ザ・コンサルタント
ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、JKシモンズ、ジョン・バーンサル。
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20年ほど前。
ある発達障害児童を預かる施設。
2人の男の子を連れて訪れた夫妻に施設長は子供はおかしいのではなく、個性的なだけ、と告げる。
連れられてきていた兄弟の一人は、すごいスピードでジグソウパズルを組み立てていく。
もう一人はただ見ているだけ。
最後の1ピースが見つからず、いらついて暴れる兄。
その部屋にいた少女がそれを見つけて渡し、パズルは完成する。
施設長は子供を預けるよう進言するが、父親は施設に入れず、自分が強く育てる、と言う。
映画の展開上はずっと後に回想シーンとして挟まれるが、
施設訪問の後、しばらくして母親が子供を残して家を出てしまったこと、
ジャカルタで格闘家に徹底的にしごかれていたこと、
父にいじめっ子に仕返しするようきつく言われ、実際そうしたことなどが明かされる。
*
20年後。あるビルで射殺事件が起こった。
一人の男が銃を構えながらビルに入ると、あちこちにヘッドショット遺体が転がり、
階段を上っていくと「じじいを殺したのは俺じゃない」と言う言葉と射撃音が聞こえる。
場面は変わって、とある田舎町。
小さいショッピング・モールの一角にある会計事務所。
顧客は税金が払えなくて困っているという農家夫婦。
会計士のクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)は、夫人のお手製だというネックレスに目をつけ、
ネックレス作成の在宅ビジネスでリビングをオフィス、買い出しのトラックを社用車等として節税を指南。
夫婦は喜んで帰っていく。
お礼に、農場でウルフの趣味だという射撃の場所を提供。
ウルフは対物ライフル(バレットM82A1)で1.5kmほど先のメロンを見事撃ち抜いてみせる。
財務省犯罪捜査部長のレイモンド・“レイ”・キング(JKシモンズ)は、
分析官のメアリーべス・メディナ(シンシア・アダイ・ロビンソン)を呼び、
捜査官になるよう勧めるが、メディナは同意しない。
キングは、メディナが経歴を詐称して財務省に入ったことを知っているが才能があると持ち上げ、
逮捕されたくなければ、ある男の正体を調べるよう指示する。
それは世界のマフィア、麻薬取引、武器商人などのトラブルを処理する会計士で、多くの偽名を使い、
素性がよくわからない人物だった。
メディナは渡された写真から男を割り出していく。
メディナは男の使う偽名がいずれも著名な数学者であることを知る。
時間的にはずっと後になるが、男は何年か前にニューヨークの路上で2人を瞬殺し、
ビルに入ってさらに7人を射殺した男だとわかる。
また、録音された音声をクリーンアップし、わずかに残る童謡らしきものをあぶりだす。
鑑識に調べさせ、白人アメリカ人で自閉症の疑いがあるとわかる。
メディナは数学者の名前に類似する高給取りの若い会計士をしらみつぶしに調べるが誰も該当しない。
しかし、ついにメディナは男が年収7万5千ドルでイリノイに事務所を構えるクリスチャン・ウルフだと突き止める。
男はショッピングモールの各店舗の共同経営者となっていて合計では160万ドルもの高給を得ており、
かつ、毎年100万ドルを診療施設に寄付していた。(その施設に問題はなかった)
メディナは結果をキングに報告し、二人はイリノイ州に飛ぶ。
*
さて、話は戻って、とある駐車場で株価操作で儲けていた金融マンが謎の男(ブラクストン、この時点では名前不明、ジョン・バーンサル)に
株価操作を止めるよう脅され、しこたま殴られる。
ピックアップトラックを運転するクリスチャン・ウルフの携帯に謎の女性から非通知の連絡が入る。
家電や義肢を製造する「リビング・ロボティクス社」で不正会計の内部告発があり、監査してほしいとのこと。
ウルフが行くと社長のラマー・ブラックバーン(ジョン・リスゴー)は、知人の紹介でウルフを知ったという。
社長の妹で副社長のリタ・ブラックバーン(ジーン・スマート)と社長の30年来の友人でCFO(財務担当役員)の
フランシス・シルバーバーグ(ジェフリー・タンバー)が監査に対応。
ウルフはフランシスがCFOになった15年前からの資料を要求して帰る。
