身になったダスタン。
叔父は、時間を幼少期まで巻き戻し、王を見殺しにして自らが王になろうという考えだった。

タミーナは、短剣を時間の砂の塊に突き立てると時間が解放され、人類は神に滅ぼされることを告げ、
短剣の隠し場所は秘密の寺院しかないという。

ダスタンはタミーナとともに寺院に向かおうとするが、盗賊一味につかまる。
これをうまく丸め込んで寺院に向かわせるが、叔父の放った刺客により、寺院は壊滅、短剣も奪われてしまう。

再び、アラムートに戻るダスタンとタミーナ。
しかし、追撃もむなしく、タミーナも墜落死し、叔父は時間の砂(の塊)に短剣を突き立てる。

激しく巻き戻る時間、ダスタンは格闘の末、ついに叔父を倒し、短剣を時間の砂(の塊)から抜く。
途端に時間はダスタンが短剣を手に入れた時間に戻る。
それはちょうどアラムートを攻め落とした時でもあった。

ダスタンは長兄にアラムートを攻めたのは間違いで叔父の陰謀によるものだと説明。
長兄は自分と父国王しか知らない言葉をダスタンが述べたことでダスタンを信用し、叔父を追求する。
叔父は万事休すとみて反抗するがダスタンに倒される。

長兄はタミーナに謝罪、ダスタンと結婚するよう依頼する。
この時点ではダスタンを知らないタミーナだったが、ダスタンが短剣の秘密を知っていることに気づき、
それを受け入れて、和解が成立する。めでたし、めでたし。

**

大したひねりはないし、筋もすぐに読めてしまうが、展開が早く、エピソードてんこ盛りなので飽きずに楽しめた。

なかったことにしてしまうのは、ちょっとずるいと言えなくもないが、設定はまずまず面白い。

セットも大がかりでアクションもすごい。
こりゃ金掛かっているだろうなと思わせるが、制作費2億ドルは伊達ではない。
どうせここまでやるのなら3Dにしてもよかったとは思うが、しなかったのは時間のせいか、金のせいか、ポリシーか。

タミーナのジェマ・アータートンは、「タイタンの戦い」のイオ。
あの時はずいぶん感じの悪い役に思えたが、この映画では化粧のせいか、衣装のせいか、ずいぶん洗練されたように見える。
ただし、タカビー、わがまま放題なところは「スターダスト」のイベイン(クレア・デインズ)を思い出した。

盗賊の頭、アルフレッド・モリーナは、「スパイダーマン」のドクター・オクトパス、
「ダビンチ・コード」ではポール・ベタニーに指示するマヌエル・アリンガローサ司教だった。

 

 

 パリより愛をこめて  

ジョン・トラボルタ、ジョナサン・リース・マイヤーズ、カシア・スムトゥニアク。

***

ジェームズ・リース(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、アメリカのフランス大使館勤務の外交官で、大使の補佐官(秘書)。
スケジュール調整、通訳、そしてチェスの相手もこなし、いずれでも有能。

しかし、その裏では、何者かから指示を受けてスパイ活動にも手を染めるCIAのエージェント。
とは、言ってもどこかの駐車場で車のナンバーを取り替えたり、フランス大使館に隠しマイクを仕掛けたりといった「小物」作業ばかり。

いつかは、大きい仕事をやりたいと考えている。
リースにはフランス人の彼女、キャロリーン(英語読みだとキャロライン、カシア・スムトゥニアク)がいて同棲中。

ある日、リースがアパートに戻ると、ドア付近に点々と血の跡が。
警戒して屋上に出てみると、そこにはディナーの用意をしているキャロリーン。ソースをこぼしたという。
キャロリーンは父の形見だという指輪をリースに渡し、いい雰囲気になったところへ、また電話が入る。
リースの相棒になる男が税関でもめていると言い、

行ってみると、男はいかにもって感じのチャーリー・ワックス(ジョン・トラボルタ)、係員を口汚くののしり、
ドリンク缶を持ち込む、持ち込ませないで揉めていた。
リースは、ワックスのバッグに「外交文書」のシールを貼ってワックスを連れ出す。

缶はギミックで中身は銃のパーツだった。
ワックスはそれを組み立て、持っていたマッチの中華料理屋に向かった。

ワックスは、ボーイに突然、ヤクを出せと言いがかりをつけ、店員らと撃ちあいになる。
結局激しい銃撃戦の末、ワックスは店員のほとんどを射殺、天井に隠されたコカインの粉末をツボに詰めてリースとともに外に出る。
店の裏手に回ったワックスは、一人逃した店員の後を追う。

ワックスのあまりの無軌道ぶりに憤るリースに、ワックスは国務長官の姪があの中華料理店の密売するコカインで死んだので、
組織を殲滅するためにパリに来たんだという。

男を追って中華街のスラムに来たワックスとリース。
ゴロツキに襲われそうになるが、ワックスはあっという間に彼らをのして男の入ったビルに潜入する。

そして、子供たちの劇を見ている中国人幹部を銃で脅して、ヤクの売人の元締めの居所を書かせる。
暫くして中国マフィアとの銃撃戦。
またもほとんどの相手を倒して脱出。

夜が明け、戻らなかったリースに怒るキャロライン。
電話しようにも電池切れ。

ヤクの売人のアジトに侵入。
一瞬捕まりそうになるが壺の役を利用して形勢逆転してボスのところへ案内させる。
リースは当初冷静だったが、ワックスのせいもあってか、だんだんやけ気味、キレ気味になる。
二人はボスの部屋からヤクを売りに来る中東系の男を発見、ここの一味は放置して男の行方を追う。

ワックスは姪の話は嘘で、麻薬を材料に金を調達し、テロを仕掛ける集団を追っていた。

中東系のアジトは売春宿でもあり、女を買うふりして二人は潜入。
そこでなんと、布地を買いに来たキャロリーンと一瞬遭遇してしまう。

誤解を受けると心配するリース、ワックスは意に介せず、女とリースを連れて10階の部屋に行き、
階下でコカインや爆弾の準備をしていることを発見、窓から突入する。
リースは階段からドアに回るが、ドアに爆弾が仕掛けられているため突入できない。

リースはさらに一階下から逃げようとした男を確保したが、男はリースの拳銃を咥えて撃死する。

8階の部屋で爆弾を発見したワックスは、逃げ出した男たちが出てくる時間を計算してこれを爆死させる。

残された資料をかき集め、警察が来る前に逃げようとするワックス。
血だらけの顔で立ち尽くすリースをなだめようとして、別の部屋に貼られたリースの写真を見つける。

やがて警察が突入、爆弾を知らせようとするリースは間に合わず、大勢が爆死。
ワックスはリースを連れて逃げる。

そこへ、キャロリーンから、事の真相を問いただすメール。
リースの言い訳が本当なら、もう一人のエージェントを連れて帰ってこいとの内容だった。
ワックスを連れてアパートに帰るリース。

キャロリーンと友人のニコルの待つアパートで、4人は楽しく食事を始めようとしていた。
その時、ニコルに電話がかかってきて、それを聞いたワックスは突然彼女を撃ち殺した。
唖然とするキャロリーンとリース。
ワックスは彼女はテロリストで、電話はそれを確認するため、本部が一味の電話から掛けたという。
さらに、キャロリーンもテロリストの一味で、どうせ盗聴器が仕掛けられているに違いない、という。
実際、盗聴器はすぐに見つかりキャロリーンがリースにくれた指輪も発信器だった。

キャロリーンは愕然とするリースを撃って逃げ、追うワックスをしり目に仲間の車で逃亡する。

おりしもアメリカ国務長官の来仏でレセプションが行われようとしていた。
テロの標的は国務長官で、ワックスはその先兵としてテロをつぶすために乗り込んできたのだった。

キャロリーンは、最後の電話をリースにかけてくる。
ワックスは電話の背後の音から高速脇からの電話と断定、リースを残してCIAのエージェントとともに、国務長官の車を援護に行く。
リースはさらに裏があるとみて部屋を探す。

そして、キャロリーンが高速に続く第2弾の自爆テロとして大使館に潜入していると読む。

ワックスは車を発見して追うが、案の定キャロリーンに見せかけたのはリースの読み通りダミー。
ワックスは男をロケット弾で撃破。
国務長官は何事もなかったように大使館に向かう。

リースは大使館に着き、確保されそうになるが大使に事情を説明して中に入りキャロリーンを探す。
警備員の銃を奪ってキャロリーンを見つけ、自制を促す。
キャロリーンはリースの言葉に耳を傾けはするが、結局自爆ボタンを押そうとしてリースに射殺される。

こうして事件は片付き、ワックスはアメリカに帰っていくのだった。

***

そんなに複雑なストーリーではないが、次々と畳み掛けるスピード感あふれる展開は、こちらに有無を言わせない。
でたらめな性格ででまかせばっかり言っているようで、実は緻密な計算をしている。
個人プレーに走っているようで、実はCIAのバックアップを巧みに利用している。
などなど、展開に破綻は感じさせない、ていうか破綻を感じている暇がない。

車での暴走シーンもあり、リュック・ベッソンの本領発揮というところだろうか。

「96時間」よりもさらに無茶苦茶なエージェントだが、国家の後押しがあるせいか、度重なる乱暴狼藉も外交特権で済まされそう。
人の命を屁とも思わない、こんなエージェントがホントにいたら大問題だが、ここまでハチャメチャだともはや痛快だ。

弱っちい若いエージェントが無茶なベテランに振り回され、最後は敵を撃ち倒し、ベテランに匹敵するゴツイ武器を持つ。
ありがちな設定だが、エンディングはちょっと「ビバリーヒルズ・コップ」を思い出した。

**

ジョン・トラボルタは、リュック・ベッソンに自分のスキンヘッドのCGを作って送り、監督のイメージに合うか確認したそうだ。

ジョナサン・リース・マイヤーズはMI:3にも出ていたらしい。あとで確認しておこう。

カシア・スムトゥニアクは、ちょっとキーラ・ナイトレイの雰囲気もあって、
それに顔を小さくしてペネロペ・クルスの味付けをしたような感じ。

 

 

