インターステラー
マシュー・マコノヒー、アン・ハザウェイ、マイケル・ケイン、ジェシカ・チャステイン、ケイシー・アフレック、マット・デイモン。
*
近未来。
異常気象、病気の万延等により、農作物の枯死が続き、
元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)の営む農園も疲弊していた。
息子、トム(ティモシー・シャラメ)は、成績優秀なのに大学進学をあきらめ家業を継がねばならない。
娘、マーフィ(マッケンジー・フォイ)は、人類の月面着陸を事実だとして学校で叱られるような日々。
(当時、月面着陸はNASAの捏造とされていた)
娘の部屋では度々ポルターガイスト的事象が起こっていたが、単なる偶然とは思えなかった。
ある砂嵐の日、娘の部屋に舞った砂が、何かの2進数を示していると考えたクーパーは、
解読の結果、それを経緯度の座標と考えて数値の示す場所に出かけることにした。
深夜到着した現地には柵があり、カッターで鍵を破ろうとしたクーパーは電撃を受け施設内に運ばれる。
クーパーはその場所をどうやって知ったか詰問されるが答えられない。
メンバーの一人はアメリア・ブランド(アン・ハザウェイ)と言った。
実はこの場所は解体したはずのNASAの研究所で、アメリアの父でクーパーの恩師でもあった
ブランド教授(マイケル・ケイン)もメンバーだった。
教授はクーパーに地球を救うための新天地を探すミッションに参加するよう要請した。
実は、地球はもう瀕死の状態であり、NASAは人類の移住計画を実施しているとのことだった。
NASAはもう何年も前から「(恐らく)5次元空間に住む何者か(=they)によって」
土星の近くに出現したワームホールを使って、銀河系外の移住可能な惑星を探査しており、
既に出発した12の探査機から3つの可能性の連絡が来ている。
任務はその3つから人類移住可能性のある惑星を見つけることだった。
ブランド教授によれば、宇宙船乗務経験のあるクーパーの参加が必須、
メンバーはアメリアの他、ロミリー(デビッド・ギャシ)、ドイル(ウェス・ベントレー)。
それにロボットのブロック型ロボットのTARS。
家族との別れ、トムと義父のドナルド(ジョン・リスゴー)は覚悟を決め、
マーフィはポルターガイスト的信号を「STAY」と解いたとするが、
クーパーは「必ず帰ってくる」と言い残して研究所に向かう。
程なくして発射されたロケットは地球周回軌道上にあるステーションに向かいドッキング。
ステーションと合体して土星まで向かい、ワームホールを通過して目的の惑星に向かう。
長期間の旅になるため、乗員は冬眠状態に入り、操縦はTARSとステーションのロボットCASEに任される。
やがて信号がやってくる3つの惑星のうち最も近い星に接近。
ステーションから着陸船を切り離し地上に向かう。
そこは浅い水面だった。
すぐにビーコンは見つかったものの着陸船や目印は見当たらない。
アメリアが機体の残骸らしきものを発見するが、クーパーが気付いたのは超巨大な波の壁、つまり超巨大津波。
すぐ帰還するよう命令するクーパーに対し、ブラックボックスを回収しようとして残骸に挟まれるアメリア、
ドイルの指示でTARSがアメリアを救出するが、ドイルは寸でのところで波にのまれて死ぬ。
波にもまれながらも脱出したクーパーらは乗員1名を失った。
相対性理論の時間の伸びにより、調査隊はおそらく到着してすぐに波にのまれて壊滅。
クーパーらは数分後に到着したものと考えられた。
しかし、その間に地球上ではすでに23年が経過。
トム(ケイシー・アフレック)は高校を卒業し、結婚し、子供ができ、義父が死に、
返事のこないクーパーの生存をあきらめて、遂にビデオレターを止めてしまった。
時間のロスから、3人は残る2つの惑星のうち、近い方のマン博士の惑星を選択。
アメリアの元恋人で、より遠くブラックホールに近いエドモンドの星は否決された。
マン博士(マット・デイモン)の到着していた星は氷の星。
冬眠状態から覚めたマン博士は、分厚い氷の下に温かい台地があるという。
その頃地球ではブランド教授が最後を迎えようとしていた。
マーフィ(ジェシカ・チャステイン)は成長し、その後、教授の助手として
プロジェクトの推進と教授の研究していた量子重力理論の解明に取り組んでいた。
