メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮
1作目のようないわゆる「巨大迷路」は出てこない。
冒頭に前作のシーンが少しだけ出てくるが、設定の説明はなく物語が始まるため、
前作を見ていないと人物の相関関係すら判らない上に、見ていても、
終盤に一気に語られた世界観や設定を整理しておかないと、混乱するばかりだ。
そこで前作のおさらいをしておこう。
物語は記憶を一時的に失った一人の青年トーマス(ディラン・オブライエン)が、
多くの若者が閉じ込められた広場(グレード)に送り込まれるところから始まる。
グレードを囲む壁の向こうには巨大迷路が広がっており、人を襲う怪獣グリーバーが潜んでいる。
ランナーと呼ばれる代表者2名が迷路の解析のために毎日壁の向こうに入り夕方帰ってくる。
トーマスは、集団になじめないが、リーダーのアルビーを助けたことからランナーに抜擢され、
倒したグリーバーのパーツを使って迷路の探査を行う。
暫くして、テレサ(カヤ・スコデラリオ)と言う女性が送り込まれると、
普段はグレードに入らないグリーバーが広場に侵入し、みんなを襲って大勢が死ぬ。
トーマスはWCKD(ウィックド)と言う組織が若者を迷路に送り込んでいたことを思い出す。
新リーダーのギャリーはトーマスを追放しようとするが、トーマスはテレサ、ミンホ(キーホン・リー)、
ニュート(トーマス・ブロディ・サングスター)らとともに迷路の先を目指す。
トーマスらはぎりぎりで迷路を抜け、研究室のようなところに入る。
そこでは研究員らしき女性(パトリシア・クラークソン)がビデオで状況説明を行った。
曰く
「地球は太陽フレアによって壊滅、致死性の高い凶暴化ウイルス「フレア」が蔓延して人類は存亡の危機にある。
ウィルス耐性が高ストレス下で起こるため、耐性能力のありそうな人を迷路に送り込んだ」
と言うのだ。
直後、女性は何者かに襲われ拳銃自殺(実は偽装)してビデオは終わる。
その時、外部から武装集団が乱入し、トーマスら全員を連れて行く。
武装集団はトーマスらをヘリに乗せ、もう安心だ、と言いながらどこかへ連れて行く。
周りには砂漠が広がり、トーマスらが閉じ込められていた迷路と広場が見えていた。
*
2作目。もろに前作の続きで、冒頭は、トーマスらがヘリで移送され、どこかに着くシーンから。
突然、一群の何者か(=クランク)が襲ってきて、トーマスらは必死で建物の中に逃げ込む。
建物の中ではリーダーらしきジャンソン(エイダン・ギレン)が
トーマスらにシャワーを浴びさせ、着替えさせ、食堂に連れて行く。
そこには大勢の若者がおり、巨大迷路がいくつもあったことが分かる。
ただほとんどの者は着いて1日、2日であり、一番の古株と言われる
エイリス・ジョーンズ(ジェイコブ・ロフランド)ですら一週間程度らしい。
食堂では10名ほどが名前を呼ばれ、別の区域に退出していった。
毎日何名かが安全な場所に移送されるらしい。
トーマスらは2段ベッドの部屋に入れられる。
そこには、他の迷路からの人物も入った。
夜中、トーマスのベッドの下からエイリスが現れた。
換気口から送風路に入り、あるものを見せると言う。
そこでは、人らしきものが台車に乗せられてまた別の区画に運ばれていったが、
その先は送風路が行き止まりだった。
翌日、また何名かが名前を呼ばれて食堂から別の区域に退出した。
窓の外にテレサの姿を見たトーマスは、そちら側に行こうとして係員と揉める。
居室に戻ったトーマスはニュートらに対し、エイリスと見た区画の先に行くと言い、
係員と揉めたときに密かに奪い取っていたIDカードを見せる。
送風路の換気口から廊下に出て、IDカードを使って別室に入ったトーマスとエイリスは
大勢の若者が吊るされ、何本ものパイプをつながれているのを見る。
なにかも液体が注入されるとともに体液が抜かれているようでもあった。
テレサ、と思った女性はエイリスとともにここに来て、早い段階で名前を呼ばれた女性だった。
部屋から出ようとするとジャンソンがやってきた。
ジャンソンは、前作で死んだはずの(偽装をして見せた)アバ・ペイジ博士(パトリシア・クラークソン)と
テレビ電話で会話し、RA(ライトアーム)が狙っているから実験を早く進めろと指示され、
ジャンソンは新しい人間から始めると約束する。
トーマスは自分たちが吊るされる番になると悟り、居室に戻ると逃げようと言いだす。
ドアにバリケードを作り、訝しがるニュートらを諭して脱出を図る。
途中クロフォード博士(キャサリン・スミス・マクグリン)を捕まえてテレサの居る場所に行き、
テレサにつけられたチューブを抜き取ってともに建物から出る。
ジャンソンらは後を追うが、トーマスらは砂漠の丘に隠れ、移動して廃墟に入る。
そこには人の居た跡があり、靴や衣服、資材や食料、水なんかもあった。
計画も当てもなく逃げ出したトーマスにニュートらはあきれるが、分散して中を探す。
ミンホが発電設備らしいものを発見し、電源を入れると程なくゾンビっぽい人々が現れる。
焦って逃げるミンホとトーマス。
皆の居る場所まで走り、全員で逃げる。
なんとか、ギリギリでビルから脱出したものの、ウィンストン(アレキサンダー・フローレス)は、
ゾンビ連中に足を思いっきり引っかかれる。