 ヒーロー・ショー    

井筒監督作品。ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)、ちすん。

***

鈴木ユウキ(福徳秀介)は、お笑いで身を立てようと、バイトの傍らNSCに通う。
貧乏で家賃もまともに払えない生活を送っている。楽しみはPCの美少女ゲーム。

NSCのネタ見せテストでバイトをさぼり、バイト先と揉めてやめてしまう。
そんなユウキにヒーローショーのバイトを紹介してくれたのは、昔コンビを組んだこともある先輩の剛志(桜木涼介)
ところが、剛志の彼女で司会のお姉さん美由紀(石井あみ)がヒーローショー仲間のノボル(松永隼)と浮気したからたまらない。

次のヒーローショーでは剛志とノボルが大げんかとなってしまった。
おさまらない剛志は、サーフショップの鬼丸兄弟(阿部亮平、ジェントル)に頼み込んで、ノボルと勉(米原幸佑)を脅す。

金を強請られた二人は、勉の兄で出会い系サイトを運営する拓也(林剛史)に金を借りようとするが、
拓也は元自衛隊の石川勇気(後藤淳平)に鬼丸らを締めるように依頼する。

拓也は金を払うからと鬼丸を言いくるめて、勝浦までやってこさせた。
しかし、そこで待っていたのは、勇気やヒロト(落合扶樹)だった。
鬼丸はタコ殴りされながらも強がりを止めず、ついには頭を殴られ悶絶する。

勇気や拓也は鬼丸たちを埋めることを決意、ネットでユンボのオペレーターを募集する。

鬼丸、剛志、ユウキを車に詰め、埋める場所へ移動中、死んだと思われた鬼丸に逃げられてしまう。
とりあえず、剛志を穴に埋めることにし、ユウキにも手伝わせる。

ユウキは自分が殺される恐怖から剛志を穴に突き落とす。
剛志はみんなから投石されて息絶え埋められてしまう。
しかし、ユウキは剛志が落としてかつてのコンビ名が書かれたネタ帳を見つけるのだった。

ユンボオペレーターは口止め料として金を要求。
拓也らはユウキにサラ金で金を借りさせようとするが失敗、このころから勇気とユウキに奇妙な連帯感が生まれる。

勇気にはバツイチ子持ちの彼女あさみ(ちすん)がいた。
元の旦那が死んだことを聞き、あさみは息子健太に会うために葬式に行くが、けんもほろろで追い返されてしまう。

ユウキはヒーローの衣装で健太をおびき出し、勇気、あさみとともに鴨川シーワールドで楽しい時間を過ごす。
途中、検問に引っかかるもユウキの機転で事なきを得た勇気はユウキを東京に帰し、あらためてあさみとの将来を誓うのだった。

ノボルは東京に帰り、拓也と勉は実家でのんびりしていたが、証拠隠滅で解体するはずの車を乗り回していたヒロトは、
事故を起こして重体となってしまう。

車から足がつくと見た拓也は、勇気に剛志の遺体処理を頼む。
勇気は再びユウキを連れ戻して、遺体を掘り返させようとするが、殺されると思ったユウキの開き直りを見てそのまま立ち去る。

アパートに戻り、あさみに別れのメモを残して去ろうとした勇気。
そこへしぶとく生き延びた鬼丸と弟が顔をだし、勇気を半殺しにする。

ユウキは東京へは戻らず、山中湖の両親の鯛焼き屋に顔をだし、鯛焼きの手伝いをするのだった。

**

吉本興業の門下生大勢が出演。
NSCの舞台のシーンでは、本当に大勢(その他大勢)が出ていた。
これも一つの勲章だろうか。

暴力が暴力を呼ぶ、負の連鎖はとどまるところを知らない。
映画が終わっても連鎖は途切れておらず、ましてや事件は解決していないのだ。

あそこまで無茶すれば、もう一人二人死ぬんじゃないかと思っていたが、結局死ぬのは一人だけ。
尤も映画の中のシーンではまだ死んでいなかっただけで、命に別条がなかったかどうかはよくわからないし、
その後どうなった(どうなる)と設定されているのかは定かではない。

**

ジャルジャルは、漫才(コント)とは全く違った顔を見せていた。
ちすん、どっかで見たはずと思ったら、「マーシャル博士の恐竜ランド」でアンナ・フリエルの吹き替えだった。

 

 

 運命のボタン 

キャメロン・ディアス、ジェームズ・マーズデン、フランク・ランジェラ。

**

冒頭に名前を出した3人だけ知っていれば十分です。

ある朝、ルイス夫妻の家に玄関のボタンが鳴らされ、箱が置いて行かれる。
中には木の箱に鍵付きの赤いボタンがついた不思議な箱、あるいはボタンと、後程説明に来るというメモ。

小さいころに事故で右足指を欠損、今は私立校の教師、ノーマ・ルイス(キャメロン・ディアス)。
息子を小学校に通わせているが、学費の職員ディスカウントが中止になったと知らされる。
ディスカウントがなければ、ルイス家に到底払える金額ではなかった。

旦那のアーサー・ルイス(ジェームズ・マーズデン)はNASAで火星探査機のカメラなどを設計している。
宇宙飛行士プログラムに応募、本人も周囲もそれなりの自信があったのに落選。
理由は心理試験に落ちたからということで、詳しい内容はわからない。

夕方5時、朝のメモ通りに紳士が訪ねてくる。
しかし、彼、アーリントン・スチュワード(フランク・ランジェラ)の左頬は欠損していた。

スチュワードは、例の赤いボタンの箱について、カギを出してこう語るのだった。
「このボタンを押すと、2つのことが起こります。」
「第1に、あなたの知らない誰かが、死にます。」
「第2に、100万ドルの現金が手に入ります。」

そして、スチュワードは100万ドルの入ったカバンを見せ、100ドル紙幣1枚を家に入れてくれたお礼にとノーマに渡す。
「時間は24時間、押しても押さなくても装置はリセットされ、新しい誰かのところへ届けられます。」と言って去る。

アーサーが帰宅し、箱を調べるが中は空。通信装置も何もなく、押したかどうかすらわからないと思えた。
お気楽なアーサーに対しノーマは悩む。
そしてついにノーマはボタンを押してしまう。

このころ、アーサーの同僚の一人の妻が射殺され、同僚が逃げるという事件が起こる。
どこにでもありそうな家庭内暴力に思えた事件。実は物語上意味のある事件ではあったが、、、。

翌日、スチュワードが100万ドルを渡しにやってきた。
アーサーは金を返そうとしたが、ボタンは押されてしまったとして受け付けず、ボタンを持ち去る。

このあと、ルイス夫妻の周りに奇妙なことが起こり始める。
アーサーは、スチュワードについて調べようとするが、周りから変なことばかり言われる。
そうこうするうち、例の同僚がアーサーを連れ出し、これはテストだといい、アーサーをどこかへ連れて行こうとするが、
途中に交通事故で死ぬ。

やがてノーマもさらわれて家に戻るが、そこでスチュワードによって究極の選択を迫られる。
曰く「あなたたちの息子は視力と聴力を失った。ノーマを生かせば息子は一生そのまま、ノーマを射殺すれば息子の障害は治る。
そして100万ドルは息子が成人した時に送られる。」
アーサーは逡巡ののち、ノーマを撃ち殺してしまうが、ちょうどルイス夫妻の知らない誰かの妻がボタンを押したところだった。
息子の障害は治るが、アーサーは警察に逮捕される。

スチュワードはまた別のテスト対象を探すのだった。

**

究極の選択、あなたはどちらを選ぶ「人の命か、金か。」
そして第2の究極の選択、どちらか一人しか助けられないとしたらあなたはどちらを選ぶ「妻か、子供か。」

テーマは意味不明。
何が言いたいのかわからない。
中盤からは展開も意味不明で、「フォーゴットン」と「ノウイング」を見たときの不可解感がよぎった。
未知の何者か(=謎の支配者)が、人類を破滅させるかどうかのテストをしているということのようだが、
何のために、何故こういう方法で、何故NASAや火星とつながるのかも全く意味不明で、宗教的な意味合いも感じられない。

大勢の手下を使っているけど、シンパではなく不可思議な力によるマインド・コントロールは良いとして、何故そうなのかは意味不明。

3連続で妻が押すというのも監督にとっては意味があるんだろうが、「女は欲深い」以外の意味が分からなかった。

大体、最初に出した条件が違うじゃんって感じでした。
おいしい話に連れられて店に入ったらぼったくられた、みたいな感じですね。

フランク・ランジェラは「フロスト×ニクソン」のニクソン。
あのニクソンはもっと太っていたように思ったが、役作りのためか。

 

 

 

 グリーン・ゾーン  

マット・デーモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン、エイミー・ライヤン。

**

2003年、アメリカ軍はイラクが大量破壊兵器を隠し持っていることを理由にイラク戦争を開始。
バクダッド市内に100平方キロ(10km四方)のグリーン・ゾーン(安全区域)を設営した。

ロイ・ミラー(マット・デーモン)は、部下を率いて大量破壊兵器(WMD)の探査に出かける毎日だった。

ある日は確実と言われる情報をもとに、狙撃者が狙い、米軍が確保できていない工場にまで侵入するが、そこは空っぽ。
何年も使われていない便器工場だった。

これで3度連続の偽情報。
情報の信ぴょう性に疑問を抱くミラーは、作戦会議でそのことを聞き、逆に上官に叱責されてしまう。

情報はイラク内部に精通する「マゼラン」という謎の人物によってもたらされ、
国防総省情報局のパウンドストーン(グレッグ・キニア)を通じて作戦展開される。

この情報はウォール・ストリート・ジャーナルのローリー・デイン(エイミー・ライアン)記者を通じて報道されていた。
デインは、情報の裏を取るため「マゼラン」との接触を試みるが、パウンドストーンはそれをかたくなに拒否する。

情報の信ぴょう性に疑問を抱くもう一人の男、CIAのマーティ・ブラウン(ブレンダン・グリーソン)は、
ミラーに近づき、何かの陰謀があると告げる。

ある日、情報に基づき道路を掘り返しているミラーの舞台に、イラク人の男、フレディが近づいてきて、
なにやら元のイラク高官らしき人たちが集まっていると告げる。

訝しがる部下の反対をよそにミラーは、その家に突入する。
現場で銃撃戦が行われ、何人かが逃走、その中の一人はアル・ラウイ将軍、例のお尋ね者トランプの一人だった。

アル・ラウイの逃走先を知るため、その家の主人を逮捕、持っていた手帳を奪う。
そこへ、パウンドストーンの部下が現れ、その男を連れ去ってしまう。

ミラーは咄嗟にその手帳を隠し、あとでブラウンに渡す。
そこには、アル・ラウイの隠れ家の一覧が書かれていた。

パウンドストーンは、大統領の許可を取って手帳をブラウンから取り返し、隠れ家を一つずつ捜索していく。

ミラーは、独自にマゼランの正体を探る。
ヨルダンがキーになっていると考えたミラーは、ブラウンにも情報を流し、アル・ラウイこそがマゼランであると確信する。
そして、アル・ラウイの情報を利用してパウンドストーンが偽情報を流していたと考える。