ブランド教授は死の淵で自身の理論がブラックホールのデータ以外は解析し終わっていたことと、
この計画が人類移住ではなく、第2案の人類の種(冷凍受精卵)を新惑星で育てることにあったと語り、
クーパーらは元々戻ってこない計画だったと告げて死ぬ。
マーフィはアメリアに教授が死んだことをビデオレターで伝えるが、移住計画が嘘だったことを知っていて
自分たちを見捨てていたのかと語りかける。
しかし、マーフィはその後、ブランド教授の数式にブラックホールのデータを入れれば、
量子重力理論が完成し、これを利用することで移住ができるようになるかもしれないと考える。
そして、長らく行かなかった自分の部屋に何かのヒントがあるかもしれないと考えていくが、
同行したゲティ(トファー・グレース)が、兄の妻子がかなり肺を悪くしていることに気づき、
一旦は引き上げるが、畑に火を放ってトムを家から離し、その間に妻子を連れに戻る。
一方、マーフィからのビデオレターで教授の嘘を知ったクーパーは激怒するがアメリアは知らなかったと言う。
マン博士は知っていたと言い、この星で暮らすためクーパーに地下の地表に近い場所を教えると言う。
しかし、「住める」報告はマン博士の罠で、到底人類の住めないこの星に着き、偽の報告で救助を待ち
地球に帰るチャンスをうかがっていたのだ。
マン博士はクーパーを倒して逃げ、着陸船を奪ってステーションに向かう。
マン博士のロボットからデータを抜こうとしていたロミリーはデータが無意味だったことを知るが、
ロボットの自爆により爆死。
マン博士に襲われて死にかけたクーパーはアメリアに助けられ、補給船でステーションに向かう。
マン博士はステーションに無理やり入ろうとして失敗、爆死する。
クーパーとアメリアは何とかステーションに戻ったもののステーションの機能はかなり破壊されていた。
クーパーはブラックホールの重力を利用して、エドモンドの星に行く計画を立て、
アメリアを脱出させるとともに自身はブラックホールに沈んでいく。
着陸船はブラックホールの中で徐々に破壊され、やむなく脱出装置で飛び出したクーパー。
そのまま死んでしまうはずだったが、落ちて行った先はマーフィの部屋の裏の時空空間。
全ての時間がそこにはあった。
自分と別れた頃のマーフィ。
宇宙に行こうとする自分。
クーパーは、NASAの研究所の座標を符号化して本を落とすことで示し、
自分を旅立たせないために「STAY」をモールスで示した。
そして重力を利用して砂嵐の砂でNASAの研究所の座標を示した。
さらには、ブランド教授を看取った後のマーフィーに対し、
一緒に4次元空間に落ちたTARSが事象の地平線の向こうで手に入れた
ブラックホールのデータを別れる時に渡した時計の秒針で示し始めた。
時計の動きに気づいたマーフィ。
子供の頃の幽霊の正体がクーパーその人だったと感じ、データを送ってきていると認識する。
畑の火事を止めて戻ってきたトムに解決策が見つかったと語る。
データを送り終わったクーパー。
TARSは彼らが4次元空間を閉じ始めたと語り、クーパーはどこかへ弾き飛ばされる。
*
クーパーはベッドの上で目が覚める。
ここは死後の世界か、それとも夢から覚めたのか、医師は124歳なんだから無理しないで、と言い、
窓の外には(ちょうど「エリジウム」で出てきたような)チューブ型のステーション内部が広がっていた。
「ここはクーパーステーションです。」
自身の名前かと思ったクーパーだが、それはマーフィの功績を讃えたものだった。
「マーフィはどうなった?」
医師は、「高齢なため移動が大変ですが2、3日で着くでしょう。」と答えた。
果たして、子や孫や大勢の親族に囲まれ、ベッドに横たわるマーフィ。
クーパーに「必ず帰ると分かっていた、だって約束したから」と言い、
私には、大勢の子や孫がいるから大丈夫。あなたはアメリアの元に帰ってあげて、と言う。
クーパーはやはり救助されていたTARSを修理し、宇宙に旅立っていった。
その頃、アメリアは一人惑星で新開地を築こうとしていた。
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映像は美しい。
特にロングショット。
土星の近傍を行くステーションなど米粒のようで、空間の大きさを象徴しているが、