翌日、会議室には不正を内部告発した会計係のデイナ・カニングス(アナ・ケンドリック)が眠りこけていた。
デイナは徹夜で15年分の資料をそろえた、社長からなんでも協力するよう言われているというが、
ウルフは助けは要らないと言って一人で仕事を始める。
昼休み、一人でサンドイッチを食べていたダイナの近くにウルフが来る。
ダイナはウルフに語り掛ける。
ウルフは「ポーカーをする犬」の話題で初めて笑顔を見せる。
ウルフは資料を徹底的に調べ数字を洗い出して書き上げていく。
翌朝、ダイナが出社すると、ウルフは嬉しそうに結果を教える。
それによれば過去不正が繰り返され、累計6100万ドルに上る資金が流出しているとわかったのだ。
ウルフは部屋に来た社長にそれを知らせ、さらに調査を進める。
その夜、CFOのフランシスの家にブラクストンとその部下2人がやってくる。
ブラクストンは家族を生かしたいなら、インシュリンを過剰投与しろと脅す。
翌日、ウルフが社に出向くと、数字が消され、まだ終わっていないというウルフに対して、
社長がフランシスが死んだので調査は終わりという。
作業が中途半端に終わったため、ウルフは相当いらつき、いつもの作業もうまくいかない。
翌日、ウルフが農場にライフルの訓練に出向くと、ブラクストンの部下2人が来ており、
銃で脅しながらウルフを呼ばせる。
しかし、ウルフにばれて射殺された。
もう一人は夫妻を人質に車で逃げようとしたが、ウルフに逆襲され、殺される前に
ウルフとデイナを殺すよう指示されていると吐く。
ウルフは例の携帯の女と連絡を取り、デイナを助けに行くことにしたが、
デイナは非通知の電話に出ず、携帯の女からの警告は届かない。
デイナがアパートに帰ると、見知らぬ男が廊下を固め、宅配を装った男2人がデイナを襲う。
デイナが抵抗している間にウルフが到着し、廊下の男を瞬殺、偽宅配も瞬殺して、デイナとともに逃げる。
ウルフが武器などを隠しているレンタル倉庫のトレーラーハウスにデイナを連れて行く。
ウルフが必要なものをそろえている間に、デイナはルノアールやポロックの原画を見、
さらに多額の紙幣や大量の武器を見てびっくりする。
ウルフは絵は本物で報酬の代わりに依頼人から貰ったと語る。
2人はホテルに退避する。
デイナは自身の過去などを話し、ウルフは少し共感する。
その夜、ウルフはなぜ二人が狙われたのか、副社長のリタに確認しようとを出かけるが、
リタの家から出てきたブラクストンに撃たれそうになる。
案の定、リタは射殺されていた。
ウルフは黒幕を社長のラマーと断定し仕返しを決意し、デイナにメモを残してホテルを去る。
*
さて、シカゴ近郊に飛んだキングとメディナはウルフの家を捜査、
家が監視カメラでカバーされ、タンスの中に銃が隠されているのを発見。
また、遠隔操作のできる重機関銃が隠されていた。
ここでキングはニューヨークでの射殺事件について語る。
ウルフは、軍の高官であった父とともに前妻の葬儀に出た。
何かの理由で参列者と揉めて、警官がウルフをかばう父を射殺、ウルフは逮捕、投獄される。
ウルフは監獄でトニー一家の会計を担っていた老人に会計の仕組みや犯罪組織の手口をみっちり仕込まれる。
その老人が警察に寝返り、キングが対応した。
しかし、老人は保護プログラムが適用されず仮釈放になり、トニー一家にいたぶられて死亡した。
ニューヨークでの射殺事件はウルフの仕返しだったのだ。
犯行時、現場に乗り込んだキングはウルフに背後から狙われるが、何度かのやり取りののち解放される。
そして、退任を申請し、いよいよ退庁しようとするとき、女性の声で犯罪密告の電話が入り、
功績を上げることができた。
その後もたびたび犯罪を知らせる電話が入り、そのおかげで部長にまで出世できたというのだ。
メディナはキングのやってきたことに疑問を持つが、キングはメディナが後を引き継ぐよう依頼する。
そこに電話がかかり、メディナが出ると例の女性の声でキングにテーブルから足を下すよう言えと言い、
リビング・ロボティクス社の不正経理の犯人は社長だと告げる。
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さて、ラマー社長宅ではブラクストン以下が、屋敷を固めていた。
多くのカメラで屋敷をカバーしていたが、ウルフは遠隔から狙撃し、屋根から屋敷内に侵入し、
ブラクストンの部下を次々と倒していく。