ミラーはアル・ラウイの一味の一人を助け、アル・ラウイとの接触を試みる。
ミラーもまたブラウンと同様、旧イラク軍の統率力や治安維持能力を利用したいと考えていた。

ミラーがまさにアル・ラウイと接触しようとする直前、ミラーの動きを察知したパウンドストーンは、
イラク軍の解体と旧イラク軍人の資格はく奪を宣言する。

これで政治的、軍事的「力」を喪失したアル・ラウイは、ミラーをとらえて殺害を指示、自身は逃走する。
ミラーは寸でのところで危機を回避、ついにアル・ラウイを追いつめて逮捕しようとした、その時、
フレディがアル・ラウイを射殺、イラクの未来はイラク人の手に、と叫ぶ。

ミラーは、WMDの存在が国防総省のねつ造であると報告書をまとめて各メディアに送りつけるのだった。

**

映画自体は迫力があって、おもしろかった。
GPS追尾などは特に珍しいとは思わないが、ヘリからの追跡では、個体識別だけでなく、敵味方識別もできることなど、
例の「ヘリからの民間人射殺事件」の動画との符合も感じられて、そら恐ろしいものがあった。

手持ちカメラでブレを多用した撮影方法で臨場感を演出、とされているが、多用しすぎで狙い通りとは思えない。
一人称カメラワークともいうべきこの方法は、「ボーン・シリーズ」や「トゥモロー・ワールド」などでは効果的だったが、
静と動の対比がより迫力をもたらすはずで、全編これではやり過ぎと思われる。

しかし、例えば横に走るシーンでは逃亡する人物はしっかり押さえられ、背景がぶれていたことや、
最初はブレを意識させるためかよりブレが強調されていたが、中盤以降はそれほどでもなかったように思えるなど、
カメラワークは実はよく計算されていたのではないかと思う。

映画とはいえ、ミラーの行動にはいろいろと問題が指摘されている。
軍の作戦行動中にCIAの指示に従って行動したり、命令以外の行動をとったりは、
そもそも彼らMETがどういう指揮命令系統にあるのかよくわからなかったから、まだいいとしても、
最後に国防総省の情報捏造を勝手にマスコミにリークすることは許されるんだろうか。

軍内部での告発は必要だとは思うが、レポートをいきなりマスコミに送ってしまったとしたら、
軍法会議ものでしょうし、逆に狂信的な一軍人の暴走として処理されかねないのではないだろうか。
軍内部での告発が期待できないとしても、自分の名は伏せてローリー・デインを使って情報を流す方が得策ではないのか。

そのあたりもアメリカで受けなかった理由の一つではないか。

 

 

 
 孤高のメス   

堤真一、夏川結衣、成宮寛貴、余貴美子、江本明、中越典子。

都心の病院で働く新米医師の中村弘平(成宮寛貴)は、母浪子(夏川結衣)の葬式に実家に戻ってきていた。
田舎町の市民病院の看護婦だった母は、勤務中に心筋梗塞で倒れ、帰らぬ人となったのだ。
田舎で働くから、とつぶやく弘平に、旧知の恩師、武井静(余貴美子)は、浪子は誇りを持っていたと告げるのだった。

弘平は浪子の遺品を整理するうち、1989年の日記を見つける。
そこには当時のさざなみ市民病院の様子が克明に描かれていた。

さざなみ市民病院は、京葉大学病院から医師の支援を受けていたが、野本六男(生瀬勝久)外科医長もその一人だった。
技術が伴わず、医療ミスを繰り返しては、京葉大学病院に送ったり、手遅れだったと言い逃れる日々で、
浪子たち看護婦や若手の医師もその様子を見て、仕事が嫌で堪らないという心境だった。

そんな病院に一人の医師がやってくる。
市長からの要請を受けた当麻鉄彦(堤真一)は病院についてすぐ、器具をぞんざいに扱う浪子に注意をし、
いきなり説教する嫌な奴と思われてしまう。

島田院長(平田満)室で、市長大田(柄本明)と事務長村上(矢島健一)との面会中、またも野本の診断ミスが明らかになる。
当麻は京葉病院に送る時間がないとして執刀を申し出、緊急に招集された医局員らとともに鮮やかに手術をやり遂げる。
浪子は初めて手術が美しいという感情を抱くのだった。

京葉大学に遠慮する事務長、職位や給与には無頓着な当麻、院長は第2外科を設け、当麻を医長に据えることにする。

その後も当麻のメス捌きは、見事の一言。
この病院でもそんな手術ができる、医局員たちの感嘆は、当麻への敬意と信頼へと変わっていく。

浪子もその一人。
テキストやビデオで手術の段取りや使用する用具、器具の手順を覚え、スムーズに当麻を手伝えることを目指す。

やがて、慶応大学病院にピッツバーグで当麻の良きライバルだった実川(松重豊)が赴任してくる。
生体肝移植を模索するということだった。

当麻赴任から1年が経とうとした頃。
1年前に野本が手術した魚屋の主人が死亡する。
がんの摘出に手を焼き、完全に取り出さないまま手術を終えたため、転移して手遅れとなったのだ。
事実を知らない患者家族に対する負い目から、野本と衝突した青木(吉沢悠)は病院を去るが、
当麻の紹介でピッツバーグに留学することとなった。

暫くして大きな事件が二つ起こる。
一つは病院の大きな後ろ盾でもあった大田市長が議場で倒れ入院してくるが、末期の肝硬変で余命いくばくもない状態だった。
助かる方法は肝移植のみだが、当時まだ国内での成功事例はなかった。

もう一つは、武井の息子で幼い頃の弘平の面倒をよく見てくれた誠が、福祉関係の仕事に就く寸前、トラックにはねられたのだ。
ほどなくして誠は脳死状態となり、回復の見込みは完全に絶たれる。

当麻は一旦は大田市長の生体肝移植を決断するが、親戚で唯一適合する肝臓を持つ娘の翔子(中越典子)の肝臓では小さすぎ、
結局断念せざるを得ないこととなる。

そこへ、武井が息子誠の臓器提供を申し出る。
当時まだ法的に許されない脳死肝移植。

しかし、当麻はそれを決断する。
事務長は違法行為だとして止めにかかり、野本にも協力を依頼する。
しかし、野本はマスコミ各社に殺人行為だとタレこみを行い、病院は騒然となる。

そして、手術当日。
誠の体から肝臓が取れだされ、大田の体から取り出した肝臓の代わりに入れられる。
血の気の抜けた肝臓に大田の血が流れ込み、赤みが差す。
12時間にも及ぶ手術は成功。

当麻は警察の調べを受け、脳死判定を完璧におこなっていること、手術が武井のたっての希望によるもの、などから
刑事訴追は免れるものの退職に追い込まれる。

そして別れの日。
涙ながらに別れを告げる浪子に当麻は「君は最高のナースでした。」と告げて去る。

田舎町、弘平がかつての当麻のように大きいトランク一つで駅に降り立ち、とある病院へとやってくる。
若い医師がやってきたことで浮足立つ看護婦たちをよそに、院長室でファイルや、あの別れの日の写真を見つけた弘平。

今も当麻は病人を助けるために粉骨砕身しているのだった。

**

手術シーンは素晴らしい。
順天堂大学の現役医師が全面的にバックアップしたと聞くが、細かい部分にも「本物らしさ」が漂い、手際の良さが際立つ。

しかも、必要以上にきわどいシーンは見せていないところも好感だ。
何よりこの映画の主題は人間ドラマであって、手術マニュアルではないのだから。

医師としての当麻は素晴らしい。
金や名誉には目もくれず、ただ患者の命を救うために努力を惜しまない。
しかも、技術は超一流で、裏表のない性格と来た。
自分がもし病気で手術になったら、是非執刀医をお願いしたいと思うほどだ。

しかし、映画を離れて当麻を一人の人間として見た場合はどうなのか。
患者やその家族の気持ちは理解しても、普通の人の心は察することができない。
いわゆる仕事バカであるし、ワーカホリックでもある。

医師としてはそれでいいのかもしれないが、医師という肩書を脱ぎ捨てた途端、何もなくなってしまうような気がした。

 

 

 
 劇場版TRICK 超能力者バトルロイヤル  

自称天才マジシャン、山田奈緒子(仲間由紀恵)と自称天才物理学者、上田次郎(阿部寛)が、超常現象の謎に挑む。

**

相変わらず売れないマジシャンの山田奈緒子。
てじなーにゃの山上兄弟(大きくなってどちらが兄か区別がつかない)とは比べるべくもない。
興行主(河本準一)から万練村(まんねりむら)で行われる霊能力者カミハエーリの募集に応募することを勧められる。

一方、天才物理学者、上田次郎の下には、彼の著書を読んだという万練村の先代カミハエーリの孫、中森翔平(佐藤健)が訪れ、
超能力者のインチキを暴いてほしいと申し出る。
村では自分も超能力者とされているが、実は先代カミハエーリの祖母から習った手品を見せていたにすぎないという。
上田は翔平の依頼を引き受ける。

上田と山田はお互いが万練村を目指していることを知らない。
山田は万練村に向かうバスの中で、怪しい男に出会う。
男は鈴木玲一郎(松平健)でバスの中で突然倒れた男に腕をかざして助けてしまう。

万練村はバスの終点から徒歩1時間以上かかる。
ようやく到着した山田は、鈴木が1時間ほど前に到着したことを知る。

さて、カミハエーリの選考会は、崖の上。
応募してきた霊能力者は翔平を含めて6人。

神と交信し、90日間祈り続けて雨を降らせたという相沢天海(戸田恵子)は、変身(金髪美女との入れ代わり)を見せる。
百年後が予測できるという杉尾園子(片瀬那奈)は、トランプを使った預言を見せるが、山田にマジックだと見透かされる。
絶対死なない男で今まで死んだことがないという伏見達郎(藤木直人)は、鉄球を体の上に落してみせるが、これも見透かされる。