小さいスクリーンでは多分迫力は感じられないだろう。
トムとマーフィが、ケイシー・アフレックとジェシカ・チャステインになるとは想像してなかった。
予告で散々流れていたのに。
マット・デイモンが現れたときは予想していなかったので、思わず笑った。
共同脚本のジョナサン・ノーランは監督のクリストファー・ノーランの弟。
「プレステージ」「ダークナイト」「ダークナイト/ライジング」などで
クリストファー・ノーラン監督とタッグを組んでいる。
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SFはフィクションであり、科学的にすべて正しいものである必要はない。
高次元に住む人類を超越した「彼ら」(They)が何者なのか、
その存在をどうやって認識し、あるいは確信したのか、ワームホールとの因果関係は。
そして何より、現在の世界がなぜああなったのか、今後どうなりそうなのか、
登場人物の説明や相関についてもさらっと流している。
また、訓練や飛行時のトラブルなどは極力端折り、展開は早い。
それでも、ダイジェスト感、上滑りは全く感じず、また逆に2時間半を超える長さを
飽きさせないで見せている。
前半の無意味に思える月着陸船の模型、ポルターガイスト現象、アナログ時計なども
それぞれの理由があって、ちゃんと回収されている。
最後はどうまとめるのか気になったが、ちょっと宗教映画っぽくなっちゃったかなって感じでした。
それはそれでいいんだけど、アメリアはあの星で元彼とうまくやっているかもしれず、
今更クーパーが行ってもどうしようもない可能性もあるし時間がもう大きくずれているかもしれない。
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ワームホールは空間と空間をつなぐトンネルのようなものだが、
ブラックホールとホワイトホールをつないだものではない。
(それもワームホールの一種と言えなくもないが、安全に通過できない)
理論的には実在可能で、その出入り口は3次元空間では映画のように球状に見える。
ただ、終盤でクーパーが飛び込むと言うか、引き込まれるのが本当になブラックホールなら、
その潮汐力であっという間にばらばらにされてしまい、生き残ることはできない。
また、外からクーパーが引き込まれるのを見たとすると、着陸船は事象の地平線辺りでとどまり、
徐々に赤くなり、そしてついに消えてしまう。
ブラックホールは真っ黒で外からは見えないはず、と思っている方も多いかと思う。
実際には本体は見えなくても引きずり込まれる周りの物質が光を出すので、
光る形が映画の通りかどうかは別として、ブラックホールの周辺空間は見える。
また、回転するブラックホールからは、回転軸に沿ってジェットが噴出されるのでそれも見える。
思うに映画の「ガルガンチュア」は純粋なブラックホールではなく、
別種のワームホールみたいなものかもしれない。
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博士の解こうとしていた理論、実際には解けていたとか、ブラックホールの情報がないと完成しないとか、
どっちなんだよ、と言いたくなるところ。
恐らくは「量子重力理論」であろう。
重力を量子化した理論で一般相対論と量子論を統一するものとされており、現時点ではまだ確立されていないようだ。
ブラックホールとの関連では、一般相対論(一般相対性理論)は、ブラックホール内部では破綻するとされており、
その解明には量子重力理論が必要とされている。
本来はうかがい知ることのできないはずのブラックホール内部のデータが克明にわかったとして、
量子重力理論が完成出来るのかどうかはよくわからないが、仮に理論が完成できたとして、
それで重力の本質が判ったとして、エリジウムが作れるのかどうかはこれまたよくわからない。
重力で時間が伸びる(時間の進むのが遅い=宇宙での時間が地球よりゆっくり進む
=宇宙での1時間が地上の何時間、何日、何年にもなる)のはいいとして、
6万倍も遅い(1時間が7年に相当する)のであれば、ものすごい重力下にあることになり、
到底人は生きられない。
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