しかし、ブラクストンの部下もかなり手強く、ウルフは負傷してかなりのダメージを受ける。
ウルフが気持ちを落ち着かせようと、例の童謡を口ずさんだその瞬間、
ブラクストンはそれが実の兄のクリスチャン・ウルフだと気づき、部下を倒してウルフに殴りかかる。
殴り合いの末、二人は和解し、不審に思ったラマーがウルフを罵ると、ウルフはラマーを射殺する。
ウルフはまた連絡すると言ってブラクストンを残して去る。
こうして不正会計事件は多くの死者を出しながらも解決、財務省の記者会見では
メディナが事件解決は永年の内定調査の結果であり、チームの成果であると強調する。
デイナがレンタル倉庫に行ったときそこはすでに空、
ウルフはトレーラーハウスを引いてどこかへ向かっていた。
後日、デイナに宅配で「ポーカーをする犬」が届く。
絵の端に不自然な塗り残しを見つけたデイナがキャンバスをはがすと下から「ポロック」の原画が現れた。
それはあのトレーラーハウスに飾ってあったものだった。
ウルフが多額の寄付をしているという障害者施設に新たに学習障害だという男の子を連れた夫妻が来た。
男の子はうろうろしてハンディの有る女性の部屋に入ってしまう。
夫妻は驚くが、施設長は女性は自分の娘で心配はない、娘のために施設を作ったと言う。
女性は強力なパワーを持つ部屋のパソコンを操作し、
音声合成でチャットしようと男の子に語り、男の子の目は輝く。
その音声合成の声は例の電話の声だった。
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兄弟がどのような形で再会するか=伏線が回収されるか、は序盤からかなり気になった。
いくつかの想定が考えられ、映画の結末もその一つだったが、うまくまとまったというところか。
弟ももう今までの仕事は続けられないだろうし、不仲も氷解したわけだから
最後に一緒に並んで車に乗っていてもよかったかな、と言う気はした。
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人にはいろいろな性格、性質、特質があり、何が優れているかの見極めは難しい。
一般的な常識を欠くと思えても、それは特定の見方からの判断であり、
別の観点からは極めて優れた能力を持っているかもしれない。
場合によってはサイコパスと呼ばれたり、パラノーマンと呼ばれる。
消えたり燃えたりワープしたりのスーパーナチュラルではなく、
通常の人間の持つ能力が極めて(異常なほど)優れているパラノーマン。
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毎度、配給元のミスリードはいただけない。
今回も「職業、会計コンサルタント、本業、腕利きの殺し屋」は全くのミスリード。
「殺し屋」と言うからには会計を担いながら、反対勢力を排除する役割も担っているのかと思っていた。
「殺し屋」とは金銭によって殺しを請け負う非合法な職業人だと思うが、
主人公が殺しを行うのは、金銭による依頼ではなく義憤、復讐などの私的理由。
「凄腕の殺し屋」などではなく、単に戦闘スキルが異常に高いだけ。
元々が殺し屋では、ジョン・ウィックやアーサー・ビショップらが該当するが、
ウルフは軍人上がりのジャック・リーチャー、ジェイソン・ボーン、アーロン・クロス等と同様。
イメージやきっかけは異なるが、ジョン・ランボーも軍人上がり。
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「ポーカーをする犬」はカシアス・マーセラス・クーリッジによって描かれた16枚の油絵のシリーズで、
映画の中に出てきたのはそのうちの「A Friend in Need」である。
ポロックは、アクション・ペインティングとして知られるジャクソン・ポロック。
ググると例えばこういう絵がヒットする。劇中の作品はもっと赤と黒が特徴的でよく分からなかった。
ウルフが使っていた狙撃銃は対物ライフル(Anti-Material
Rifle)と呼ばれるもので、バレット社製のM82A1と思われる。
M82A3(陸軍ではM107と呼称)はM82A1を改良したもので形状は酷似しているようだ。(M107A1は別物)
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