山田は、村の財宝をだしに上田とぐるになって丸い棺桶からの脱出劇を見せる。

翔平は高階美代子(夏帆)を四角い棺桶に入れて崖から投げ落とし、崖上に登場させるという瞬間移動を見せる。
鈴木は、伏見を小屋に閉じ込めて呪い殺すと言い、瞬間移動させてしまうが、伏見は崖下でバラバラで発見される。

続いては天海が、虫一匹入らないはずの離れで毒蛇にかまれて死ぬ。

鈴木は「霊能力者バトルロイヤル」を宣言、逃げ出そうとした杉尾が何者かに撲殺される。

翔平はこれ以上殺害が起こるのを見ていられなくなり、霊能力者でないと自白、村から追い出される。
村のはずれで、翔平は死んだはずの伏見と出会い、殺されそうになるが、伏見は突然倒れて死ぬ。

鈴木は山田にタイマンを挑み、伏見をとしこめた小屋に山田を閉じ込めて火を放つ。
駆けつける上田の目の前で小屋は爆発。
鈴木は勝利したとしてカミハエーリに就任する。

しかし、山田は死んでいなかった。小屋の謎を解いて脱出したのだった。
山田と上田は今までの奇跡の謎を解いていく。
美代子と実は双子の加代子が双子トリックで棺桶脱出を装い、翔平を独占するために美代子を殺したこともわかる。
加代子も罪の意識から投身自殺する。

鈴木はかつて大学で研究していたころ、本物の霊能力者である松宮佐和子(三浦理恵子)を世間の誹謗でなくしており、
本物の霊能力者を探し、偽者を排除していたのだ。

鈴木は村人とともに山田、上田を火攻めにして逃げる。
山田は冒頭に出てきた江戸時代の夢を思い出し、そこから脱出、確認に来た鈴木に種を明かす。
そこへ翔平が来て、鈴木を襲い、鈴木は怪我を押して立ち去っていくが村はずれで息絶える。

このほか、毎度おなじみの奈緒子の母、里見(野際陽子)、他に矢部謙三(生瀬勝久)と秋葉原人(池田鉄洋)なども登場。
サイドストーリーを盛り上げる。

ともかくばからしくも面白い。
ボケておきながら、観客に突っ込ませず、自分で(他のキャストが)突っ込む。
わざとらしくはあるが台詞で笑わせる部分も多く、お気楽に見ることができる。

 

 

  9<ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜   

ある研究室。一人の男性が麻布で人形を縫い上げている。
お腹には大きなジッパー、背中には「9」の文字。

その人形が目を覚ますと、世界は荒廃していた。

人形は自分が取り付けられていた器具から落ちたボタン装置のようなものを腹に入れる。
外に自分と同じような人形が歩いているのを見つける。
その人形には「2」とあった。
「2」は「9」の発声装置を修理し「9」の持っていたボタン装置に感激するが、そこへ機械獣が現れ「2」とボタン装置を連れ去る。
「9」は片目の「5」に発見され「1」のところへ連れて行かれる。
教会の塔の中には「1」「3」「4」「5」「6」「8」が住んでいた。
「5」とともに監視台に登った「9」は、遠くに見える工場に「2」が連れて行かれたといい、助けに行こうとする。

「1」の反対を押し切り「9」は「5」と工場に向かう。
二人はケージに閉じ込められた「2」を助けようとするが、機械獣の攻撃に危ういところへ「7」が現れて機械獣を倒す。

「9」は自分が持っていたボタン装置を見つけ、そこにあった機械にはめ込んでしまう。
すると機械は動きだし、ボタン装置の部分が怪しく輝いて「2」の精気を抜き取り「2」はただの布切れと化す。

「5」「7」「9」は教会に戻るが「1」の叱責を受け、一同に不協和音が起こる。
機械を作動させたボタン装置は「6」が書いていた図形そのものであり、それをもとに「2」が探していたこともわかる。

機械は、工場全体を稼働させ、自ら別の攻撃機械を作り上げ、人形たちを探させる。
「1」は逃げることばかり主張、対決しようとする「9」と対立する。

結局教会を追われた一行は工場に向かい「9」と「7」が工場に潜入、「3」「4」「6」らがドラム缶爆弾で攻撃して破壊する。

工場とともに敵を殲滅したと喜びに浸る一行。
しかし、機械は生きていた。
炎の中から現れて「6」の精気を抜く。
(順序は忘れたが、「5」「8」もやられる)

すべての鍵が自分の生まれた研究室にあると見た「9」は研究室に戻り、博士の遺言ムービーを発見する。
そこには、あの機械=マシンは自分が発明したもので、軍部に利用されて暴走、人類に反旗を翻したことなどが語られる。
そしてあの装置で、マシンを停止させることができると語られていた。

「9」は意を決し、マシン停止のために対決しようとする。
そして、精気を抜かれそうになるが寸でのところで「1」が犠牲となり、その隙に「9」はボタン装置を抜き取り、マシンを破壊する。

「9」はボタン装置から「1」「2」「5」「6」「8」の魂を解放し、彼らの魂は天に召される。
残された「9」や「7」たちに新しい世界は託される。

**

「1」:教祖。声、クリストファー・プラマー。「Dr.パルナサスの鏡」のDr.パルナサス。
「2」:発明家。声、マーチン・ランドー。TV版「スパイ大作戦」初期のころの変装の名人、ローラン・ハンド。
「3」「4」:双子の記録係。発声機能はない。
「5」:片目のエンジニア。声、ジョン・C・ライリー。「ダレン・シャン」のバンパイア、クリスプリー。
「6」:図形を描いている芸術家。声、クリスピン・グローバー。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のお父さん。
「7」:鳥の兜をかぶった戦士。声、ジェニファー・コネリー。「ブラッド・ダイヤモンド」の女性ジャーナリスト、ボウエン。
「8」:大柄な用心棒。声、フレッド・タタショー。
「9」:最後の人形。声、イライジャ・ウッド。「LTOR」シリーズのフロド。

**

監督、シェーン・アッカー。製作、ティム・バートン。

ラストにやや不満とか、掘り下げが少ないとの意見もあるようだが、私は大変気に入った。

何より映像がもう素晴らしいの一語に尽きる。
館がDLPデジタルシネマだったからかもしれないが、CGの域を超えていると思った。
また、このままでも十分に奥行き感はあるが、縦方向の躍動感に、これこそ3Dにすべきではないか、と思えた。

世界観、人形の造形も独特でとてもよかった。
布の体にレンズの目。表情も感情も感じられるし、「死んだ」人形との差も際立つ。
短いセリフの連続でここまで表現できたのはすごいとしか言いようがない。

惜しむらくは上映館が少ないこと。

 

 

 ウルフマン  

ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント、ヒューゴ・ウィービング

***

1891年、イギリスの片田舎。ランプを手に夜の森を行く男。
「姿を見せろ、いるのはわかっているぞ」しかし、男は突然現れた何物かによって惨殺される。

男の名はベン・タルボット。
婚約者でタルボットの屋敷に泊まっていたグェン(エミリー・ブラント)は、
ベンの弟で舞台俳優のローレンス(ベニチオ・デル・トロ)に手紙を書き何が起こったのか調べてほしいと頼む。

ローレンスは、父、ジョン・タルボット卿(アンソニー・ホプキンス)とは疎遠で、
今はアメリカに住んでいるが、ロンドン公演で渡英していた。

久しぶりにタルボット城(大邸宅)を訪れたローレンスは、失意のグェンに代わり、村の遺体安置所でベンの遺体を確認、
それは見るもおぞましい姿になっていた。

最近、村人が何物かに惨殺される事件が頻発していた。
ジプシーの飼っている熊の仕業だ、いや変質者だ、魔物だと村人の噂は絶えない。

事件の調査にはロンドンからアバライン警部(ヒューゴ・ウィービング)もやってくる。
警部はかつて精神病院に入院していたこともあるローレンスに疑いの目を向ける。

ローレンスはグェンをロンドンに返し、さらに調査を進める。
屋敷では執事のシンが魔物に備え、銀弾を用意していた。
かつての子供部屋では、兄との会話、愛する母が自殺した現場に遭遇したことなどを思い出す。

ローレンスは、ジョンが持っていたコインがジプシーの売り物であることを知り、
父の忠告を無視して次の満月の夜、ジプシーのキャンプを訪れる。

コインを売ったのは占い師、マレーバ(ジェラルディン・チャップリン)。
ローレンスが話を聞いていると、ジプシーの熊が怪しいと見た村人たちがキャンプに殴りこんでくる。
押し問答のその時、何かが村人に襲いかかり惨殺、キャンプは大パニックとなって大勢が死ぬ。

ローレンスは銃を持ってその何か=殺人鬼を追うが見失い、逆に待ち伏せされて噛みつかれる。
追ってきた村人に助けられ、一命は取り留めたローレンス。
マレーバは魔物に噛まれたものは魔物になるので死なせてしまえというが、結局治療する。

傷ついたローレンスを看病するのはロンドンから再び城にやってきたグェンだった。
医師も訝しがるほど思いのほか早く傷が癒えたローレンスだったが、村人は逆に悪魔憑きの疑いを持つ。
ローレンスは自身の変化を感じ、グェンをロンドンへ帰す。

やがて傷が完全に治った次の満月の夜、ローレンスが見たものは、母の廟に入る父だった。
父はその中に閉じこもり、ローレンスを外へ追いやる。
果たして、満月の明かりを受けて狼男に変身したローレンスは、村を襲い多くの村人を惨殺するのだった。
翌朝、血まみれの服のまま寝入っていたローレンスは、父に起こされ、アバライン警部に逮捕される。

ローレンスはかつて入院したことのあるロンドンの精神病院に送られ、拷問治療を受ける。
狼化妄想癖、これが診断であった。

医師は、ローレンスの変貌が妄想であることを証明するため、わざわざ満月の夜に会議を開き、ローレンスを月光に晒す。
果たしてローレンスは狼へと変貌し、議場は大パニック。
ローレンスは多くの人を殺して逃げ、追うアバライン警部を振り切る。