トーマスは山にいると言うRAがWCKDの反対勢力であり、RAに助けてもらおうと言う。
延々と続く砂漠、はるか遠くに見える山々を目指して全員で歩く。
引っ掻かれたウィンストンは症状が悪化、歩けなくなり、ついには拳銃で自殺しようとする。
治療のしようがなく、ゾンビにはなりたくないと言うウィンストンにニュートは銃を渡してやる。
野宿し歩き続けるトーマスら。
遂に灯りを発見、建物に入ると鎖に繋がれたゾンビらがいた。
それらはクランクと呼ばれており、感染力の強い病原体に侵されていた。
トーマスらは中から現れたブレンダ(ローザ・サラザール)に連れられ、
リーダーのホルヘ(ジョルジュ、ジャンカルロ・エスポジート)に会うとつけられていると言われる。
果たしてジャンソンらの攻撃部隊が建物を襲撃。
ホルヘはトーマスらを逃がそうとするが、トーマスとブレンダは逃げ遅れ、
建物の爆破に巻き込まれる。
トーマスとブレンダは地下通路から街に出ようとするが、例によってクランクに襲われ、
ギリギリで助かるものの、ブレンダが足首を噛まれる。
ゾーンAに入ったブレンダとトーマスはRAの手がかりを知るブロンディを探すが、
クラブのオーナー(アラン・テュディック)にドラッグ風のドリンクを飲まされ、混濁したまま失神してしまう。
トーマスが気付いた時は、ニュートらがいてホルヘがクラブオーナーを椅子にしばりつけていた。
ホルヘはオーナーをブロンディと呼び、RAについて聞く。
実はブロンディはホルヘから引き継いだ若者をRAに渡さずWCKDに引き渡していたらしい。
ホルヘの暴力に負けたブロンディはRAの居場所を喋り、ホルヘはブロンディのトラックを奪い、
トーマスらと全員で山に向かう。
途中、遺棄された車で道がふさがれ、トーマスらは徒歩で先へ進もうとして狙撃され、
2人の若い女性に銃を突き付けられた。
女性はエイリスと同じグレードにいた仲間で、今はRAのメンバーとなっていた。
トーマスらはRAのキャンプ地に連れて行かれるが、発症したブレンダは殺されそうになる。
そこにトーマスを知るメアリー女医(リリー・テイラー)が現れ、
トーマスの血液から治療薬を作ってブレンダに注射する。
効果は長くて6カ月ということで、ブレンダはRAと行動を共にできないと言われる。
一瞬の安堵の時。
トーマスはニュートやミンホ、新しく仲間となったフライパンらと談笑した。
丘の上に立つテレサが気になって見に行くと、テレサは治療薬開発が大事だからWCKDに連絡したと言い、
間もなくジャクソンらの乗ったWCKDの攻撃ヘリが現れ、兵隊が降下して銃撃戦となり、RAは敗れる。
ペイジ博士も到着し、ブレンダとホルヘを逃がしたトーマスは投降する。
ペイジ博士とメアリーは既知で、口論の末、ジャクソンがメアリーを射殺し、
若者をヘリで連れ去ろうとする。
しかし、逃げたと思ったホルヘが車で突っ込んで再び乱戦となり、ペイジ博士やジャクソンは逃げる。
トーマスはこの時連れ去られたミンホを助けるため、再びWCKDの基地に向かうと立ち上がる。
*
事情も分からず大人の論理に振り回される若者、と言ったところか。
展開が目まぐるしく変わり、先がなかなか読めないが、ゾンビや退廃地区が出てくるとは思わなかった。
全く新しい設定の前作に比べ、やや普通のというか、さほど目新しくもない映画になってしまった感がある。
まあ、ゾンビと言っても最近の映画の設定ではウィルス性の感染症の発症患者と言うことで、
太陽が怖いとかやたら遅いとかの昔のゾンビ映画の設定からは外れている。
ただし、ゾンビ同士の共食いはなく、健常者だけを襲うお約束はその通りだ。
「ワールド・ウォーZ」のゾンビみたいなものか。
「アイアム・レジェンド」でも感染症の末路のようだったが、あちらは太陽に弱い。
前作では致死性が高いと言っていたと思ったが、脳を冒し凶暴化するウィルスのようで、
なかなか死なないようだ。
*
ウィルスにしろ細菌にしろ一部の人間が抗体を持っていて、耐性があることは不思議ではないし、
パンデミックがあまりにも急激に起こり、ワクチンを工業的に大量生産している暇がなく、
耐性のある人の命を削ってでも治療薬が必要だと言うのもあり得ることではあるが、
本作はウィルスの蔓延と耐性のある人間がいることは10年以上前に判明していることであり、
(だからこそ、トーマスらが子供の時に母親から切り離され隔離された)
症状を抑える方法もわかっているのに、未だに治療薬ができていないのはちょっと解せない。
*
あらためて前作を思い起こしてみると、グリーバーの針はこのウィルス「フレア」が仕込まれており、
ストレスをかけることでウィルス耐性の発現を促す目的で若者たちをグレードに閉じ込めたのだろう。
ただ、それにしては悠長な仕掛けであり、若者たちが「安定した社会」を作ってしまっては意味がない。
だからこそ異分子としてのトーマスが送り込まれたのかもしれないが、
このあたりは最終作「Death Cure」で解答が示されるのか。
こういう系の映画ではいつも思うこと。
発症者の症状としての攻撃性が健常者に対してのみ行われる理由は何か。
噛んだり引っ掻いたり、引っ張り込んだ後は何をするのか。
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