ローレンスはグェンの骨董屋に隠れる。グェンはアバライン警部には嘘をつき、ローレンスを逃がす。

グェンは文献などを調べ、マレーバの行方を突き止めて、狼化の治療法を聞こうとするが、ないと言われる。

やがて、タルボット城にたどり着いたローレンス。
そこで見たものは、シンの惨殺死体。
ローレンスはシンの持っていた銀弾を銃に込めて父を探す。

そして、父から衝撃の事実が明かされる。
父も狼化病にかかり、満月の夜はシンによって廟に閉じ込められていたこと。
カギをかけ忘れた満月の世に変身し、妻=ローレンスの母をかみ殺してしまったことこと。
ベンが結婚で城から出ていくのを阻止するために殺してしまったこと。

そして、ローレンスは父に殺された哀れな母の姿を思い出し、引き金を引くが、火薬は抜かれていた。
父と子、狼に変身した者同志のすさまじい戦いは、ついにローレンスがジョンを倒すが、
ローレンスは屋敷に助けに来たグェンまでもを襲おうとする。

アバライン警部一行もローレンスを逮捕に向かい、追走劇の末、グエンは自分を殺そうとするローレンスを銀弾で撃ちぬく。

死が近づき、人間に戻るローレンス。
傍らではローレンスに噛まれたアバライン警部がローレンスの死を見届けるのだった。

**

1941年の同名映画のリメーク。

変身ぶりは面白いがストーリーには、特に意外性がなく、正統派の古典的ホラーといった感じ。
音楽の使い方も「出ますよ、出ますよ」と煽るやり方で、ある意味わかりやすい。

ベニチオ・デル・トロの苦悩はよく表されていたようだが、アンソニー・ホプキンスの苦悩はあまり感じられない。
父の息子に対する感情があんなものでいいのかは、ちょっと不思議だった。

狼男。

狼はWOLFであり、原題も「Wolfman」であるが、「Lycanthrope」(ライカンスロープ)という言い方もあるらしい。
エミリー・ブラントが調べる本の中にも記述があった。
ライカン、そう「アンダーワールド」などに出てくるライカン族である。

 

 

 タイタンの戦い   

サム・ワーシントン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、ピート・ポスルスウェイト。

**

漁師のスピロス(ピート・ポスルスウェイト)は、海で棺を拾い上げ、中にいた赤ん坊を助ける。
ちなみに一緒にいた母親と思われる美女はすでに死亡。

やがて、赤ん坊はペルセウスと名付けられ、スピロスの子として育てられる。
20年後、人々の信仰心は薄れ、不作は続きスピロスでさえ、このままではいつかだれかが立ち上がるだろうという時代。
ある日海岸近くを行くスピロスの船から、崖の上のゼウス像が倒されるのが見える。
信仰心を失い、奢ったアルゴスの兵士が像を壊したのだ。

途端に海中から冥界の神ハデス(レイフ・ファインズ)の部下の怪鳥が現れ、あっという間に兵士全員を殺害する。
続いて現れたハデスはスピロスの船も破壊、海中に没したスピロスはペルセウスの救助空しく海中に没してしまう。

ペルセウスはアルゴス兵に助けられてアルゴスへ行く。
アルゴスではケフェウス国王とカシオペア王妃主催の酒宴の最中だった。
奢り高ぶり、神への蔑みの言葉を吐くカシオペアの前にハデスが現れ、カシオペアの若さを吸い取り、
王女アンドロメダ(アレクサ・ダヴァロス)を生贄にしなければ、クラーケンによってアルゴスを滅ぼすと言い残して去る。

アルゴス兵のリーダー、ドラコ(マッツ・ミケルセン)は、クラーケンを倒すため隊を編成し、ペルセウスも入れる。
この時点でペルセウスはすでにデミゴット(半神半人)であることがわかっている。(本人は否定)

一方、オリンポスでは、ゼウス(リーアム・ニーソン)をはじめとする12神会議が行われていた。
そこへハデスが現れ、人々の信仰を取り戻すのは慈愛ではなく畏怖だとして、人々に恐怖を与える許可を取り付ける。

ペルセウスの一行は、クラーケンの弱点を探るため、3人の魔女の住む地獄山に向かうが、
ハデスの手下のカリボス(ジェイソン・フレミング)に襲われる。

カリボスは元アルゴス王のアクリシオスで王妃をゼウスに寝取られ、ペルセウスを孕まされたことに立腹して、
王妃と赤ん坊のペルセウスを棺桶に入れて海に捨て、ゼウスの怒りをかって、姿を変えられてしまったもの。

カリボスの切り落とされた手首や血は巨大サソリとなってペルセウスたちに襲いかかる。
一部の兵を失いながらもサソリを倒すが、さらに多くのサソリが現れ絶体絶命となったとき、
砂漠の民ジン族が現れ、呪文でサソリを操る。
サソリを馬代わりに一行は地獄山に向かう。

一行には、ペルセウスの守護神を名乗るイオ(ジェマ・アータートン)も同行する。
地獄山の魔女は、クラーケンを倒すのはメデューサの眼力以外にはないと告げるが、同時にペルセウスの死も予言する。

ペルセウスは当初ゼウスの助力を拒否していたが、カリボスを倒す際に剣を受け取り、ゼウスから直接金貨を受け取る。
メデューサの城は、三途の川の向こう岸。ゼウスの金貨は渡船の渡し賃。
メデューサ(ナタリア・ヴォディアノヴァ)は、髪の毛が蛇で下半身も蛇。
弓の使い手で眼力で見るものを石にしてしまう。

大勢の仲間を失いながらもペルセウスはついにメデューサの首を切り落とす。

アルゴスでは、ハデスの襲撃に恐れをなした人々が反乱を起こし、アンドロメダを生贄にするため、吊し上げる。

ペルセウスはペガサスに乗ってアルゴスへ急ぐ。
やがて、ゼウスの許可を得てハデスはクラーケンを解き放ち、クラーケンがアルゴス、そしてアンドロメダに迫る。

ペルセウスがアルゴスに近づいたとき、ハデスの部下がメデューサの首を奪い、追いつ追われつの末、
ペルセウスは首を取り返してクラーケンを石にする。
そして怒り狂ったハデスと戦い、ゼウスの剣と雷を利用してハデスを冥府に閉じ込める。

平和が戻ったアルゴス。
ゼウスはペルセウスに神の一員になることを進めるがペルセウスは人間の道を選ぶ。
ゼウスは途中で死んだはずのイオを復活させペルセウスの伴侶とした。

***

この映画のタイトルにもなっていて、ゼウスらの父、クロノスの一族である巨神「タイタン」は出てこない。
時系列的には、ゼウスがタイタンを滅ぼして神々の王に君臨してから後のことになる。

本作では、ペルセウスをゼウスとアクリシオスの妻との間にできた子としているが、
神話では、ペルセウスの母はアクリシオスの娘ダナエであり、アクリシオスは不倫を怒ったわけではなく、
ペルセウスが自分を殺すと予言されたため、ダナエを隠していたが、ゼウスに忍び込まれた。

アクリシオスは自分を殺すとされたペルセウスを殺そうとしたができず、ダナエとともに流し、セリポス島のディクチュスに救われる。

映画では、メデューサの姿を映す盾をサソリの殻で作っているが、神話ではアテナにもらった盾になっている。

また、神話ではペルセウスの妻はアルゴスの王女アンドロメダ。
映画で妻になるイオは、神話ではゼウスの妻のヘーラーに使える女官だったが、ゼウスの浮気相手となってヘーラーに追われ、
のちに許されてエジプト王の妻となる。

ペルセウスは、Perseusとつづり、英語ではパーシアスと発音する。
そう、パーシーが耳に残り、そこここで「パーシー・ジャクソン」が頭をよぎってしまった。
3Dは迫力があるがもともと3Dとして撮影していないため、一部に不自然に見える部分があったり、
せっかくの3Dが生きてこないシーンもあった。

とはいえ、大作の3D化はもはや戻れない「流れ」であろう。
「3Dであることの是非」を議論することはある意味無駄かもしれない。

 

 

 必死剣鳥刺し    

豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、岸部一徳。

***

冒頭は、藩主が側室の連子とともに、能を見ているシーン。
兼見三左衛門(豊川悦司)は家臣の一人。

やがて能が終わり、藩主は側室らとともに退出する。
深々と藩主を見送った兼見は、にわかに側室の前に立ちふさがり、小刀で胸を一突き、側室を絶命させる。
観客にはその理由もわからないままに、兼見三左衛門は取り押さえられる。

当然ながら、斬首覚悟の兼見三左衛門。
しかし、下された沙汰は「禄高を減じ、蟄居1年」という軽いものであった。

これには藩主の意向というよりも家老の一人、津田民部(岸部一徳)の強い意見が通ったものだった。

禄高を減じられたことで使用人のほとんどに暇を出し、門を閉じ、作法に従い自ら倉で謹慎する三左衛門。
世話をするのは三左衛門の亡き妻の姪、里尾(池脇千鶴)。

書を読み、像を彫る三左衛門。
回想シーンとして、三左衛門が殺害した側室連子の無理難題ぶりが少しずつ明かされる。
財政難をないがしろにして、贅沢やわがままを押し通し、藩政にも口を出す。
そのために詰め腹を切らされた者までいた。

一方、病に倒れた妻を最後まで愛し、出戻りの姪を温かく養っていた三左衛門の人情も明らかになる。

1年が過ぎ、閉門は解かれるが、それでも三左衛門は親戚などの来訪を断り、
藩内を見て回ることはあっても派手な行動は慎んでいた。

側室の横暴に怒りを覚えていたのは、藩士だけではなかった。
ご別家と呼ばれる帯屋隼人正(吉川晃司)もその一人。
藩主に遠慮して何も言えない家臣とは違い、正面切って側室や藩主に意見できる只一人の人物でもあった。

さらに2年が過ぎ、三左衛門は近習頭取(きんじゅうとうどり、藩主の傍につく警護役の筆頭)に取り立てられる。
役目は無難にこなし、藩主もそれは評価するものの、やはり側室の仇として嫌われたままの日々が続く。

ある日、家老の津田は三左衛門を呼び、三左衛門が剣術の達人であるからこそ近習頭取に選ばれたと告げる。
藩主の命を狙うものがいる、そしてそれはご別家の帯屋だというのだ。

津田は剣の達人である帯屋と立ち会えるのは、三左衛門以外にはいないと言う。
そして、秘伝の「鳥刺し」について尋ねるのだった。
それは三左衛門自身が編み出した剣法で「必死剣」とも言われる。
なぜ「必死剣」なのか尋ねる津田に対し、三左衛門はその剣を使うときは半ば死んでいるから、と答えるのだった。

三左衛門は、近習頭取の役目が危険であると認識しており、自分が何かあったときのためにと里尾に縁談を持ちかける。
里尾を気に入ってくれる男性が現れたが、里尾はそれを拒否、三左衛門と関係を結んでしまう。
三左衛門は世間体を気にして、里尾を田舎の知り合いに預ける。

そんな頃、藩財政ひっ迫によって年貢の改定が行われ、帯屋の領地の農民たちの年貢が大幅に引き上げられる。
直訴を迫る農民に対し、何とか矛先を収めさせ、藩主に申し入れる約束をした帯屋。
しかし、その思いもむなしく、騒動の発端となった農民たちは斬首獄門となってしまった。

怒り狂い、帯刀の上、藩主に直談判しようとする帯屋。
ただならぬ雰囲気に藩主を退避させ、帯屋の前に立ちふさがる三左衛門。
互いに一歩も引かぬ帯屋と三左衛門、ついには二人の対決となる。

三左衛門は左手に切り傷を負いながらも帯屋と対等に立ちまわり、ついには小太刀の切っ先で相手の鍔を返して帯屋を倒す。

控えていた家臣とともに藩主と津田が登場。
津田は「鳥刺し、見事であった」と三左衛門を讃え、三左衛門が「いえ、あれは」と言いかけた瞬間、
津田は「兼見三左衛門が乱心、隼人正様を殺害した。藩主命により切り捨てよ。」と叫ぶのだった。
そう、すべては津田の謀略だった。
側室連子の恨みと、目の上のこぶである帯屋の始末を同時に果たし、大知行の帯屋家を取り潰して藩財政を立て直す、
三左衛門はそのために利用されたのだ。

いくら三左衛門が剣の達人とはいえ、もとより多勢に無勢。
何人かは切り殺したものの、深手を負い、津田に迫ること叶わず、三左衛門は床に突っ伏してしまう。

脈を確認し「息絶えております」と話す部下の声で、津田は三左衛門に近づき、
「これもすべて藩のため」と語りかけたその時、
三左衛門は最後の力で、津田の胸を一刺し、致命傷を与える。
さらに太刀を浴びた三左衛門は本当に死んでしまう。

里尾は三左衛門の死去も知らず、赤ん坊を抱いて三左衛門が迎えに来るのを待っているのだった。

**

最後の立ち回りは見事で、そこにクライマックスを持っていくため前半は静かに進行する。
むしろ淡々としすぎているくらい。

しかし、冒頭の能のシーンはだれる。
理由も背景も何も語られないまま突然事件が起こるのだが、そこに緊迫感がない。
藩主の側室寵愛ぶりもあまりよくわからないし、家臣のわだかまりも違和感も感じられず、
何となく事件になったという感じだ。

つかみの部分なのだからテンポよく進行し、観客がだれる前に突然何かが起こるほうがインパクトがあるし、
その後は淡々と進み、いったい何があったのか、じっくりと見せるという変化があればもっと良かった。

死からラストシーンまでの時間経過が不明だが、数か月経っている感じがして、ラストはやや違和感だった。
(あれが死の直後なら、逆に子供の出生の話が三左衛門に届いているはずだが、そのそぶりはなかった)
死を知らないとするのではなく、観客には知っているのか知らないのかわからないようにするほうがよかったのではないか。

豊悦は公称186cm、かなりの大柄であるが、原作の三左衛門も大男として描かれているそうだ。
本編でも「大きい男だな」みたいな台詞が出てくる。
侍役はあまりないらしいが、「椿三十郎」の室田半兵衛(黒沢版では仲代達也)が印象に深い。

**

所作(しょさ)や武家用語に詳しいわけではないので、聞き間違いかもしれないが、最初の刑罰は閉門ではなく蟄居。

刑罰としてはかなり重い部類に入るようだが、当然斬首や切腹よりは軽い。
閉門は門を閉ざし出入り禁止は蟄居と同じだが、屋敷の中は基本自由。
蟄居はさらに屋敷内の一室にての謹慎を伴うものとのこと。

「鳥刺し」は、必殺剣の呼び名としてはかなり違和感があるが、そこは藤沢周平流といったところか。
「鷹の爪」とよく間違われる「隠し剣鬼の爪」も藤沢周平作品である。

 

 

 アリス・イン・ワンダーランド  

ティム・バートン監督、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム・カーター、アン・ハザウェイ、ミア・ワシコウスカ。

***

「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」から13年。
19歳になったアリス(ミア・ワシコウスカ)は、いまだに夢見る少女。
と言っても恋に恋するといった「夢見る」ではなく、かつての不思議の国の奇妙な出来事を断片的に悪夢としてみるのだ。

ある日、アリスは母とともにアスコット卿のガーデン・パーティに出かけた。
アリスのキングスレー家は、亡き父の事業(会社)を買ってくれたことでアスコット家に恩義を感じている。
アリスはそこでアスコット家の息子、ハーミッシュ(レオ・ビル)に求婚されることになっていた。
パーティはアリスとハーミッシュの婚約パーティだったのだが、知らないのはアリスだけだった。

やがて、ハーミッシュは、東屋でアリスの前でひざまずき「私の妻になってくれ」と求婚するが、
アリスは誘うように振る舞う白ウサギが気になり、「時間が必要だわ。」と答えてウサギを追う。

ウサギは木の株の穴に隠れるが、それを覗き込んだアリスは手を滑らせて穴に落ちてしまう。

落ちた所はドアに囲まれた部屋。
ドリンクやケーキで大きくなったり小さくなったりして、小さいドアをくぐるとそこは不思議の国だった。

服を着て喋るヤマネやウサギや、双子のトウィドルディー、トウィドルダムなど。
みんなはアリスが「あのアリス」かどうかを調べるため、青い芋虫(声:アラン・リックマン)のところへ連れて行く。
ワンダーランドのすべてを記した預言書ではアリスが赤の女王のドラゴン、ジャバワッキーを倒し、
アンダーランドに平和をもたらすとあった。
しかし、芋虫のアブソレムは、アリスは「ほとんど別人」と言い放つ。

一方、その時不思議の国を支配していたのは赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)。
ステイン(クリスピン・グローバー)はアリスが舞い戻ったことを感じ取り、犬(ベイヤード、声:ティモシー・スポール)と
猫化けのようなバンダースナッチでアリスを探す。

アリスは夢だと思い、バンダースナッチに立ち向かい、腕を引っかかれるが、ヤマネが目を抜いてバンダースナッチを追い払う。
その後、アリスはチェシャ猫に導かれてマッド・ハッター(帽子屋、ジョニー・デップ)のところへ行く。
マッドハッターは、アリスをステインから隠し、赤の女王の悪行を説明するが、
ステインに見つかり、アリスを、白の女王のところへ行けと言い、帽子に乗せて川向うへ投げる。

マッド・ハッターはステインにつかまり、赤の女王の城に連れて行かれる。
ベイヤードは赤の女王に仕えるふりをしていたが、実は白の女王の味方だった。
預言に従ってアリスを白の女王の城に連れて行こうとしたが、アリスはマッド・ハッターを助けに赤の女王の城に向かう。
そして茂みに隠れ、白ウサギからケーキをもらって大きくなり、赤の女王に見つかるが大顔が気に入られて助けられる。

やがて、アリスはジャバワッキーを倒すという、ヴォーパル・ソードがバンダースナッチの小屋に隠されていることを発見、
ヤマネから目を取り返してバンダースナッチに返す。
これでバンダースナッチはアリスに心を開き、ヴォーパル・ソードを取ったアリスを乗せて白の女王の下へ走る。

白の女王(アン・ハザウェイ)に会って普通サイズに戻ったアリス。
白の女王は赤の女王との対決を決意する。
しかし、アリスは「別のアリス」だとして戦いに臨むことができない。
今まさに蛹になろうとしているアブソレムは悩むアリスにかつてアリスがここに来た時のことを話し、アリスはそれを思い出す。
そして、意を決して、赤の女王との対決に臨む。

双方、代表選手を出しての戦い。白の女王はアリス、赤の女王はジャバワッキー。
壮絶な戦いは、全トランプの兵士を巻き込んでの戦いになる。
そして、アリスはついにジャバワッキーの首をはねる。
勝負は決した。
トランプ兵は、戦いをやめ、赤の女王は孤立する。

白の女王は赤の女王とステインを鎖でつなぎ、追放する。
そしてジャバワッキーの血でアリスをもとの世界に返す。

アリスは再びガーデン・パーティに戻り、やり残したことに片を付ける。
それはすなわち、ハーミッシュの申し出を断ること、アスコット卿にビジネスの新提言をすることだった。
そしてアスコット卿はその提言を受けて中国貿易を決意する。

最後にアリスを見送るのは、かつてアブソレムだったかもしれない青い蝶。
アリスは蝶に別れを告げ、ワンダー号に乗って中国への渡航に乗り出すのだった。

***

登場するキャラは原作通りだが、ストーリーはティム・バートン・オリジナル。
本編で散々勿体ぶって登場するキャラや、ラストに近い重要なシーンが、予告であっさり使われることが多いが、
この予告はよくできていて、ストーリー展開を損ねないで、且つ肝心の部分は見せないようになっている。

青虫のアラン・リックマンはすぐわかったが、犬がティモシー・スポール、白ウサギがマイケル・シーンなどはわからなかった。

原作からして、ダジャレが多い。
この映画でもダジャレの類が多用されているはずだが、「Goodbye sweet hat.」くらいしかわからなかった。
英語能力の非力さが情けない。

 

 

 プランゼット     

粟津順監督、宮野真守、石原夏織、フルCGアニメーション

**

2053年、突如地球に近づいてきた小惑星は宇宙人の基地、まるでスター・ウォーズのデススターのような存在だった。
そこから排出された円盤が地球に飛来して攻撃、人類は人口の大半を失い、一部は火星に避難した。

地球人は、このデススター・ライクな基地を持つ宇宙人をFOSと呼び、攻撃を仕掛けるが、あらゆる攻撃は失敗に終わり、
わずかに残された兵士たちがシールドに覆われた地球を守っているような状態だった。

日本方面軍富士基地も数少ない残された地球軍の基地。
兵士(パイロット)はわずかに3名。
田崎剣大尉(声:津田健次郎)、明島大志(声:宮野真守)、佐河佳織(声:寺崎裕香)

明島は10年前、父、孝志郎(岩崎征実)をFOSとの戦いで失い、自身は軍に志願、10歳下の妹を軍の中学校に通わせていた。

ある日、ロシア方面隊がFOSによって壊滅させられ、基地司令の吉澤ユウラ少佐(声:竹内順子)は、
現在かろうじてFOSからの攻撃を守っているシールドのパワーをFOSの本拠(これがいわゆるデススター)を破壊する作戦に出た。

それがプランゼットである。
ゼット、つまりこの作戦は最終作戦を意味する。

そしてシールドを解除して、攻撃にエネルギーを蓄積するための間、基地を守ることを兵士に命令したのだ。
その夜、明島は許可を得て外出し、妹こよみ(声:石原夏織)に火星に逃げる様指示する。

翌日朝9時、プランゼットは開始された。

火星に行くはずの妹を迎えに行った友人から、妹がいないという心配な連絡が明島に入る。
しかし、明島らにはそれにかまっている暇はない。

シールドが解除されるやそれを感知したFOSは、デススターから攻撃型円盤を放出した。
田崎、明島、佐河はモビルスーツに乗り込み敵を迎え撃つ。

敵円盤を撃破しつつも多勢に無勢、ついに佐河は撃墜され、田崎は富士基地を守るため、母船に突っ込んで自爆。
2人の犠牲によって時間を稼ぎ、ついに富士河口からデススターめがけて波動砲が発射された。

しかし、次の瞬間、多くの母船がデススターから排出され、波動砲で破壊されながらもデススターそのものの破壊を防いだ。
ブランゼットは失敗に終わった。

なす術なくうなだれる吉澤ユウラ。
帰還した明島と火星に行かず富士基地にやってきたこよみを前に、吉澤ユウラは基地の自爆ボタンを押す。

怒りながらもこよみを連れて地下シェルターに退避する明島。

自爆のカウントダウンが終わったその時、基地は爆破せず、代わりに吉澤方面総監(声:屋良有作)のビデオが現れ、
これは自爆ボタンではなく最終兵器カリオス(はっきり覚えてません)の起動スイッチだというのだ。
こよみとともに明島はカリオスを操縦する。

カリオスの破壊力はすさまじく、攻撃型円盤、その母船は軽々と破壊、デススターと直接対峙する。
しかし、デススターはカリオスごと地球に激突しようとし、大気圏までカリオスを押し戻す。

圧力に耐えつつも、明島は高熱で朦朧となるが、父の亡霊(妄想)に励まされて、ついにはデススターを破壊する。

カリオスは明島とこよみを静かにおろしその任務を終える。
やがて救護ヘリに助けられた明島とこよみ。
そこには吉澤ユウラが乗っていた。

こうして、地球の危機は救われたのだった。

**

未来の話なのに時代がかった家電品(例えばエアコン、TV)が出で来るのは粟津監督の得意技らしい。
私は宇宙人の攻撃でデジタルな機器が使えなくなり、家電品もアナログなものばかりになったのかと思っていた。

予算の都合か、あえてそうしているのかはわからないが、登場人物が少なすぎ。
基地には兵士と司令以外誰もいないし、街中にもこよみ以外の人物は描かれない。

表現力は素晴らしい。
人物の表現もメカのリアル感もなかなかのものだ。

しかし、設定には無理が多い。
わずか1時間にも満たない戦闘の間に、いくら近くとはいえ、街中から富士山の地下まで歩いてくるのは無理だ。

またいくら細かくばらばらになったとはいえ、種々の保存則(質量、運動量、エネルギーなどの保存則)から言って、
被害が仮に地表付近にとどまったとしても、地球が壊滅的打撃を受けることは間違いない。
あれはもう少し遠い宇宙空間で対応してもらいたかった。

最終作戦の割には、関係者の姿もよく見えないし、個人プレー的な気がする。

また地球全体がシールドで保護されているのに、どうやって火星に行くロケットがシールドを回避できるのか、
宇宙空間に出た途端、FOSに攻撃されないのか、火星はなぜ安全なのか、なども疑問が募る。

地球外知的生命体といわれるものの行動が我々の理解を超越していても別に問題ないが、
そもそも「知的生命体」なのかどうかもよくわからない。

とはいえ、そういう「細かい」ことは無視して、メカ対メカのCG版特撮を楽しむ分には面白い映画だった。

**

日本のCGアニメについてはいろいろなご意見があるが、その一つに髪の表現が安っぽいというのがある。
本作では髪は少なくとも見た目は1本1本丁寧に描かれ、こよみの髪はバラバラにそよぐし、頭を傾ければ傾ぐし、
その他の人物の髪も不自然さはなかった。

多分予算的にもあまり潤沢でないだろう本作で、髪の表現がここまでできるということは、他のアニメでもできるはずで、
いろいろな事情があってわざとやっていないものと思われる。

また、皮膚の質感や金属などの質感もよく表現されていて、その部分では実写と見紛うばかり、といって良いかもしれない。

ただ、いただけないのは人物の目と口。
目はどこを見ているのかよくわからないことが多かった。
すぐ目の前の人間と議論を交わしているはずなのに、どこか遠くを見ているような、あるいはうつろな目に見える。
目線がどこを向いているのかわからないと言ったらいいのかもしれない。

また、口はどうにも口パクに見えてしょうがない。
ただし、TVアニメなどでよくある輪郭固定で口だけパクパク、何をしゃべっても同じ調子でパクパクというのとは一線を画す。
台詞に合わせて口の形も変えてはいるのだが、なぜか声を出していないように見える。
喋っているように見えるにはもう一つ何か、口以外の顔の部分の動きが必要なのだろうか。

何がどうあればいいのかはよくわからない。
本物に似ていれば似ているほど、細かな違和感がより強調されるというから、逆によくできているのかもしれない。

ただ繰り返すが、TVアニメなどでよくある言葉=台詞の内容に関わらず、ただ単に口を開け閉めする顔とは比べ物にならない。
その点では、格段の出来であることは間違いない。

 

 

 第9地区 

ピーター・ジャクソン・プロデュース。エリイアン物。

**

冒頭はドキュメンタリー風に関係者のインタビューやニュース映像などで構成される。
巨大なUFOがヨハネスブルグの上空に現れたのは28年前。
停止したまま、一向に動こうとしないことに業を煮やした人間たちは、ヘリなどで宇宙船に接近、外壁を破って強行突入。
しかし、そこで彼らが見たものは瀕死状態のエイリアンたちだった。
彼らは宇宙船の真下に難民キャンプを作って、180万に上るエイリアンたちを移送して保護した。

しかし、エイリアンの難民キャンプはすぐにスラム化、人間との軋轢も高まり、排斥運動なども起こってしまう。
エイリアンたちの居住区は第9地区として隔離されるが、ナイジェリア人ギャングなどが横行する。

エイリアンたちはその風貌からえび(prawn)と呼ばれ、文化、食性も人類とは異なる。
力も強く、切れると手におえない。
所有する武器は破壊力がすごいが、エイリアンが使わないと動作しないのだった。

さて、エイリアンたちの増殖や人間とのトラブルに手を焼いた、南ア政府は地区の不衛生など理由に、
エイリアンを第10地区に移住させることにした。
その任に就くのは軍事企業のMNU(Multi-National United、マルチ−ナショナル・ユナイテッド)。
リーダーはヴィクス・ファン・デ・メルヴェ(Wikus Van De Merwe、シャルト・コプリー)。
ヴィクスは彼を指名した上司のスミット(ルイス・ミナール)の娘婿だ。
国連にあたる UIO( United International Organization、ユナイテッド・インターナショナル・オーガニゼーション)の規定により、
立ち退きは24時間前に通告し、文書にサインさせねばならない。

武装兵とともに各エイリアンの家を巡るヴィクス。怒り狂うエイリアンもいれば、嘘をつくのもいる。
ともかくなだめすかしてごまかしてサインさせていった。
ヴィクスたちはエイリアンの人権(?)にはあまり配慮していない。
被害を加えてくるものには容赦なく反撃するし、エイリアンの卵は焼き捨ててしまう。

ヴィクスの、いや、MNUの目的の一つにエイリアンの武器の発見回収があった。
強烈な破壊力のエイリアンの武器を作動させることができれば、大きい力になるからだ。

一方、エイリアンの中には、ごみの中から何やら液体を探し、それらを合成し容器に詰めている者がいた。
彼らの家にもMNUがやってきて、1人は逃げて1人はヴィクスに対応する。
ヴィクスは家宅捜索し、先ほどの容器を発見、中身の黒い液体を少し浴びてしまう。
ヴィクスの質問に切れたエイリアンはヴィクスを殴り飛ばし射殺される。

ヴィクスは左腕を負傷し、応急手当てをするが、徐々に調子が悪くなってくる。
すなわち、反吐を吐き、黒い鼻血が出たり、手の爪がはがれ、歯が抜ける。
やっとのことで帰宅したヴィクスを待っていたのは昇進のサプライズパーティ。
しかしその陰で、スミットはその日の作戦でエイリアンが大勢死んだことでスミットをなじる。

ヴィクスはパーティで昏倒し、病院に担ぎ込まれる。
怪我した傷から細菌かウィルスに感染したのか、果たして包帯を取った中からはエイリアン化した腕が現れたのだ。
エイリアンのDNAと人間のDNAが同化したものと思われた。
実験の結果、人間では作動させられないはずのエイリアンの武器もヴィクスが持てば作動し、すさまじい破壊力を見せつけた。

MNUのスミットらはDNA同化の秘密を探るため、ヴィクスを解剖させようとした。
ヴィクスは強大な腕力を発揮して、医師たちを突き飛ばして逃走する。

家に帰ろうとしたものの、スミットが先回りして軍隊を派遣、家には立ち入れない。
スミットはヴィクスがエイリアンとの不潔な性交渉によりウィルスに感染したと妻にデマを吹き込み、
またそれらを公表してヴィクスを追い詰める。

ヴィクスは行き場がなくなり、第9地区に舞い戻る。
そこで1夜を過ごし、エイリアン相手に商売する一味から斧を奪って手を切ろうとするが果たせず傷付けただけに終わる。

ヴィクスは、変身の原因となったエイリアンの家に行き、最初に逃げた一人のエイリアン、クリストファー・ジョンソンに近づく。
クリストファーは母船に戻れば直せるといい、そのためにはヴィクスが持ち去った液体が必要だという。

ヴィクスは、液体の入った容器を奪還するため、MNU侵入を決意、第9地区のナイジェリア人ギャングから武器を買おうとするが、
エイリアンのパワーにあこがれる彼らに捕まって腕を切られそうになる。

しかし、そこにあったエイリアンの武器を作動させて、ギャングを一蹴して逃げる。

ヴィクスはクリストファーとMNU本部を攻撃、地下4階に侵入し、例の容器を探す。
クリストファーは、そこで生体実験に使われた多くのエイリアンを発見し、驚愕する。

ヴィクスは大勢の人間を殺し、容器を奪回、エイリアンの家に戻る。
家の地下に隠された司令船に乗り込むと、クリストファーを残して飛び立とうとするが、子供エイリアンに邪魔される。
クリストファーは、軍に確保される。

ヴィクスを乗せた司令船は何とか飛ぶことはできたものの、追ってきた軍のミサイル攻撃を受けて落下してしまう。
子供エイリアンは司令船を操作して、母船を司令船の上まで移動させる。

ヴィクスはエイリアンのパワード・スーツに乗って戦う。
ヴィクスは一旦見放すが、結局は彼を助け司令船に乗せる。

ヴィクスのパワードスーツは破壊されるが、追ってきた軍は撃破し、クリストファーも母船に戻る。
やがて母船=UFOは大勢のエイリアンを残し、去って行った。

ヴィクスは行方知れずとなり、エイリアンは第10地区に移送され、さらに増え250万を超えるまでになっていた。

***

説明ではUFOは28年前に来訪したことになっているが、台詞では「2decades(20年)」という表現が使われていたように思う。

ドキュメント番組風、仲間内のビデオ撮影風は、最近よくある手法。
パワード・スーツも最近よく見る。
パクリとは思わないが、みんな考えることは似たり寄ったりなんだな、と思ってしまう。

予告で出てくるエイリアンへのインタビューのシーンは本編にはない。

軍の実行部隊が民間企業というのは、映画ではもうすでに常識だが、現実でも実際に結構あるようだ。
軍事企業の死亡者は軍の戦死者数に含まれないことも理由の一つとも言われるが、本当はどうなんだろう。

SFなので自分自身の評価は高目。
エイリアンはもちろんCGIだろうが、UFOも含め、不自然さはない。
もっともエイリアンの姿自体は不自然だが。

エイリアンの武器のすさまじさは今までの軽火器の常識を覆す。
あんな武器がホントにあったら大変だ。
他人に使わせない(作動しない)仕組みがあったら、テロリストに武器を奪われても大丈夫だが、識別の仕組みはどうするか。
人間にチップを埋め込めばできるかもしれない。

 

 

 シャッター・アイランド   

マーチン・スコセッシ監督、レオナルド・デカプリオ、ベン・キングスレー、マーク・ラファロ。

**

1954年。テディ・ダニエルス(レオナルド・デカプリオ)は連邦保安官。
今回初めて組む相棒のチャック・オール(マーク・ラファロ)連邦捜査官とともにフェリーで、シャッター・アイランドに向かう。

そこは精神に異常をきたした凶暴犯を収容する病院兼刑務所、アッシュクリフ。
周囲は断崖絶壁、わずかに船着き場以外は砂浜もなく、対岸のボストンまでは18キロ(10海里)もある孤島。

収容された極めて危険とされる「患者」の一人が、個室から突然消えてしまったという。
その患者、レイチェル・ソランドは実の子を3人も溺死させた犯人なのだ。

二人は銃を預けて病院内に入る。
病院長はジョン・コーリー(ベン・キングスレー)、テディとチャックの二人は早速捜査にかかる。

男性患者のいるA棟、女性患者のB棟、そして凶悪な患者のいるC棟。
テディはレイチェルの失踪した部屋から紙片を発見する。
そこには、「4の法則、67番は誰?」と書かれていた。

しかし、どうもおかしい。
コーリー院長は非協力的、失踪したレイチェルと一緒にセラピーに出たという患者も判で押したような返答。
レイチェルの担当のシーアン医師も休暇でいないという。

あまりに非協力的なみんなの態度に、テディは捜査をやめ、島を出てあとはFBIに任せると言い出す。
しかし、外はひどい嵐となり、フェリーは欠航、テディは島に残らざるを得なくなった。

テディはレイチェルの捜査に志願してこの島に来たが、実は別の目的があった。
それは、かつて自分の住んでいたアパートに放火し、妻のドロレスを死に至らしめたアンドリュー・レディスを探し出すこと。

レディス(イライアス・コティーズ)は、顔の真ん中に切り傷があり、左右の目の色が違う。
逮捕されてこの病院に送られたことまではわかっているが、その先の記録は見つからない。
この病院のどこかにいるはずなのだ。

この病院ではどうも怪しい人体実験を行っているらしい。
それはかつて自分が逮捕したジョージ・ノイスが、この病院に送られ、退院して再び事件を起こして逮捕されたとき、
病院送りはいやだ、死刑にしてくれと嘆願したことからも分かっている。
そしてそれは、立ち入り禁止となっている灯台の中で行われているらしいことも。

レイチェルの捜査は難航。警備員による周辺の捜索も手掛かりなし。

テディは、時々、レディスを探し出すよう告げるドロレスの亡霊(妄想)に苛まれる。
ドロレスはテディにレディスの捜索は止めて、島から出るようにとも告げる。
テディの矛盾する心情を表しているかのようだ。

テディにはかつて戦場でナチのユダヤ人虐殺を見、それに怒りを覚えて逆にドイツ人捕虜を虐殺してしまった過去もある。
暴力を否定、レディスを殺すことはないと言いながら、レディスを殺せというドロレスの言葉には賛同する。

やがて、レイチェル・ソランド(エミリー・モーティマー)が発見された。
レイチェルを尋問するが、要領を得ない。

嵐のあとの混乱に乗じて、テディはC棟に入る。
そして、終身刑でほかの刑務所にいるはずのジョージ・ノイスを見つける。
彼は、自分の怪我もここに入れられたこともすべてテディのせいだという。

テディは、秘密が灯台にあると考え、灯台へ向かう。
そこへチャックが67番の証拠を持ってきた。
それはすなわち67番目の男、レディスの入院記録だというのだ。
先を急ぐテディは無視して灯台へ向かうが、潮に阻まれて戻ったが、チャックは消え、崖下に倒れた人影。
チャックを助けに行ったテディは何も発見できなかったが、以前から怪しいと思っていた洞窟に本物のレイチェルを見つける。
レイチェル(パトリシア・クラークソン)は、犯罪者ではなくもともとアッシュクリフの医師で、
病院の人体実験を阻止しようとして逆に危ない目にあい逃げ出しているという。
そして、自分の存在を知られたくないから、と翌朝にはテディを追い返す。

一旦は、宿舎に戻ったテディ。
チャックの消息を聞こうとすると、そんな奴はもともといないと言われる。
自分の勘違いのふりをするテディ。

チャックの身に人体実験の危険が迫っていると考え、すべてはあの灯台に秘密があると考え、ついに灯台に乗り込む。
そして、テディは最上階にコーリー院長を見つける。

そこで、コーリー院長は「驚愕の事実」をテディに告げるのだった。

それは4の法則と67番の答え。
テディ・エドワードは、すなわちアンドリュー・レディスであり、レイチェル・ソランドはかつての妻ドロレス・シャナルだというのだ。
そして、チャックはシーハン医師。

テディ、いや、アンドリューの妻ドロレスは、うつ病で自宅に放火、一家は療養のため湖沿いの家に転居。
しかし、そこでドロレスはあろうことか自分の3人の子供たちを湖に沈めて殺してしまったのだ。
狂気の中で楽にしてくれと嘆願する妻。アンドリューはドロレスを射殺してしまう。
そして、精神を病みこの病院にやってきた。
子供を殺した妻、そしてその妻を殺してしまった自分を許せないアンドリューは、レイチェルとテディを作り上げ、
テディとなって許せないアンドリュー・レディスを追っていたのだ。

コーリー院長は、凶暴なアンドリューの妄想を解き、正気に戻すために彼の妄想に付き合っていたと話す。

混乱のうちに倒れ、目が覚めたテディは自分がアンドリューで妻を殺したことなどを理解したと告げる。

しかし、院長は再び衝撃的な事実を告げる。
それはアンドリューが過去にもここまでの正気を取り戻したことはあるが、再び妄想の世界へ戻ってしまった、というのだ。
今回、回復しないようだとロボトミー手術しかないとも告げる。

翌日、正気に戻ったと思えるアンドリューにシーハン医師が語りかける。
しかし、アンドリューは「チャック、この島にはとんでもない陰謀が隠されている」と話すのだった。

首を振るシーハン医師。
アンドリューは、「モンスターとして生きるのか、正常な人間として死ぬのか、どちらかだ」
と言い残し、自ら院長らの下に進んで行くのだった。

**

どんな映画にもどんでん返しはあるし、ラストに驚愕の事実が待ち構えている、なんてうたい文句は山ほどある。
そしてそのどんでん返しこそがすべての映画と、それはそれとして展開を楽しめる映画がある。

つまり、ラストの落ちが分かってしまうと、もう二度目は見る気がしない映画と、
もう一度あるいは何度でも見返したい映画といってもいいかもしれない。

この映画と似た様な落ちの映画はいくらもあって、びっくりするほどのものではない。

見た映画だけでも、ロバート・デ・ニーロの「ハイド・アンド・シーク 暗闇のかくれんぼ」、
ジョニー・デップの「シークレット・ウィンドウ」、ハル・ベリーの「パーフェクト・ストレンジャー」など。

ただし、この映画を「謎解き」としてみるのは間違いだと思う。
宣伝が散々「謎」を強調しすぎて、観客をミスリードしているとしか思えない。

エミリー・モーティマー、名前は聞いたことがあるし、どこかで見たがよく思い出せない、と思ったら、
「ピンク・パンサー」でのメガネの女性刑事、ニコルだった。

脳が勘違いする、という意味合いで平行線などを曲がっていると見てしまう錯視が引き合いに出されているが、適切とは思えない。
同じ錯視なら、ロールシャッハテストの図柄、だまし絵の類の方がより適切ではないのか。

 

 

 

 

 

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